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政治の世界には「市民感覚」で理解できないことも少なくありません [これまでとこれからの「小沢一郎」の話をしよう・衆議院議員 石川知裕]
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2012/1/13 日刊ゲンダイ
道議的責任と刑事責任は別物
小沢一郎元代表の公判は今週、本人への質問が行われました。実質審理が終了し、「市民感覚とのズレ」が問題になっています。指定弁護士も裁判官も「通常の感覚だと、億単位の現金を保管するというのは理解しがたい」と言う。
しかし、政治家にとって、まとまった額を現金で置いておくのは当たり前のこと。小沢氏のような派閥の領袖クラスになると、それが数億円になってもおかしくない。それに、大物政治家なら、億単位のお金は何度も目にしたことがあるはずです。
選挙の時に候補者に渡す公認料だって、総額で数億円に上る。官邸や幹事長室の金庫には、巨額の現金が保管されています。開き直るつもりはありませんが、政治の世界はやはり特殊な感覚なのだと思います。それなのに、なぜか小沢氏だけが叩かれる。
そもそも、この事件の発端は裏ガネなどの不正蓄財があるという検察の“妄想”でした。裏ガネなんて出てこないことが分かると、いつの間にか「億単位の現金を持っているのがおかしい」という話にすり替えられ、言いがかりのような展開になってきた。
これもデフレの時代だから「けしからん」ということになるのでしょうか。決して私腹を肥やしているわけではないのに、お金を持っていることが「悪」のように言われてしまう。
公判では「普通なら4億円もの手形に署名をするとなれば慎重になる」として、当時の記憶がないのはおかしいという指摘もありましたが、私も4億円の約束手形にサインをもらった時のことはよく覚えていません。
検事から「元赤坂タワーズにサインをもらいに行ったのでは?」と言われると、「そうだったかもしれないなぁ」と思った程度で、どんな会話を交わしたのか、まったく記憶にない。
必要書類にサインを求められる機会が多い小沢氏にしてみれば、なおさら個別の案件は覚えていないでしょう。
指定弁護士が、「会計責任者は会長の指示を受け会計事務を処理する」という陸山会の規約を持ち出したのにも面食らいました。法律家にとっては条文が絶対なのかもしれませんが、それこそ感覚のズレ、揚げ足取りの類いです。
「収支報告書の内容を確認しないのはおかしい」という論調もあります。しかし、小沢氏も証言した通り、ほとんどの事務所が収支報告書は秘書任せなのが実情です。これは政治家や秘書、記者など永田町関係者なら誰でも知っています。
もちろん道義的には問題があるかもしれませんが、04年当時は今ほど規制が厳しくなかったのも事実です。道義的責任と刑事責任は、あくまで別物。市民感覚で裁かれ、道義的問題で有罪にされてしまうなら、もはや法治国家とは言えません。
◇いしかわ・ともひろ 1973年生まれ。早稲田大学卒業後、小沢一郎氏の秘書を経て、2007年から衆議院議員。陸山会事件で起訴され、民主党を離党。昨年7月に出版した「悪党 小沢一郎に仕えて」(朝日新聞出版)は5万部のベストセラーになっている。メルマガも好評配信中。
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