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2011.12.27 3日間の馬鹿騒ぎはいったい何だったのか、橋下大阪市長の狙いと役割、(ハシズムの分析、その4)
〜関西から(47)
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
12月19日、橋下氏は大阪市長就任式もそこそこに市役所を空っぽにして丸3日間、永田町と霞が関を駆け回った。東京の友人からのメールによれば、まるで「大名行列」よろしく200人近い報道陣を引き連れ、政党幹部や各省大臣との面会シーンを撮らせたという。会見場所はあたかも即席スタジオになり、「政治のショー化がますます進んだ」と書いてあった。“橋下移動劇場”のはじまりだ。
観客がいる場所にはどこへでも出かけてゆく。人気のあるうちに次々と話題をとる。次の幕開けの予告を派手にやって観客の興味をつなぐ。どれもこれもが「移動劇場」の手法でありテクニックなのだろう。だがしかし、これが大都市行政の責任を一身に担わなければならない就任直後の自治体首長の行動だとしたら、余りも市民や議会を馬鹿にした話だと言わなければならない。
選挙期間中のアジ演説とは違って、市民の負託を受けて当選した自治体首長には、市民・住民の日常生活上の切実なニーズに応え、それを執行するための行政組織を整え、市議会と協議を重ねた上で公約を着実に実行していくという重大な政治責任を問われる。ところがどうだろう。就任早々からそんなことをそっちのけにして永田町と霞が関を走り回るのだから、これが「ハシズム=橋下流」の正体だとしたら、大阪市政は市民不在どころか「市役所不在」になりかねない。
橋下氏は、すでに市長就任前から幹部職員たちに「次々と大玉を投げている」と称して、事実上の職務命令ともいうべき行政課題の検討を一方的に指示してきた。そのなかにはいま話題になっている教育基本条例案の議会提案などに加えて、小中学校への「学校選択制の導入」や「市バス事業の廃止」など学校教育や市民生活の根幹にかかわる最重要課題も含まれている。
橋下市長の言い分は、学校選択制についてはこれまで一度も討論会や公聴会を開いたことがないにもかかわらず、「学校選択制になれば保護者の教育への関心が高まる」、「学校間の競争を促す」(読売12月18日)、「我々は住民の声を聞いてきた」(朝日12月22日)などという一方的な態度に終始し、それ以外の世論に一切耳を傾けようとしない。
大阪市教育委員会などは、「地域と学校の関係が薄まる」、「通学の安全が確保できない」など数多くの懸念を示しているというが、橋下市長はいっこうに意を解さず、それどころか、教育長に対して「保護者の選別にさらして自然に統廃合を促す手法として学校選択制がある」と露骨に述べ、選択制導入と学校統廃合を結びつける考えを示したという。(朝日12月24日)
また市バス廃止に関しては、その発言たるや「バス事業はバス会計だけで処理するよう交通局に指示した。リセット(倒産)もやむなし。(倒産なら)従業員はリストラになる」(日経12月22日)という乱暴きわまるものだ。これでは市民の足を守るべき公営交通事業が赤字になると、すべて廃止しなければならなくなる。大阪維新の会が選挙でいくら「敬老パスを守ります」と公約しても、肝心の市バスが廃止され、「敬老パス」がただの紙切れと化してしまうのでは、この公約は「イカサマ」だったことになる。
しかし橋下移動劇場の「追っかけテレビ」は、大阪の市民生活の根幹にかかわるこれらの重要課題よりも、橋下市長が如何に多くの政府や政党の要人たちと面会するかということにだけ関心があるらしい。つまり一地域政党にすぎない大阪維新の会が、次の総選挙で国政選挙に打って出るかどうかということに(だけ)関心が集中しているのであり、その指標として橋下市長の面会劇を報道しているにすぎないのである。
その一方、民主党政権の側にもこの際、瑣末な橋下騒動に便乗して「マニフェスト放棄」(もはや「違反」のレベルを超えている)の現実から国民の目を逸らし、反国民的諸課題を一気に決定してしまおうとの魂胆が見え隠れする。「税と社会保障の一体改革」という名の消費税増税の具体化しかり、「人からコンクリートへ」180度政策転換した八ツ場ダム工事継続しかり、沖縄米軍基地辺野古地区移転の前提となる環境影響調査報告提出しかりである。
野田首相は12月22日、日本経団連の評議員会であいさつし、社会保障と税の一体改革の素案の取りまとめについて「逃げずにぶれずに先送りせずに、しっかりと結論を出していきたい」と改めて決意を披露した。また「政権の延命や民主党のために政治家になったわけでない」とも述べた。(東京ロイター通信12月22日)
財界首脳部を前にした野田首相のこの決意表明は、野田内閣がもはや民主党政権の枠内から“財界直轄政権”に移行したことを示す極めて重大な政治発言だと言わなければならない。にもかかわらず、マスメディアは橋下移動劇場一色に染められ、民主党が政権公約を投げ捨てることによって日本の政党政治が崩壊し、議会制民主主義が機能不全に陥っている重大事態を報道しようともしない。
これまで、私は「ハシズム」の分析を主として地方自治の視点から追求してきた。しかしこの3日間の橋下騒動は、橋下氏が「国政レベルのトリックスター」として登場したことを示すものとして注視しなければならない。彼の掲げる右手には「大阪都構想」という瑣末なスローガンしか見当たらないが、多くの国民がそこに眼を惹きつけられることで野田政権の実態が覆い隠されるのであれば、それは支配体制の立派な「遊軍」としての役割を果たしていることになる。これからも地方自治と国政の両方からら「ハシズム」の分析を続けていきたい。
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