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基礎年金について、1月2日付で、「消費税の引き上げについて」というブログを書いた。
http://www.taro.org/2012/01/post-1140.php
さて、基礎年金の次は厚生年金だ。
厚生年金に関しては、2004年に大改革が行われ、「100年安心」年金ができたことになっている。もちろん、それは真っ赤な嘘だ。
100年安心年金とは、一、所得代替率50%を維持しながら(つまり現役時代の平均所得の50%以上を年金で確保する)、二、積立金が100年間枯渇しない、ということを意味する。
まず最初の問題は、所得代替率は、会社員とその妻で20歳から60歳までずっと専業主婦の夫婦を標準的なモデル世帯として設定して計算されていることだ。しかし、もはやこうした世帯がモデル世帯とは言い難くなっている。
それはここではさておいて、所得代替率は、既に2004年の改革時点で、将来50.2%まで下がることになっていた。その後、リーマンショックなどもあり、所得代替率50%を維持するのはもはや無理だと思われるが、2009年の年金再計算では将来にわたって50.1%を維持することになっている。この数字は、極めて嘘くさい。
この2009年の再計算は、明らかに厚労省によって粉飾された。
たとえば、2020年以降の年金積立金の運用利回りがずっと4.1%で維持されるという想定だ。2004年の計算では運用利回りは3.2%で想定されていたのが、一気に上がった。
さらに物価上昇率は、2011年から2015年までずっと1.9%となるという想定だ。デフレ脱却が大きなテーマだった2009年時点の想定としては、この数字はありえない。ちなみに2004年の計算では1.0%を想定していたのが、それさえも上回っている。
つまり、所得代替率が50%を下回らないために、どんな前提条件なら大丈夫かを計算し、想定の数字を逆においただけだ。
一方、積立金の方はどうかというと、2004年の想定では、2011年時点では、積立金はまだ積み上がっているはずだった。しかし、現実には2006年度に149兆円だった積立金は2011年度には既に112兆円まで取り崩されている。
このままでは厚生年金の積立金は2030年前後には全て取り崩されてしまう。
つまり、100年安心年金などというものは既に崩壊している。
さらに、高齢者の数を現役世代の数で割ってみると、
1960年 8.9% 現役11人で高齢者1人を支える
1970年 10.2% 現役10人で高齢者1人を支える
1980年 13.5% 現役7.5人で高齢者1人を支える
1994年 20.2% 現役5人で高齢者1人を支える
2000年 25.5% 現役4人で高齢者1人を支える
2008年 33.6% 現役3人で高齢者1人を支える
2023年 50.2% 現役2人で高齢者1人を支える
2040年 67.2% 現役1.5人で高齢者1人を支える
2072年 85.7%
団塊の世代が引退した後も、高齢化はまだまだ続く。
今の厚生年金のように、次世代の負担する年金保険料で現時点の高齢者の年金を支払う賦課方式では、今後継続的に、次のどれかをやらざるを得ない。
− 年金受給額を減らす
− 年金保険料負担を増やす
− 年金受給開始年齢を引き上げる
いずれにしろ、年金制度に対する国民の信頼が失われていく。
こうした現実から目をそらすために、年金の将来の運用利回りは、厚労省によって粉飾されやすい。
現実よりも高く設定されたこの運用利回りを達成するために、年金資金の運用は過度に高リスク、高リターンを追い求めやすい。
そのため、年金資金は、常に必要以上のリスクにさらされる。賦課方式の年金制度では、年金資金の運用が失敗しても、現在の年金受給者の年金には影響しないため、無関心になりやすい。
さらに、厚生年金の世代間の損得格差は巨額になっている。
生まれ年で見た年金保険料負担と年金受給額の世代間損得計算は、
1940年生まれ +3090万円
1950年生まれ + 770万円
1960年生まれ − 260万円
1970年生まれ −1050万円
1980年生まれ −1700万円
1990年生まれ −2240万円
2000年生まれ −2610万円
2010年生まれ −2840万円 最大格差5930万円
人口が減少し、高齢化が進むこれからの日本に必要な年金制度とは「老後の生活を支える年金の財源を、自分自身が現役のうちに積み立てておく自分の世代で完結する積立方式の年金制度」だ。
積立方式ならば、前後の世代に負担をかけず、高齢化や人口減少の影響も受けない。
具体的には、
国民が、自分の公的年金口座に、現役時代に積み立てた積立金およびその金利の合計額を、65歳の平均余命で割った金額を政府が保証する年金制度。
一定のルールの中で国民一人ひとりが自分の積立金の運用を行う。
亡くなった時点で年金支給は停止され、積立残額は相続できない。
つまり、
年金の一階部分は、老後の最低限の生活を保証をするためのもの。
消費税を財源として、65歳以上の全ての日本人に支給する。ただし、所得制限あり。
二階部分は、現役の生活水準を老後に維持するために、自分が現役のうちに積み立てた積立金に比例して支給される積立方式の公的年金。
三階部分は、個人が必要に応じて加入する私的年金。
現在の年金制度に対する不信感から、公的年金は廃止すべきだという声も聞かれるが、公的年金を廃止することはできない。
なぜなら、
若い世代は年金の必要性に関する切迫感を持たず、私的年金のみにすると無年金者が増加して、税金による生活保護が将来急増し、財政を圧迫する。
民間の保険会社による私的年金は、年金の支払期間があらかじめ決まってしまい、自分が何歳まで生きるかわからない長生きのリスクに対応することは難しい。長生きのリスクを全てカバーするためには、平均余命に基づいて、早く亡くなった人の年金財産を相続させずに、長生きした人に分配する必要がある。それができるのは政府だけ。
どの程度の年金水準を維持すべきかという議論はあるが、公的年金をやめてしまうという議論は乱暴だ。ただし、公的年金制度を続けるためには、これまでの年金制度に対する不信をきちんとぬぐい去ることができるような改革が必要だ。
国民が信頼する年金制度でなければ維持していくことはできない。
賦課方式の厚生年金を、積立方式の年金制度に切り替えるためには一つ、大きな問題がある。
現行方式では、現役世代が支払っている年金保険料が高齢者への年金支払いの財源になっている。
積立方式の年金制度を導入すると、現役世代が自分の年金のための積立を始めるため、現在の高齢者の年金の財源となっている年金保険料がなくなる。
政府が現行の年金制度の下で支払われるべき年金の財源を肩代わりする必要がある。(「二重の負担」問題)
厚労省は、この二重の負担問題を大々的に取り上げて、だから積立方式への移行はできないと主張する。しかし、それは特別会計を失い、利権を失うことを避けようというためにする議論に過ぎない。
二重の負担の解消は簡単ではないが、できる。
他方、現行制度を継続すればどうなるだろうか。高齢化、少子化はこれからも長く続く。現在は現役3人で高齢者1人を支えているが2070年代には限りなく現役1人で高齢者1人を支えることに近くなる。
今、積立方式に移行すれば、この将来よりも年金制度は確実に安定する。
だから速やかに積立方式に移行すべきだ。(続く)
http://www.taro.org/2012/01/post-1141.php
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