http://www.asyura2.com/11/senkyo124/msg/655.html
Tweet |
古賀茂明×佐藤優 国を食いつぶす「霞が関 という病」
2012年01月12日
週刊現代 http://gendai.ismedia.jp/articles/-/31495
高度成長は優秀な官僚たちのおかげだったとされてきたが、実は大幅な円安が真のエンジンだったという研究がある。官僚=優秀という「前提」が間違っていることに、国民はそろそろ気づくべきだ。
「過去問」解いてる場合か
佐藤 先だって、防衛省の田中聡沖縄防衛局長が不適切発言で更迭されましたが、いくらオフレコ懇談の場とはいえ、あんなレイプを想像させる発言をしたことに愕然としました。
あれは官僚の劣化が極まったということに他なりません。特に防衛省の文化の問題です。はっきり言って財務省や警察庁からの出向ではない防衛省プロパーの幹部クラスはレベルが低い。もともと国家公務員試験の成績が良くないし、その一方で競争もないから、よほどの異常性癖の持ち主でもないかぎり局長になれる。古賀さん、通産省(現経産省)の同期は何人ですか。
古賀 僕のときは25人ですね。局長ポストは外局も入れて10くらいありますが、このうち同期で上がれるのは5~6人です。
佐藤 外務省もそのくらいの競争がある。ところが防衛省は競争が非常に少ないうえに日常的に使われているボキャブラリーの問題があると思う。外務官僚だって上品ではないですが、少なくとも日常的にレイプだとか買春だとか、そんな話はしない。防衛官僚はいつもそういうボキャブラリーで話をしているから、記者懇談の場でああいう発言が出てしまうんですよ。
古賀 まあ、昔はどこの省庁も似たり寄ったりでしたけど、時代が変わってそういうのが許されなくなった。そのなかで防衛省だけがそれに気づかないというのは、やはりお粗末極まりないですね。
佐藤 いずれにしても、あの防衛局長の不適切発言は日本の官僚史に残る官僚の劣化事件だと思いますよ。
古賀 そうですね。ただ、官僚の劣化という場合にはふたつ問題があって、ひとつは能力そのものの問題、もうひとつは何のために働いているのかという問題。能力についていえば絶対的レベルでも低下しているし、民間の人たちとくらべても相対的に落ちている。国際的な比較においては目も当てられない状況です。
佐藤 同感です。能力問題というのは官僚にとってタブーで、傲慢だとかツラ構えが悪いと批判されても平気ですけど、能力がないと指摘すると官僚の逆鱗に触れる。外務省の役人は、語学の話をされると怒るんですよ。外務官僚は語学ができるという世間常識は大ウソ、大誤解ですからね。
古賀 少なくとも英語だけは達者なんじゃ・・・・・・。
佐藤 とんでもない。私が入省した当時は公電などの書類に日本語訳なんか一切ついてなかったですけど、10年くらい前から抄訳がつくようになった。それも、新聞記事にですよ。
古賀 じゃあ、ロシア語はもっとひどい?
佐藤 私が知る範囲でロシア語で外交交渉ができる駐露大使は一人しかいませんでしたね。忘れられないのは、ユジノサハリンスク日本総領事館が開館したときのことです。総領事がロシア語で挨拶をしたんですが、私の隣にいたロシア人に、「ロシア語で通訳してくれないか」って頼まれたんですよ。それくらいデタラメなロシア語だった(笑)。
古賀 語学のできない外務官僚が普通なら、経済政策を立てられない経産官僚も普通です。とくにいまはあらゆることを根本から見直さなければならない時代なのに、まったく対応できない。たとえば東京電力をどうするかについても、彼らはまず過去の大企業破綻の例を探すわけです。それこそ何十年もさかのぼって、チッソの例があったと。
佐藤 チッソ?時代も状況も全然違うのに。
古賀 そのチッソの事例を当てはめてどうか、次にダイエーはどうか、JALは・・・・・・というように過去の破綻例を集めて一覧表をつくり、それを眺めてウーンと唸っているんですね。
まず東電をどうするのかを決めて過去の例を参考にするならわかりますけど、最初から過去の例に答えを見つけようとしてもうまくいくはずがない。これは結局、役所に入ってくる人の勉強の仕方が参考書を覚えて過去問をやって、というパターンだからです。
佐藤 理解しなくても、覚えさえすればいい。
古賀 いまは原発事故やら何やらで、以前とは前提が違っていて白紙から新しい答えを考えないといけないのに、それには何の知恵もない。要するに現状に対応する思考力がないんです。
星飛雄馬のつもりが
佐藤 それで結局、経産省は東電をどうしようと考えているんですか。
古賀 すべての責任を東電に負わせると言いながら、東電が借金を背負って債務超過で破綻するような事態にはしないとも言う。政府がそうやって甘やかすものだから東電は増長してしまって、経営陣も居座って、辞める気配がない。それで、やっぱり資本注入し、経産省が株主になって大ナタをふるうべし、という話になってきたわけです。
佐藤 しかし、そうなると官僚の天下りポストが増えることになりますね。
古賀 いまだってエネルギー特別会計を使って予算をばらまき、その先にいろんな天下りポストがある。私の見るところ、数百はあります。原発をやめると、これらのポストもなくなるから、経産省は絶対に原発をやめられない。
一方、東電も関連会社や取引先に天下りポストを大量にもっていて、おそらく1000ではきかないでしょう。東電を国有化するというのは、こうした東電の利権をまるごと経産省のものにするということです。
佐藤 経産官僚たちは東電処理は国のためだと思っているのか、それともウマそうな話だから俺にも食わせろと思っているのか。
古賀 意識としては、自分たちは改革派だと思っているんです。ただ、彼らの中にも「介入派」というのがいて、俺にまかせろ、俺は正しい、俺の言うことを聞けと、こういう熱い一派がいる。
佐藤 ああ、星飛雄馬みたいに目が炎で燃えちゃってる連中(笑)。
古賀 国有化しろと言っているのは、この人たちです。彼らは東電の利権を狙っているわけではないんですが、無意識の部分で計算している。というのは、改革・改正と利権をセットにして考えるのが、習い性になっているからです。
佐藤 無意識は矯正のしようがないから始末が悪い。悪事を働いているという意識があるほうがまだいい。枝野幸男経産大臣は、何を考えているんでしょうね。
古賀 彼はもともと市民運動家みたいな人だから、原発や大企業は嫌いで、メンタリティとしては改革派でしょう。実際、東電に貸し込んでいた銀行にも責任をとらせるべきだとか、原発はすぐに再稼働させないとか時々いいことを言う。
でも、その枝野さんでも、朝から晩まで官僚からレクチャーを受けていると、染まっちゃうんです。側近筋の話として「理論派政治家がどのように官僚に丸め込まれていくか、その過程を現在進行形で目撃してます」と聞いています。
財務省がテレビ局に圧力
佐藤 逆に官僚を敵に回すと恐い。こんな大臣の下で仕事ができるかとなると、まず大臣へのブリーフィングがおろそかになる。一川保夫防衛大臣のケースがそうですね。
古賀 '95年の沖縄少女暴行事件について国会で「詳細には知らない」と答弁したときのことですね。大臣があんな答弁をする前に、秘書官が助け船を出すタイミングはあったのに、それをしなかった。
佐藤 さんざん失言を重ねてきたのに自分は居座り、沖縄防衛局長は守らない。なんでこんな大臣助けなきゃいけないのか、という雰囲気なんですよ、防衛省は。でも、官僚を敵に回すという意味では、古賀さんこそ、まさにそうでしょう?
古賀 公務員改革をしようとした私は、霞が関にとってまさに不倶戴天の敵ですから、いろんなことをしてきます。例えば最近は、財務省がテレビ局に対して、私を番組に出すなと圧力をかけたんですよ。あるテレビ局の報道番組が安住淳財務大臣に出演依頼をしているのに出てもらえない。その局の幹部に対して財務省の香川俊介官房長は、「古賀を出演させているテレビ局に大臣は出せない」と言ったそうです。
佐藤 露骨な話ですね。
古賀 まあ、立場上、言わざるをえないんでしょう。私が別の番組で「年収2200万円の事務次官がタダ同然の家賃で官舎に住んでいる」と言ったことで、財務省の勝栄二郎次官への風当たりが強くなった。「官舎を出ざるを得ないか」ということになったらしい。それで財務省が相当頭にきているみたいなんです。
ただ、財務省の官房長が、大臣を出演させることを条件に放送内容に介入したことになりますから、本当だとすれば、それだけで大スキャンダルだと思いますね。
佐藤 マスコミも財務省の意向に逆らう覚悟はないってことですね。古賀さんは、日常生活で気をつけていることってありますか?
古賀 どういう形で仕返しされるかわからないんですが、神経質になるのはやはり電車ですね。痴漢に仕立てあげられたら一巻の終わりです。これは、警察の友人からも、「注意しろよ」と警告されました。
佐藤 私は泊まりがけでどこか行くときは必ず家内同伴にしています。これは田原総一朗さんに教えてもらったんです。それと、最も恐いのが税金関係。どんなに細かな収入でもきちんと申告しています。
古賀 ちょっとした申告ミスだって、国税当局がリークすれば脱税と報じられますからね。やはり国税の権力はすごい。国税庁・税務署を傘下に抱えている財務省と本気でコトを構えるのは相当な覚悟が必要です。
佐藤 鈴木宗男さんみたいに1回捕まってしまえば闘えるんですけどね(笑)。
古賀 '09年のたばこ税増税のとき、こんなことがあったそうです。ある政務三役が、たばこ嫌いだったこともあって、増税大賛成と宣言した。一方、財務省はJT(日本たばこ産業)が天下り先だから、たばこ税増税に関してだけは実は慎重なんです。
で、あるとき主税局の幹部がぞろぞろとその政務三役の部屋にやってきて、「たばこ税をもっと上げろというのは本気ですか」と切り出した。「もちろん本気だ。君らの応援団だ」とその人が善意で言うと、「本当に本気ですか」と詰め寄り、なおも彼が増税を支持すると「どうしてもとおっしゃるなら、私どもはあなたと省をあげて闘うことになりますが、よろしいですか」と迫った。そのただならぬ気配に降参した政治家は、はらわたが煮えくり返る思いだったけども、国税のことが頭をかすめて、どうしようもなかったそうです。
本当のワルは腰が低い
佐藤 本当のワルは怒鳴ったりせず、腰が低い。彼らにとって、副大臣・政務官クラスの国会議員を封じ込めるのは朝飯前でしょう。
ところで、先ほどの改革派、介入派という話に関連するんですが、TPP(環太平洋経済連携協定)への参加を巡って大反対が繰り広げられましたね。日本を徹底して守れとばかりに、ナチス経済みたいな極論を叫ぶ官僚まで現れた。彼らの姿は、戦前の「革新官僚」を彷彿とさせる。グローバルスタンダードを一切無視するという危ない「革新派」の出現を危惧します。
古賀 TPPのネガティブキャンペーンが盛んですけど、TPPに反対したら日本がどんないい国になるというのかという疑問には、誰も答えていない。これが最大の問題ですね。そして、ここに官僚の劣化が如実に表れていると思います。
佐藤 最後に一つお聞きします。大阪ではダブル選の結果、橋下徹新市長が誕生し、古賀さんは「府市統合本部」の顧問に就任されましたね。大阪から日本を変えるという大スローガンを掲げていますが、橋下改革の見通しはどうですか?
古賀 いまは橋下人気にあやかろうと多くの人が擦り寄ってきている。その人たちが果たして本物かどうか。今後、橋下市長が進めようとしている大胆な改革の中身の議論になっていったときに、本当の改革派か、エセ改革派かが明らかになる。そこからが本当の勝負でしょう。
佐藤 私は、彼が成長戦略を掲げているのは正しいと思う。成長するなかでの儲けの分配議論なら、分け前の少ない者でも我慢ができる。でも、損失のなすり合いは我慢ができない。これはマルクスの資本論が説くところです。成長戦略をめざす橋下氏は資本論に忠実で、日本の資本主義が生き残っていく上で彼の出現は必然性があると思いますね。
古賀 大阪市は職員の組合加入率が9割以上だそうです。組合員じゃないと出世できなかったらしい。改革する側からすれば、とんでもない自治体ですが、そこでどれだけ大ナタをふるうことができるか。役人の手口は熟知していますから、橋下市長が落とし穴にはまらないよう、精一杯お手伝いするつもりです。
おまけ
■古賀茂明氏このまま増税したら日本も確実にギリシャへの道!
■「くにまるジャパン」1月6日放送分〈佐藤優〉その1 イラン問題
■「くにまるジャパン」1月6日放送分〈佐藤優〉その2 イラン問題
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK124掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。