http://www.asyura2.com/11/test22/msg/224.html
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[以下引用] 私が「原子力マフィア」と勝手に呼んでいる集団がある。原子力関係の科学者・技術者がネットワークを組み、原発に反対する論調が少しでもあれば直ちに回報が廻される。そして、微に入り細を穿ってその論調を検討し、少しでも間違いがあれば抗議のメールを集中させるというわけである。数年前、NHKの教育テレビで「禁断の科学」という番組に出演したとき、私は愚かにもそのテキストで少し間違ったことを書いた。彼らは、それをあげつらってNHKに番組を中止せよとの圧力をかけてきた(私自身への直接の抗議はなかった)。今後NHKが原子力問題に及び腰になるという効果を狙ってのことだと推測される。公明正大な討論こそ科学者・技術者が遵守すべきことであって、反対の意見を持つ者やジャーナリズムを委縮させる科学者・技術者の集団って何なのだろうか。[以上引用]
(池内了「専門家の社会的責任」『世界』第817号 2011年5月 岩波書店 56-57ページ)
[略歴の引用] 池内了 いけうち・さとる 総合研究大学院大学教授。1944年兵庫県生まれ。専門は、宇宙物理学、科学・技術・社会論。[以上引用]
引用文中で言及されているNHK教育テレビの「禁断の科学」は、「知るを楽しむ この人この世界」という番組に池内了氏が出演した全8回のシリーズで、軍事、遺伝子、コンピュータといった科学技術にかかわる問題をとりあげた。その第6回が「原子力の現在」で、2006年1月16日に放送された。現在、Googleビデオでみることができる。
http://video.google.com/videoplay?docid=6026041775574170295
番組の放送に先立ってNHKの番組テキストが販売されており、そこに掲載された池内氏の文章にいろいろな間違いがあったらしい。そのテキストは、インターネット上ではみつからなかった。しかし、それがどのような間違いだったのかをうかがい知ることはできる。検索すると、以下のような似通ったいくつかの抗議文が残っていた。そうした抗議をおこなった団体が、あるいは池内氏のいう「原子力マフィア」とも重なっているのかもしれない。
「NHK教育テレビテキスト「知るを楽しむ・この人この世界・禁断の科学」の記載について」(電気事業連合会 2005年12月26日)
http://www.fepc.or.jp/about_us/pr/opinion/1191617_1487.html
「NHK教育テレビ「禁断の科学」にもの申す」(NPO法人放射線教育フォーラム 2006年1月13日)
http://www.ref.or.jp/NHKkougibun-3.html
「NHK教育テレビ番組「知るを楽しむ」に抗議 「知るを楽しむ」(この人この世界) 早稲田大学教授、池内了氏の「禁断の科学」、「原子力の現在」に対して」(エネルギー問題に発言する会 林勉 2006年1月8日)
http://www.engy-sqr.com/media_open/others/hayashi_nhk_kougi060108.htm
「NHK教育テレビテキスト 「知るを楽しむ この人この世界・禁断の科学」への抗議」(エネルギー問題に発言する会 会員有志 2006年1月26日)
http://www.engy-sqr.com/media_open/others/nhk_kougi060126.htm
最後のリンク「NHK教育テレビテキスト 「知るを楽しむ この人この世界・禁断の科学」への抗議」には、NHK側の見解も紹介されている。それによると、NHKは、テキストの見解は著者池内氏のものであり、放送内容との同一性はない。一部の事実誤認については次号のテキストで訂正するが、その他は見解の差であると回答したらしい。
さて、池内氏のいう原子力関係の科学者・技術者の「ネットワーク」について、はっきりした実態が明らかでないなりにコメントをすると、氏の「原子力マフィア」という呼び方にはうなずくことができなかった。テキストに書かれている事実の誤りといった根拠にもとづいてメールなり電話なりで抗議をおこなうのは、マスコミにたいする「圧力」のかけ方としてはまっとうなものだと感じる。その際ネットワークを作って情報を共有するのは、合理的なやり方だ。氏のいうところの「科学者・技術者」なる人々は、どうやらマスメディアに登場できるほどの大物ではないので、原子力発電推進派としての監視活動や言論活動を地道におこなっているということではないだろうか。特にそうした人々の主張が上のリンクのようにインターネット上で公開されている場合には、長い目でみて原子力発電についての世論の水準の向上に寄与すると思われる。つまり、単純な事実誤認のようなものを淘汰してくれることが期待される。池内氏が自分のテキストの内容の間違いを認めていることからしても、そこにはある種の「公明正大な討論」が成立したといえるのではないだろうか。「討論」というには一方的だという印象を抱くかもしれないが、もともとマスメディアというものが一方的であってみれば、それに対する批判もそういう形をとらざるをえまい。「原子力マフィア」という呼び名が本当にふさわしい人々は、もっとほかにいるはずだ。
それ以外の点については、池内氏の「専門家の社会的責任」での主張はいちいちもっともだと感じた。それについては、直に『世界』5月号を読んでいただきたい。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/2011/05/directory.html
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