http://www.asyura2.com/11/senkyo124/msg/578.html
Tweet |
以下の1月5日付・朝日新聞からの転載は前回で転載した部分の前にある、パート1にあたるものです。朝日新聞のネグリへのインタビュー記事は三つのパートで構成されています。商業新聞の記事を、日をおかずに一挙に転載して、営業妨害の謗りを避けようと思いましたが、日時も経過しましたので、残りを転載しても、むしろ宣伝になると思いました。最近の朝日新聞、経営事情からでしょうか、やたら広告・宣伝が目立って閉口していますが、その朝日新聞を私が宣伝するみたいで妙な感じです。ただ、今回の記事は、わざわざベネチアのネグリ自宅まで出向いて、現代世界の情況に鋭く切り込んでいる点はそれなりに評価できると思います。
以下、転載開始…
「大欧州」があえいでいる。政府の債務危機が広がり、欧州連合(EU)主導の緊縮政策に人々の不満は高まるばかりだ。欧州は、世界は、この危機を克服することができるだろうか。そして、危機後に広がる世界は。
――危機を脱することができると思いますか。
私に言えるのは、この危機から脱することができても、そのとき欧州はもはや「欧州」ではなくなっているだろう、ということです。
――どういうことですか。
欧州は、とくに戦後の欧州は福祉がすすみ、人権を尊重する高度な市民社会でした。世界の発展や科学技術に自発的な形で対応する能力がありました。しかしこれからは違う。この危機から脱したとしても、そのときにはすべてが、あらゆるレベルで縮小してしまっているでしょう。なかでも懸念するのは、民主的な権利、とりわけ労働者の権利が縮小されることです。ストライキ権が制限され、福利厚生が削減され、労働時間が長くなり、男女の雇用格差が広がる。非正規雇用など不安定な労働形態はさらに横行するでしょう。50年、いや100年、逆行してしまうかもしれません。もっとも、19世紀の統一ドイツ宰相ビスマルクの時代まで戻るとは思えませんが。すでに貧困が広がっていることがその予兆です。イタリアでも、ミラノやローマなどの大都市郊外や南イタリアに行くと、貧しさを肌で感じることができます。フランスの郊外でも同様です。欧州全体が不安定な状態になっています。
――この危機の根源は何ですか。
一つは国家がグローバルな動きに追いつけないことです。もっと根源的な問題があります。企業と労働者の関係やお金の流れが変わってしまったことです。現代の労働は知的で認識的なものになりました。あなたは自分でパソコンを持っている。私を撮るカメラマンはカメラを持っている。独自に資本を所有しているわけです。求められるのは頭脳そのものや人的な組織力かもしれません。これが今の労働市場であり、企業は労働者を把握することができなくなりました。一方で金融は、労働者が生み出した富を取り込み、それを貨幣や証券、あるいはポケットの中のクレジットカードに変えてしまう。それが労働者の負債を生み出しています。
――この流れを止めるには。
後戻りはできません。イタリアでは「フィアット社が栄えれば国が栄える」と言われましたが、そのフィアットも生産の軸足を海外に移してしまった。もし新たな流れがあるとしたら、それはフィアットを戻すことではありません。民主主義の領域においてのみ、ありうるでしょう。様々な領域のコントロール(管理、統制)に多数の人々が直接参加する「新しい民主主義」です。
(パート1部分の転載終了、注・この後に前回転載部分のパート2が続きます、パート3の転載はいずれまた)
以下は投稿者短評です〜
ネグリ氏が言う、欧州が「欧州」でなくなるという言説を、誤解してはいけないと思います。それは、世上で喧伝されている、EUの解体やユーロ崩壊・消滅を意味するものではありません。「高度な市民社会」を形成してきた、歴史としての戦後欧州が、退行の危機に瀕している情況を根源のレベルでとらえた言い回しなのだと思います。米英覇権を維持しようとする勢力に対抗する欧州の指導者は、それなりにしたたかです。おそらく、当面の危機は乗り切るでしょう。実際、ECBがFRBなみに市場で債権買い支えを実施したら、欧州債務危機は一瞬のうちに回避可能という見方さえあります。むしろ、EU首脳は投機筋の攻撃や蔓延する危機意識を利用して、政治的財政的なレベルでの欧州統合を加速させるバネに利用しようとしている匂いがあります。こうした見方は国際政治解説者・田中宇氏や株式評論家・山本伸氏らが、それぞれ別の角度から分析しています。
ネグリ氏は、国際政治や金融戦争の表層のレベルでの混迷が労働者・市民を苦境に陥れている情況から脱するには、代議制議会制度や大統領制などの旧来の民主的システムに依拠しているだけでは駄目だと指摘しています。世界的な現状の閉塞あるいは後退の流れを変えるには、「様々な領域のコントロールに多数の人々が直接参加する〈新しい民主主義〉」によってのみ可能だということなのです。EU解体・ユーロ崩壊は回避されるか否かが本質的問題なのではなく、危機を乗り越える新しい民主主義がいかに構築されていくかが重要なのでしょう。「独自性をもった自律的な運動、人々がアイデアを広げていく、まさにマルチチュードを代表する運動、それは、イランにも、チュニジアにも、イギリスにもあり、日本もこうした流れの中にあることは明らか」だとネグリ氏は明言します。
大阪の、原発の是非を問う住民投票を目指す市民グループの動きの、成功へ向けた確かな歩みに注目していきたいと思います。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK124掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。