http://www.asyura2.com/11/senkyo124/msg/881.html
Tweet |
君が代不起立処分訴訟で最高裁判決が出ました。
君が代斉唱を職務命令とすること自体は合憲とするものの、停職、減給処分は重すぎる。裁量権を逸脱しており違法、という判決でした。
判決文全文はこちらです。
•PDF File (Original)
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116162214.pdf
•HTML File
http://kanz.jp/hanrei/data/html/201201/20120116162214.html
判決文全文はちょっと長いので、町村泰貴教授が判決要旨を整理しておいてくださったのをお持ち帰りさせていただきましょう。
◆Matimulog
arret:君が代不起立を理由とする減給処分は違法
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2012/01/arret-b19f.html
(引用開始)
(1) 卒業式の国歌斉唱において、起立せよという職務命令は憲法19条に違反しない。
(2) 公務員に対する懲戒処分は懲戒権者に裁量権があり、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、またはこれを濫用したと認められる場合に、違法となる。
(3) 本件不起立行為は職務命令違反であり、式典の秩序や雰囲気を一定程度損ない、生徒にも影響がある。
(4) 他方不起立行為は個人の歴史観や世界観に基づくもので、積極的妨害ではなく式の進行を妨げるものでもない。
(5) 本件職務命令の遵守を確保する必要はあり、重きに失しない範囲での懲戒処分は裁量の範囲内である。
(6) 不起立行為に戒告を超えて、より重い減給以上の処分を選択することは慎重な考慮が必要である。
(7) さらに減給や停職処分を選択できるのは、過去の処分歴や不起立行為前後の態度に鑑み、その相当性を基礎づける具体的な事情が必要である。例えば過去の1回の卒業式で不起立行為による懲戒処分を受けただけでは、その後の不起立行為に減給処分をするのに相当性があるとはいえない。また過去1,2年に不起立行為等の処分歴があるだけでは、その後の不起立行為に停職処分をする相当性を基礎づけるのに足りない。いずれも過去の処分の非違行為の内容や頻度等が規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなどの事情が必要である。
(中略)
君が代に対する起立斉唱の職務命令に従わなかった場合に、戒告処分は許されるが、減給や停職処分は原則として許されず、不起立行為による懲戒処分が2回目だとしても減給処分は重すぎるし、それ以上に繰り返されても停職処分は重すぎる。積極的に式典等の妨害行為を行なって懲戒処分を受けていた教職員に限っては、不起立行為で停職処分をすることも許される
(引用ここまで)
君が代斉唱を職務命令として命ずるのは憲法19条違反ではないのか、についての考察は、最高裁は今まで同様、思想信条の自由や君が代を拒否することの意味について何ら根本から掘り起こすことをせず、法的思考を展開するのを放棄しています。
それをきちんと積み上げていけば、次のエントリーでご紹介する宮川裁判官の少数意見の結論になるのはずなのですが、多数意見はそこはすっ飛ばし、安易な現状追認を繰り返しているだけです。
尚、この判決が大阪教育基本条例に及ぼす影響が注目されていますが、3回の命令違反で分限免職の対象になるという条項には一定の歯止めにはなるでしょう
◆Everyone says I love you !
最高裁判決によれば橋下維新の会の教育基本条例は「処分は重過ぎて社会観念上著しく妥当性を欠く」となる
でも、条例案全体にはせいぜいかすり傷程度のダメージしかないのではないでしょうか。
免職、停職ができなければパワハラまがいの圧力をかければいいのですし・・・って、早くもその予感。
大阪府教委:君が代起立斉唱の職務命令
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20120117k0000e010188000c.html
教職員に君が代の起立斉唱を義務づけた大阪府条例を受け、府教委は17日、府立学校長を集めた会合で、全教職員約1万3000人に対して起立斉唱を求める教育長名の職務命令を出した。条例施行後初の卒業式を控え、起立を徹底させる狙いがある。
中西正人教育長は「府民の信頼に応えられるよう起立斉唱の完全実施が必要だ」と述べた。また、君が代斉唱をしない教職員の処分を慎重に行うよう求めた16日の最高裁判決について「府教委は違反回数だけで画一的に免職を規定するのは行きすぎだと言ってきた。今後も議論していきたい」と語った。
府教委はこれまで、事前に起立の意思を示さなかった教職員に対してのみ校長が個別に職務命令を出し、違反者を処分してきた。
同条例に罰則規定はないが、大阪維新の会は昨年9月府議会で同じ職務命令に3回違反すれば分限免職など処分基準を明記した「教育基本条例案」を提案。府教委は同条例案に反対の姿勢で、今回の職務命令には指導を強化することで条例案がなくても不起立をなくせることを示す考えがある。
一方、この基本条例案について、橋下徹・大阪市長と松井一郎知事は17日、教職員が違反した場合はその都度、指導研修を義務づけるよう見直す方針を明らかにした。最高裁判決を受けたもので、橋下市長は「すぐさま処分するのではなく、改善されるまでしっかり研修を行う」と語った。
橋下氏は市役所で記者団に「免職の対象とするという規定は変えず、ただ、職務命令に初めて違反した職員への指導と研修を追加する方針」と語ったそうです。
つまり、違反の度にしっかり「研修」を行ったにも関わらずそれでも反省しないのは非常に悪質、研修を行った上での免職ならば櫻井裁判官が指摘した「○回目で免職、というような処分の機械的な適用」ではありませんよ、とでも言うのでしょうか。
さすが、転んでもただでは起きない男・・・と言いたいところですが、さすが法廷からは逃げ回って示談で済ませてきた男。そんな詭弁は示談相手には通じても最高裁には通じません。
なぜなら、最高裁が停職、減給は違法としているのは
『不起立行為は,既に多数意見の中で説示しているように,それぞれの行為
者の歴史観等に起因してやむを得ず行うものであり,その結果式典の進行が遅れる
などの支障を生じさせる態様でもなく,また行為者も式典の妨害を目的にして行う
ものではない。不起立の時間も短く,保護者の一部に違和感,不快感を持つものが
いるとしても,その後の教育活動,学校の秩序維持等に大きく影響しているという
事実が認められているわけではない。
このような行為が繰り返し行われた場合に加重処分をすることは,それが相当性
を欠くものでなければ許容されるもので』はない、というのが理由だからです。
つまり、
不起立行為は重大な秩序違反とは言えず、せいぜい保護者の一部に違和感を感じさせる程度の行為に過ぎないのだから、それを何回繰り返したとしても停職や免職はやり過ぎ(ましてや免職なんて)
と最高裁は言っているのです。
言ってみれば、靴下の色が校則で定めた色と違う程度の軽微な校則違反が何回も繰り返されたとしても、停学はやり過ぎでしょ、というのと同じです。
橋下氏の条例修正案は、「指定された色の靴下をはいてくる度に放課後居残りさせてみっちり反省文を書かせた、なのに何度もはいてくるから悪質。(停学飛ばして)退学にする」と言ってるようなもので、当然通るはずがありません。悪あがきもいいところです。
そんなわけで小手先で条例案をいくらいじってみたところで分限免職規定を盛り込むことは、もう無理です。まともな法律家ならそのくらいの論理はわかるはずです。
でもこの人って教師には職務命令だから従えとうるさいくせに、自分に課せられた「公務員の憲法遵守義務」違反は全くスルーとなんですよね。「朕は国家なり」「朕は法なり」を彷彿とさせます。文科相だった中川氏が「教育基本条例は違法の可能性あり」と言ったとき「バカみたいなコメント」と捨て台詞を吐きましたが、まさに「朕が法なり」という態度でしたものね。
本心はこの最高裁判決なんかほとんど鼻であしらってるのでしょう。でなければ免職規定を据え置くなんてできません。
ですが、もし免職規定を外し、その都度「研修」を義務づける、などという規定に修正されても、それはそれで激しい人権侵害が予想され、難儀なことになりそうです
「すぐさま処分するのではなく、改善されるまでしっかり研修を行う」
これは卒業式でも運動会でも、君が代を拒否する度に「研修」ですさまじい締め上げがまっているということです。うわあ・・しつこそう。
学校版日勤教育のように、起立しなかった先生は見せしめのために廊下に立たされるのでしょうか?すさまじいパワハラが待っているかと思われます。最初の条例案よりかえって過酷かもしれません。
そして「教職員が違反した場合はその都度、指導研修を義務づけるよう見直す」そうですから、些細なことで「違反」のカウントを増やされ「日勤教育」は増えていくかもしれません。
現在鬱病で休職する教師が急増していますが、ますます精神を病む先生が増えるのではないかと心配です。
「日勤教育」から逃れるためには自分を思考停止状態に落として盲従すれば大丈夫です。
しかしそこはもはや人権が保障された自由な世界ではありません、どこか別の異世界です。
そんな世界でどうやって生徒に民主主義教育しろというのでしょう?
あ、民主主義教育なんか要りませんでしたね、だって市長に言わせれば、教育の目的は生き馬の目をくりぬくグローバル市場競争で他者を蹴落として勝ち抜くエリート戦士の養成ですから。
学校はいつのまに企業戦士養成所になったのかしら。
余談ですけど、
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201201170055.html
府教委はこれまで、起立斉唱は思想信条にかかわる事柄でもあることから現場での説得を重視。事前に「起立しない」と表明した教職員だけに職務命令を出していた。こうした対応が橋下徹・前知事に「マネジメントができていない」と批判され、全国初の君が代条例成立につながったことから、今後は一律命令を出して条例順守を求める姿勢を明確にする
って、「組織マネジメント」というフレーズが随分お好きなようですね。でも学校にそもそも「組織マネジメント」なんてものがなじむんでしょうか?先生を全員君が代で立たせることがどうして「組織マネジメント」になるのか、私にはサッパリわかりません。
そんなわけで、この判決も教育基本条例の暴走を食い止める大きな力にはなりえないと思います。
廃案しかありませんね。
http://akiharahaduki.blog31.fc2.com/blog-entry-850.html
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK124掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。