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資本主義の反社会性極る中
新時代開く人民の大運動を
年頭にあたってのご挨拶 2012年1月1日付
2012年の新年を迎え、読者・支持者のみなさんに謹んでご挨拶を申し上げます。
昨年は東日本大震災と福島原発の大事故が起こり、欺瞞に満ちた戦後社会を根本的に見直して日本の立て直しをしなければならないという世論が圧倒してきました。新しい年は、世界恐慌が進行し人人の生活が困難になり、戦争が接近するなか、それに抗して平和で豊かな社会を建設する人民の世論と運動を力強く発展させることが重要な課題です。
一
昨年は欧州の各国で国家財政破たんが顕在化し、国債を買っている世界の金融機関の危機があらわれ、世界的な大恐慌が進行しました。4年前、アメリカの住宅バブルが崩壊してサブプライムローン証券などが破たんし金融恐慌になりました。それを膨大な国家財政支出で肩代わりしましたが、今度はそれも破たんしてもっと深刻な危機となっています。このなかで、各国が通貨安競争をして近隣諸国に犠牲を押しつけあったり、アメリカが環太平洋経済連携協定(TPP)でブロック化をはかるなど、帝国主義各国間の争奪戦が激化しています。国債や株の空売りをして、国や大企業がつぶれることで暴利をむさぼるというおぞましい争いもくり広げられています。それは、貧富の格差を極限まで強め、戦争の危機を強めるとともに革命を接近させています。
リーマン・ショックは80年代から進んできた新自由主義の破たんを意味しました。しかしオバマ政府は新自由主義徹底の方向を進め、世界経済を大混乱させた金融資本は規制されるどころかすぐに復活し再び暴利をむさぼっています。再生産に投じられない膨大な余剰資金ができて、それを使った金融投機の詐欺師的な手法が開発され、ものを生産して利潤を得るより、預金や年金などの人の金を使った株や証券や通貨の売買による利ざや稼ぎが世界の経済を支配しています。企業は株価至上の株主優先、金融機関優先となり、ヘッジファンドからは企業買収の脅しで追い立てられ、技術の継承も労働者の育成も切り捨てられ、生産活動が破壊されています。企業間の大競争が強いられ、労働者は奴隷的な状態におかれています。市場原理といって教育、医療、福祉、文化といった社会的な機能が営利企業にゆだねられ破壊されています。このような強欲な金融資本主義では社会は維持できなくなっています。
エジプトやチュニジアでは、金融資本の投機による食料の高騰などを契機にした大デモが起きて、長期に君臨してきた親米独裁政府が倒されました。アメリカでも「ウォール街を占拠せよ」のデモが起き、極端な貧富の格差への怒りが爆発しました。食料スタンプで食いつなぐ貧困層が激増する一方で、大企業経営者や金融投機家は数十億円の年収を得ています。世界では余剰資金があり余っているから大多数が貧乏を極めることになっています。個別の企業が大競争のなかで生き延びるためにコスト削減競争をやり、新鋭設備への更新とともに安い労働力を求めることを競っています。そのような個別資本の都合によって消費購買力がなくなり、製品はあふれて社会は不況になっていきます。生産活動はたくさんの労働者が協力しあって集団的社会的にやられているのに、生産手段や生産された商品と利潤は私的に占有されているという資本主義の固有の矛盾のもとでは、社会をコントロールできないのです。
二
昨年起きた東日本大震災・福島原発の大事故と、それに対応する政治家、官僚、学者、メディアなどの姿は、戦後社会のあり様を根本的に考え直す契機となりました。1000年前どころか100年前の大津波の経験すら継承されず、日本民族の歴史が断絶されている現実を痛感させました。戦後の原子力を最先端とする工業化万能の神話も崩壊しました。そして政府というものが、復興させる意志も能力もなく、むしろ住民を難民にして外来資本のビジネスチャンスにする姿をまのあたりにしています。日本国民の生命や安全を守る政府ではなく、アメリカや財界の道具なのです。その一方で、人人は一人で生きているのではなく、みなが依存しあい協力しあって農漁業を基本とする生産活動をやり、生活をしているという本来のあり方をさめざめと確認しあうこととなりました。
東北の崩壊は、日本社会全体の崩壊を象徴しています。円高が進み、TPPに参加するというなかで、企業の工場縮小、閉鎖と海外移転が雪崩を打って進んでいます。農業や漁業はいらないという政治のうえに、国内の工業も空洞化しています。このため大学卒業生の半数が就職できず、失業と貧困が深刻にあらわれています。会社が行きづまったのではなく、さんざんもうけて巨額な内部留保をため込んだうえに、もっともうけるために工場移転や首切りをしているのです。
民主党野田政府は、国民経済がガタガタに崩壊するなかで、アメリカのいいなりになって消費税増税、TPP参加、日米軍事同盟強化の方向へと暴走しています。TPPは、関税撤廃による農水産業の壊滅だけではなく、外国人労働者の導入による植民地なみの労働条件の強要、自由診療の拡大による国民皆保険制度の破壊、郵政民営化の徹底による国民資産のヘッジファンドなどによる略奪、そしてアメリカ資本の自由な商売の障害と見なす国内の制度については世界銀行に訴えて撤廃させるという国家主権剥奪の条項も含んでいます。それは小泉改革の徹底ですが、戦後の売国政治のきわみというべきものです。
日本人民は第二次大戦において320万人が殺されました。アメリカは黒船来航以来の日本を占領支配するという野望を持って対日戦争に参戦し、「日本人はサルか虫けらだ。殺せば殺すほど貢献する」といって都市を焼き払い、原爆を投下しました。そして今、日本の富を丸ごと奪いとり、中国を敵とする原水爆戦争の盾にして、日本を再び火の海に投げ込むという恐るべきたくらみを進めています。アメリカ合衆国はインディアンを皆殺しにしてできた国ですが、日本でも民族絶滅作戦が続いており、美化する風潮は一掃しなければなりません。
小泉・竹中による日本社会の破壊に怒った国民の世論に乗って登場した民主党政府は、恥知らずにも自民党政府以上の売国政治を突っ走っています。「政治家はウソつき」が定着し、議会制民主主義も政治の信頼も地に墜ちています。官僚機構やメディア、警察・検察、軍隊など国家機構が丸ごとアメリカとそれに隷属した財界の道具となっており、小泉や野田はその代理人にすぎません。彼らはTPPを「平成の開国」といっていますが、関税自主権の放棄、最恵国待遇、治外法権を約束させられた徳川幕府による「安政の開国」のくり返しです。それに抗して徳川幕府を倒し近代統一国家樹立と独立を成し遂げた明治維新革命の誇りは確実に日本民族のなかに流れています。
三
昨年1年、人民運動は新しい様相を持って発展しました。1950年8・6斗争の伝統を継承する「原爆と戦争展」と8・6広島行動は、学生や青年が活動に登場し始めました。劇団はぐるま座の『峠三吉・原爆展物語』公演は、東京、沖縄など全国で衝撃的な反響を呼び、平和運動を力強いものにしています。下関では市議選で、ゴミ袋値下げ、老人休養ホーム・満珠荘再開を求める二つの10万人署名運動などの市民運動を基盤にした市民代表を当選させ、「議会の常識は市民の非常識」というなかで、市民の常識を貫く議員活動を確立して多くの人人を励ましています。教育運動も「個性重視」「自由」「人権」と称した教育改革の重圧をはねのけ、教師が集団で一致して、「みんなのために」を合い言葉にして小学校の学年全員が自分を鍛えて逆上がりをやれるようになるなど、日本の教育の展望を開く実践があらわれました。11月に開かれた礒永秀雄没35周年の詩祭は、戦争体験者や小中高校生など若者が主体になって、まさに「極限のなかで鑑賞にたえうる芸術」を体現し、平和運動の力になる芸術の役割を確信させるものとなりました。
国を売るTPP参加に反対する全国の農協などの署名は1000万人を超えるなど、全国的な大政治斗争として盛り上がっています。沖縄では対中国戦争を想定した日米軍事同盟の新たな展開、とくに普天間基地の辺野古移転問題などに対して、「基地を持って帰れ」の世論が圧倒し、野田政府を手も足も出ないようにしています。多くの知識人が真実の発言を始めたのも昨年の重要な特徴です。
この間の新自由主義改革による「大競争、効率化、カネが一番」という風潮のなかで極限まで来て、生産活動こそ社会を成り立たせる根本であり、生産を担う人民こそが社会の主人公であることがあらためて確信されています。また現在の社会構造の枠のなかで、個別の目先の利益を追求するというのでは絶望だけです。労働者に職がなく職があっても生活できない状態は、自分だけではなく日本中同じであり、商店が厳しいのは客がなく労働者や農漁業者の購買力がないからです。みんなが共通の境遇にあり、みんなが協力し団結してその根源の問題を解決するなかに展望があります。それは万国共通です。広範な大衆のなかで、安保斗争のような全人民的政治課題の斗争機運が大きくなっています。
四
そのようななかで、「日共」修正主義裏切り者集団や旧社会党、さまざまな市民勢力、労組幹部などの多くが、売国的で反動的な民主党政府のあからさまな与党や欺瞞的な協力者となっています。これらは結局、体制内安住を願って他人を犠牲にし、自分個人の利益、自分ら小集団の特別な利益を追い求めるという、経済主義、組合主義のなれの果てです。それが「大政翼賛会」に合流し排外主義の戦争協力者になっていきます。もっぱら被害者になって人を批判するばかりで、みずから建設するものはなにもないという潮流も同じ根を持っています。
現在発展している新しい政治勢力は、人民大衆が歴史を創造する原動力であることを確信し自分の側からではなく大衆の側から物事を見る立場を堅持すること、不断に大衆のなかに入りその生活と斗争を学んで、大衆の先頭に立って人民を抑圧する敵と正面からたたかうというものです。それは権力を持って大衆を搾取し抑圧する勢力は滅亡の側にあり、生産を担う人民大衆こそ新しい社会を担う勢力だという時代意識に立つということです。それを実行するには、思想、態度の面から、自分の利益のためをはかる個人主義ではなく、みんなのため、社会のために尽くすという人民に奉仕する精神に徹することが根本的な分かれ道です。原水禁・被爆者の運動、教育の運動、下関市民の運動、はぐるま座の活動などの新鮮な発展は、そのような転換をともなって切り開かれています。新しい年は、このような大衆に根をおいた政治勢力が全国的に形成されていくなら、日本の展望を大きく切り開くことになります。
とりわけ、日米軍事同盟とTPPに反対して全国的な政治斗争を起こすことが、重要な課題です。労働者、農漁民、商工業者、文化人・知識人、教師そして青年、婦人、戦争体験者など各界各層が全国的に一つに結びつき、売国、反動、戦争、貧困の道に反対し、独立、民主、平和、繁栄の日本をめざす強力な統一戦線をつくっていかなければなりません。
あらゆる政治勢力が腐敗し、新聞やテレビはウソばかり報道するなか、事実ありのままの真実の報道を貫く長周新聞の役割はますます大きなものとなりました。この人民言論紙長周新聞を創刊した福田正義主幹が逝去して10年がたちました。この春には没後10周年記念集会を開催し、福田正義精神をあらためて学ぶことが、新しい時代をつくる大きな力になると考えています。創刊57周年の年を迎え、読者・支持者のみなさんとともに、長周新聞の役割を全国的に発揮するよう、勤務員一同奮斗する決意を明らかにして新年のご挨拶とします。
2012年元旦
長周新聞社
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