http://www.asyura2.com/11/senkyo124/msg/429.html
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TPPを考える上で、韓米自由貿易協定(FTA)について、韓国がどのような動きをしているかを知ることは重要である。その韓国国会が、年末30日、一部与党議員の賛成で、「韓米FTAの再交渉を促す決議案」を採択した。すでに11月に韓国国会は韓米FTA批准に賛成の決議をしたが、依然として協定に反対する世論が強く、国会は麻痺していた。その正常化のために行なわれた決議案採択であった。
FTAを推進してきた李明博(イ・ミョンバク)政権に対し、「恩恵を受けるのは一部の大企業」との反発が、特に若者層で強く、数万人規模の反対集会も続いている。中でもISD条項*が韓国の「主権を脅かしかねない」と国民は猛反発している。当然である。決議には拘束力が無いとは言え、李大統領は簡単に批准書にサインはできないだろう。なぜ、そう言うか。
このニュースを調べるために、韓国の大手紙「朝鮮日報」と「東亜日報」の日本語版ウェブを検索していたら、興味のあると言うか、考えさせられる記事を見つけた。それは韓国・仁川(インチョン)地裁の金ハヌル部長判事が12月9日、韓米FTAの再協議を研究するためのタスクフォース(TF)の創設を求める建議文を大法院(日本の最高裁判所に相当)に提出したというニュースである。
金部長判事は、部長判事10人を含む166人の判事を代表して建議文を作成した。その建議文を通して、「大法院傘下に韓米FTAの研究のためのTFを設置し、韓米FTAが司法主権を重大かつ深刻な水準まで制限しているかどうかを研究・検討して欲しい」と要請した。建議文では、「韓米FTAの非公正性を判断するうえで、研究してみる価値がある」と主張している。
また、「必要な場合、韓米FTAに対する司法府の立場を対外的に表明することを検討する必要がある」と付け加えたそうだ。日本の「ひらめ」判事はもとより、全ての判事に、この166人の判事を見習え(爪の垢でも煎じて飲め)と言いたい。三権分立とは、立法・行政・司法が相互不干渉だということではない。国民の権利を守るために相互チェックする。それが三権分立の基本の一つなのである。
韓国の行政府の長である大統領は、国民の直接選挙で選ばれる。その大統領が進めるFTAを、同じく国民の代表からなる立法府・国会が批准に賛成した。それでも「法律を適用する機関である司法府が事前に法律に関して検討をし、意見を出すことが三権分立に反するとは言えない」と言う。国民の権利や国家主権が侵害される虞がある時、それを正すのが司法である。これが三権分立の相互チェックと言うものだ。
処で、日本の司法(=裁判所)はどうだろう。国民の権利や国家主権が侵されても、司法としての意見を述べることはない。やっていることは、行政職である霞ヶ関の官僚の施策の追認だけである。その一番の典型が、起訴された刑事事件の98%以上を推認有罪とする刑事裁判だろう。司法が行政をチェックするという三権分立の機能を果たしていないのが、今の日本の司法(=裁判所)だと言える。閑話休題。
議院内閣制である日本では、首相は立法府である国会により行政権を負託されているに過ぎない。直接選挙で選ばれた行政府の長とは全く違う。従って、国権主権を侵す虞のあるISD条項を含むTPP交渉は、憲法73条第3号但書「事前の国会の承認を得る」が適用されるべきだ。加えて言えば、野田首相はISD条項に関して全く無知であった。そういう首相に、国の将来に係わる外交交渉を任せることはできない。
韓国の金部長判事による建議文にはISD条項に関連して、「韓国政府は、新たな経済政策の度に、米国企業に訴訟されるか心配し、顔色をうかがう立場になるだろう」とし、「米国にとってISD条項は西部時代のカウボーイが身に着けた銃と同じだ。身に着けてさえいれば、強いて抜かなくても一般人は顔色を見て避けるだろう」と強調している。端的にISD条項が国政にとって重い鎖になることを指摘している。
日本のマスコミで、「韓米FTAの再交渉を促す決議案」のことを報じたのは、朝日新聞だけだったようだ。その朝日も金部長判事の建議文については、全く報道していないようだ。ましてやTPP交渉で、各国の提案や交渉文書が極秘扱いとされ、その公開は4年後になるなど、民主主義の精神とかけ離れたものであることを指摘するマスコミは1社もない。それでいてどうしてTPP賛成と言えるのか。不思議な話だ。
*注:ISD条項とは、進出してきた外資が、進出先の国の法律や政策で損害を受けたと主張し、進出先の政府に賠償請求できるとする条項
http://www.olivenews.net/news_30/newsdisp.php?m=0&i=12
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