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12月30日(金)「進むも地獄、退くも地獄」の窮地に追い込まれた野田首相
〔下記の論攷は、八王子革新懇機関紙『革新懇話会』第52号(2011年12月25日)に掲載されたものです。〕
野田佳彦首相は大阪ダブル選挙での「ハシズム」の威力に幻惑されてしまったのかもしれません。この選挙で大勝した維新の会の橋下徹さんばりの「独裁」的な強行路線を選択し始めたからです。
一川防衛相は12月1日の参院東日本大震災復興特別委員会で、1995年の米海兵隊員らによる少女暴行事件について問われ、「正確な中身を詳細には知ってはいない」と答弁しました。こときの事件がきっかけとなって沖縄県民の怒りが爆発し、それが米軍普天間飛行場返還運動の端緒となったという経過をご存じなかったようです。
しかも、沖縄防衛局の田中聡前防衛局長が「(女性を)犯す前にこれから犯しますよと言うか」と発言して更迭されたばかりでした。少女暴行事件があったがために、この発言に対する沖縄の人々の怒りには大きなものがあったのです。
一川さんは、少女暴行事件の内容も、その意味も、その後の経過も、今回の発言に対する怒りの背景も、「詳細には知ってはいな」かったというわけです。ということは、こうしたことを何も知らずに田中さんを更迭したことになります。
一川さんは沖縄の人々の怒りや嘆きの背景を、本気で理解しようとしていたのでしょうか。沖縄の人々の気持ちに真剣に寄り添おうと思っていたなら、少女暴行事件について「正確な中身を詳細には知ってはいない」などと言うはずがありません。これでは、いくら謝罪しても、口先だけではないのかと思われても仕方ないでしょう。
このような一川さんの一連の言動を問題として、自民党と公明党は問責決議案を提出しました。しかし、野田首相は「これまで以上に襟を正して職責を果たしてほしい」と述べ、更迭しない考えを示しました。また、一川保夫防衛相も記者会見で、「与えられた職責をしっかりと務めていきたいとの思いでいっぱいだ」と述べ、問責決議案の提出に対しても「防衛相としての本来の責任を問われるような致命的なものはないと思っている」と辞任する考えのないことを強調しました。
野田首相も一川防衛相も、当面は居直ることに覚悟を決めたわけです。さし当たり、野党や党内からの批判に妥協しないという強行路線を選択したようです。
社会保障と税の一体改革についても、政府・与党は12月5日、消費税増税を柱とした社会保障と税の一体改革を協議する「社会保障改革本部」の初会合を官邸で開きました。野田首相は消費税率10%への段階的な引き上げ時期や幅を明記した一体改革大綱素案を年内に取りまとめるよう正式に指示を出しています。
社会保障改革を「エサ」に、消費税の引き上げを認めてもらおうというわけです。しかし、社会保障改革を名目として検討されている内容は、給付や福祉サービスの切り下げであり、負担の増大です。そのうえ消費税を引き上げるというのですから、「踏んだり蹴ったり」で「やらずぶったくり」の改革(リフォーム)詐欺と言うべきでしょう。
しかも、現在のようなデフレ状況の下で消費税を引き上げた場合、景気悪化によって所得税と法人税の税収が減り、結果的に減収となることは確実です。実際に、消費税が3%から5%に上がったとき、国庫収入は増えたのではなく減りました。
このような事情もあって、与党内には小沢一郎元代表やそのグループの議員など増税に慎重・反対の議員も多く、議論の難航は必至だと見られています。しかし、ここでも野田首相は正面突破の強行路線に打って出ようと考えているようです。
もしかしたら、野田さんにはTPP問題での「反省」があるのかもしれません。参加表明を一日遅らし、結局、「参加」ではなく「協議に加わる」とトーンダウンさせたため、一部では「弱腰」との批判を招いたからです。だから、今回は強気で突っ走ろうということなのでしょうか。
しかし、このような突っ張りで、事態が打開できるのでしょうか。結局、一川防衛相の問責決議案だけでなく、山岡賢次消費者行政担当相の問責決議案も一緒に上程され、会期末の9日に可決されました。
その結果、野田首相が目論んでいた消費増税に向けての自公両党との協議などは吹っ飛びそうです。臨時国会が終了しても、与野党協議が進む展望はありません。来年1月から始まる通常国会に向けても、自民党などは審議拒否の姿勢を見せています。
このような状況を念頭に置けば、いずれかの時点で一川さんや山岡さんを交代させるしかないでしょう。しかし、そうなればなったで野田首相自身の任命責任が追及され、一川さんや山岡さんの背後にいる小沢グループや輿石幹事長との関係は悪化します。政権基盤が弱体化することは避けられません。
こうして、野田首相は「進むも地獄、退くも地獄」の窮地に追い込まれました。いかに野田さんが「ハシズム」ばりの「独裁」的強行路線を行使しようとしても、その「破壊力」は難局に対する突破力を生み出すようには見えません。逆に、それは野田内閣自体の「破壊」をもたらす可能性の方が大きいのではないでしょうか。
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