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この鈍感力が裸の王様と化す [田中康夫 にっぽん改国]
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2012/1/11 日刊ゲンダイ
「あちこちで工場から煙が上がっている。生産が始まり、去年に比べて着実に前進している実感が有った」。
昨日10日、宮城県石巻市の大手水産加工会社と岩手県大船渡市の一部上場企業のセメント工場を視察した宰相NODA(発音:ノ〜ダ?)は胸を張りました。
両市で訪問した仮設住宅では、「ここより困っている所が在る」と入居者が語ると、「感動した。自分達だけでなく、全体の事を考えている」と同行記者団に“どや顔”で応じました。
「立て付けの悪さから寒さに悩まされる別の仮設住宅の存在」を住民は直訴したにも拘(かかわ)らず、「感動した」とは、いやはや、“一億総中流社会ニッポン”を瓦解させた宰相小泉純一郎も顔負けの“鈍感力”です。
視察工場も仮設住宅も、「首相が見て回ったのは被災地の光と影のうち、光の部分だけ」と共同通信が慨嘆したのも宜(むべ)なる哉(かな)。これでは北朝鮮の偉大なる領主様の視察を嗤(わら)えません。
“事勿(なか)れ主義”の取り巻き連中が御膳立てした視察であろうと、その「影の部分」を見抜く洞察力が指導者には求められているのです。でなくては、“裸の王様”と化してしまいます。
視察後のぶら下がりで「内閣改造」に関して問われると、「今は被災地の事で頭が一杯だ」と宰相NODAは答えました。嗚呼、同時に複数の事柄を思考し得てこそ国家の指導者なのに。
二百歩譲って「頭が一杯」でも“物は言い様”、「本日の視察を踏まえて、更に国民益の観点から人事を断行する」ってな発言で“煙に巻く”器量が求められます。「少し期待してたが、事務屋に毛が生えた程度の政事屋だったな」と中曽根康弘大勲位が評した彼は、成る程、逐条解説的な役人DNAなのかも知れません。
だからでしょうか。福島県庁を訪れた8日、18歳未満の医療費無料化を求められると、「大変重要な課題と受け止めた。政府内でしっかり検討したい」と応じてしまうのです。本末転倒です。
彼が好んで用いる「大所高所」の発想に立ったなら、僕のみならず江崎玲於奈氏も同様に提唱する「除染費用に1兆円も投じるなら、その費用を被災者に渡し、新しい土地で生活を始める為の資金として活用させる道を考えよ」。それでこそ、政治家として後世に名を残す決断なのですが。
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