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陸山会事件(上) “小沢一門”鉄の結束? 3秘書、虚偽記載を完全否定 会計処理のずさんさ露呈も
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111230/trl11123007000000-n1.htm
2011.12.30 07:00 産経新聞
資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反(虚偽記載)罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の東京地裁(大善文男裁判長)での公判は年内に11回を数え、証人尋問が終了した。出廷した証人は9人。中でも序盤に登場した元秘書3人は、検察官役の指定弁護士が請求した証人だが、ほぼ弁護側の構図に沿う主張を述べ、“小沢一門”の結束を垣間見せた。一方、会計処理のずさんさを疑わせる発言も飛び出すなど、法廷では一進一退の攻防が繰り広げられた。
■変遷繰り返す“実行役”
元秘書の中で最初に出廷したのが、石川知裕衆院議員(38)=1審有罪、控訴中=だ。
石川議員は、政治資金収支報告書の提出前に「小沢先生に報告し、了承を得た」と述べたとされる捜査段階の供述調書に署名したが、その後、自身の公判で「事実でない調書に署名した」と供述を翻している。
直接証拠に乏しい今回の公判で、指定弁護士にとっては、小沢被告と元秘書の共謀を立証するためにこれらの調書の証拠採用は不可欠。否認に転じた“実行役”の供述の矛盾点を突き、採用への道を開きたいとの狙いがある。
石川議員は第3、4回公判で、「検事と折り合いをつけなければ大変なことになると思った」と、改めて調書の内容を否定。「検事から『ここまで書いても、(小沢被告を)起訴しない』という話があった」とも証言した。
一方、自身の公判と説明を変えた点も目立つ。
平成16年分収支報告書に記載された「小澤一郎 4億円」が小沢被告が用意した4億円と、同額の銀行融資のどちらを指すのか問われると「預かった4億円を預金して担保にして一つのスキームとして手続きしたので、お答えが難しい」とあいまいに返答。「融資ではなく、小沢先生からの借入金」としていたこれまでの説明を変え、「記載は銀行融資」とする弁護側の主張との齟齬(そご)を埋めた形だ。
受け取った4億円を陸山会の口座に分散入金した理由については、自身の公判では「銀行に資金洗浄を疑われるので、一度に持ち込める現金が限られていた」としていたが、証人尋問では「政治家が多額の現金を持っていることが明らかになるのは芳しくないと考えた」と述べた。
また、購入した土地の本登記を翌年にずらした理由についても、先輩秘書にあたる樋高剛衆院議員の名前をあげて「アドバイスを受けた」と証言。民主党代表選への影響を考えた末の「自身の判断」だった、とする説明から変遷させた。
■まとめ役「自分の仕事で精一杯」で“現場任せ”
第5、6回公判に登場したのは、小沢事務所の中でも「秘書のまとめ役」として、スケジュール調整など重要な仕事を任されていた大久保隆規元公設第1秘書(50)=同。政治資金規正法が収支報告書の作成義務などを定めた「会計責任者」でもある。
しかし、大久保元秘書は、会計責任者となったのは「東京の責任者の秘書がなるという、事務所の慣例だった」と説明。自身は議員会館で勤務しており、「収支報告書は赤坂の個人事務所の秘書が担当しており、きちんとやっていると思った」と繰り返し説明。「うちは優秀な秘書が担当しているので、そのようなこと(問題)が起ころうはずがないと思っていた」と述べた。
石川議員から収支報告書の提出前に報告を受け、了承したとする捜査段階の調書については「署名はしたが、そういう報告は受けていなかった」と内容を否定。「調書に応じることが小沢先生の逮捕を回避、『日本政治』をまともに戻す道と考えた」と、署名した理由を述べた。
また、取り調べ検事に「検事総長から直々に指名があって担当する」と言われたと証言。「大物の検事が来て、逆らうと何をされるか分からない恐怖を感じた」「マインドコントロールされていた」とも振り返った。
一方で、政治資金への認識の甘さを露呈する場面も。会計責任者の役割については「深く考えていなかった」と説明。収支報告書を「会計責任者が作成するという認識はなかった」「議員会館の仕事に集中するのが精一杯だった」などとして、石川議員らへ“現場任せ”にしていたことを強調した。
■後任秘書は「検事の恫喝に涙」
石川議員の後任の事務担当となった池田光智元私設秘書(34)=同=は、第7、8回公判に出廷した。
池田元秘書は自身が作成した17年分収支報告書について、「経理業務全般は任されていたので、私の判断でやっていた」と強調。16年10月に支払いを終えた土地代金の支出を、17年分収支報告書に記載した理由を問われると、「17年1月の本登記に合わせて17年分収支報告書に載せるよう、石川さんから引き継ぎを受けた」と述べた。
また、「(小沢被告は)選挙のことが何と言っても大事で、事務所運営などにはほとんど関心を持たれていなかった」と説明し、関与を否定した。
池田元秘書も、収支報告書の内容を小沢被告に「報告し、了承を得た」とする調書に署名しているが、保釈後の再聴取でこれを否定。証人尋問でも「記憶になかったが、代議士(小沢被告)に迷惑がかかるとは思わず、早く取り調べを終わらせたくてサインした」と、事実でない調書に応じたと主張した。
また、検事から「『お前は俺をなめくさってるのか』と恫喝され、涙を流してしまった」と厳しい取り調べ状況を証言。「検事さんの心証を悪くしないようにという思いがあった」とも述べた。
■迂回処理に記載逃れ? “脱法的”処理も続々
元秘書3人で計6期日に及んだ証人尋問で、事務担当の石川議員、池田元秘書はいずれも小沢被告への「報告・了承」を否定。会計責任者の大久保元秘書は、「経理業務自体に関与していなかった」との主張を貫いた。
一方で、証人尋問では、“脱法的”とも言える経理処理の実態も明かされた。
一つは、旧新生党の資金がプールされている政治団体「改革フォーラム21」をめぐる処理だ。小沢被告は、同団体から政党支部「民主党岩手県第4区総支部」を介して3億7千万円を陸山会に移したとして、政治資金規正法違反罪で市民団体から刑事告発を受けている。
池田元秘書は証人尋問で、小沢被告から「改革フォーラム21から陸山会に寄付ができるか」と聞かれたため、「直接では上限額があるので、他団体からであれば(可能)」と説明した、と証言。同法は政治団体間の寄付の上限を年間5千万円と定めており、小沢被告側が脱法性を認識した上で迂回処理を行っていた可能性が浮上した。
また、小沢被告の関係政治団体「誠山会」(解散)が1億円超の外貨定期預金を保有し、年末に普通預金に切り替える処理を行っていたことも判明。同法はリスクを伴う形での政治資金の運用を原則禁じているが、実際、誠山会は多額の損失を出していた。
池田元秘書は、「慣例で期末に解約するよう言われていた」として、引き継ぎに従ったとの主張をしたが、収支報告書には年末時点の定期預金残高の記載が義務づけられていることから、「記載逃れのための処理」との指摘も受けそうだ。
首をかしげたくなるような会計処理も浮き彫りとなった小沢被告の関連団体。元秘書3人の供述の変遷に加え、こうした実態を裁判所がどのように判断するのか、注目される。
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