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http://www.astroarts.co.jp/news/2011/07/08laserguide/index-j.shtml
【2011年7月8日 すばる望遠鏡/国立天文台メールニュース No.43】
ハワイにあるすばる望遠鏡の、レーザーガイド星生成装置と大気のゆらぎを補正する装置とを統合した観測システムが完成し、クリアに観測できる空の領域が大幅に拡がった。遠方クエーサーなどの観測で威力を発揮することが期待され、今月2日に起きたトラブルからの早期復旧が待たれる。
すばる望遠鏡に搭載される「レーザーガイド星補償光学装置」が完成し、国立天文台を中心とした研究開発チームが本格的な科学観測を開始した。
この装置は、2006年に作り上げた「188素子補償光学装置」と「レーザーガイド星生成システム」とをすばる望遠鏡に統合した観測システムだ。これまで観測したい天体のすぐそばにガイド星となる明るい星がないために補償光学が利用できなかった天域でも、レーザーガイド星生成システムを用いて人工の星(レーザーガイド星)を作ることにより、補償光学を使った観測が可能となった。その結果、特に遠方の銀河やクエーサーの大多数を従来の10倍の解像力で観測することができるようになった。
研究開発チームはこの新たな装置を用いて、重力レンズ効果を受けて二重に見える遠宇宙のクエーサー(注)(重力レンズクエーサー)を観測するなど、レーザーガイド星補償光学装置の威力を発揮する成果を早くもあげている。
画像2枚目は、りょうけん座の方向約109億光年先にある「SDSS J1334+3315」と呼ばれる二重クエーサーだ。ずっと手前にある銀河の重力場によって、元々1つのクエーサーが重力レンズ効果を受けて2つにみえている現象と推定されていた。
レーザーガイド星補償光学装置を用いた観測によりこの天体を2つの点像として明瞭に分解することができ、さらに重力レンズ効果を起こしていると考えられる銀河が2つの像の間にはっきりと浮かび上がった。もしこのクエーサーの明るさが変化すると、2つの像の明るさが約10日間ずれて変化することが予言され、今後の観測が期待される。
この装置を使ったすばる望遠鏡の共同利用観測が今月から始まる予定だったが、2日に起きた主焦点部からの冷却液漏れにより観測は一時中止となっている。一刻も早く復旧し、新しい装置を使った成果がさらに得られることを願ってやまない。
すばる望遠鏡からレーザービームが照射されている様子。レーザー光を利用して高さ90kmの大気中で光る人工的なガイド星を作る。(撮影:国立天文台ハワイ観測所Daniel Birchall氏)
注:「クエーサー」 数十億光年以上先にあり、普通の銀河の2、3桁上回るほどの大規模なエネルギーを放出している天体。その正体は巨大なブラックホールと考えられている。
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