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筆洗
2012年1月13日
東京新聞
伊達政宗は茶道も能(よ)くした。ある時、茶室で自分の持つ茶道具中、最も高価な茶碗(ちゃわん)をためつすがめつしていて、危うく落としそうになった
▼何とか膝で受け止め、事なきを得たが「百万の敵にも動じないつもりの自分が、いくら高価でも茶碗ごときのことでハッとなった。残念至極」とつぶやくや否や、その茶碗を投げ割ったという。ウソか誠か、今に伝わる独眼竜の逸話の一つ
▼さて、「天下」を見すえる戦国武将ならぬ、大物政治家も、いくら高額とはいえ、四億円ごときの金でびくつくのは潔しとしないということか。陸山会事件で強制起訴された小沢一郎元民主党代表の話
▼過日の被告人質問では、億単位の土地取引も自分名義の融資も「秘書任せ」とする元代表に、裁判官までが「四億もの大金を秘書に預けて不安は」と聞いたが、「信頼している」の一点張りだった
▼それもこれも「天下国家のことに集中するため」。そんな些細(ささい)なことと言わんばかりだが、重さ四十キロにもなる四億円を紙袋に入れ新聞で覆ったのは「僕」と。そこだけ「秘書任せ」でなかったのが不思議である
▼それにしても政治資金規正法もなめられたもの。「政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」(第一条)の法だが、元代表は問題の収支報告書も「見たことがない」。「天下国家」に比べれば、国民など…。
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