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人間・小沢一郎「最後の大構想」 @ 聞き手・渡辺乾介氏 週刊ポスト2012/01/01・06号
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11114385031.html
2011-12-22 23:51:11 平和ボケの産物の大友涼介です。
聞き手・渡辺乾介氏 政治ジャーナリスト「小沢一郎 嫌われる伝説」著者
※今回は「前編」となってます。週刊ポストの次回発売が1月4日になっているようですので「後編」は次回の雑誌が発売になってからになります。
小沢一郎。この稀有で頑固な政治家の「人間」を解剖することは日本の政治の形、国家の形がどう変わらなければならないかを探るケーススタディといえるかもしれない。天の怒りに地の喜びが打ち砕かれた2011年3月11日。政治は荒れた大地に陽炎の如く輪郭を浮かべ、無為に時を重ねた。多くの国民は「動かない小沢」に焦れた。小沢封じの政治の病巣は現実と醜悪な乖離を見せつけた。何をしていたのかという挑みの問いに、小沢が「人の顔」で激しく語った。
■震災対応で二つの「政治問題」
2011年の掉尾を奮う時、東日本大震災を抜きにしては語れない。人々は地震と津波の襲来、息つく間もなく放射能禍に見舞われ、日常のすべての営みを断たれ、最愛の家族と生活の絆、仕事を失い、形骸だけを残した街を目の当たりにした。
被災者は誰も人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟しつつ、絶望の悲嘆にくれる暇さえなく、生きる使命と希望に奮い立った。その姿は世界に大きな感銘を与えた。
そして、政治と行政の力を求めたが、空前絶後に事態に機能不全に陥り、無力であることを知って、人々は自力で我が町、我が村を興そうと動き出したのだった。やがて恐る恐る政治がやってきた。遅きに失するばかりの復興対策である。被災者は惨状に只中にありながら、政治や行政にかまわず自助自立、相互扶助で苦難に立ち向かってきた。
人災としての放射能禍は、政治が最大の障害というべき連関に人々を押し込め苦しめた。人民あっての政治が、政治ゆえに人々に立ちはだかる。
一体、政治とは何なのか。未曾有の困難と混乱の大震災であればこそ「国民の生活が第一」という民主党政権の拠って立つ基本理念の実践、その真価が問われたのではなかったか。
同時にそれは、政権交代の立役者であった小沢の存在理由であり、国民との約束の政治的価値そのものなのである。
だから、問う。
震災直下で人々が、人たることの根源的問い、選択を強いられ、呻吟していたように、政治家でありながらも、一人の人間として、小沢もまた被災地に立って何を思い考え、いかなる人たる呻吟をしていたか、である。
小沢:被災地の皆さんは非常に厳しい、そして辛い生活をずっと耐えて、長い間頑張ってこられた。亡くなった方々へのお悔やみとご家族へのお見舞いを申し上げると同時に、くじけずに頑張っておられる郷里の皆さん、被災地の皆さんに、心から敬意を表したいと思います。
千年に一度の巨大地震、大津波というのでは、人知の及ばない面もある。そこは自然災害に対する今後の方策を考えていく以外にないんだけれども、政治的には二つの大問題があります。
一つは原発。日本の再建だ、東北の再建だと言っていますけれども、放射能封じ込めに成功しないと日本経済の再建も日本の将来もない。福島第一原発の事故はマスコミでは喉元過ぎればで、なんだか風化したみたいになってますけれども、日本人的な現象で非常に危険だと思います。
この放射能については、なんとしても完全に封じ込めないといけない。そのためには、どれだけお金を使ってもやむを得ないし、封じ込めの先頭に立つのは国だ。ということを僕は言い続けてきたんです。事故の現状は、東電が第一義的に責任者だからといって、東電にやらせていいという状況を超えている。国が自ら先頭に立って、主体的にやらなくちゃいけない。
原発による被災者の皆さんの生活の問題と同時に、放射能をいかにして封じ込めるか。水をかけて「冷温停止状態を達成した」なんていたって、永久に水をかけ続けるのか?今になって、核燃料が圧力容器からメルトスルーして、もうすぐ格納容器の底のコンクリートを抜けるかもしれないなんて、呑気なことを言っているわけですね。
震災の2、3日後には、熱工学の学者をはじめ客観的に事実を見ている人たちは、必ず炉心は壊れていると言っていた。燃料も必ずメルトダウンしているとわかっていたわけですよ。それにもかかわらず、政府は2ヵ月後にようやくメルトダウンを発表して、そして最近になって落ちたウラン燃料がコンクリートを侵食して、底を突き破るまであと30何センチだなんて言ってるわけです。あれ、突き抜けて土の中に入っちゃったら、汚染の拡大を止められなくなりますからね。
それをまず徹底的に封じ込めないといけない。それは国家、政府が先頭に立ってやるべきことです。
もう一つは統治の機構。この機会に「地域主権」を確立すべきですよ。
復興のための補正予算などで金銭的な手当ては一応してあるんだけれども、その使い方は相変わらず旧来と同じ公共事業でしょう。今まで同じパターンで補助金を出すやり方だから、仕事は遅いし無駄が多い。
政府は地方の再建、東北の再生なんて言っていますが、これを機会に我々が主張してきたように中央省庁が仕切る補助金の制度を、地方自治体が自由に使える一括交付金の制度へと変える。これだけの大被害なんだから暫定的にでもやるという理屈も成り立つ。好きなように使ってよいというお金をもらえれば、もっと早く、もっとたくさん仕事ができると言うんですよ。(被災地の)知事も市町村長もそう言う。
相変わらず予算を貰うには、いちいち中央の役所から査定に来る。学校つくるにも、仮設住宅つくるにも、海岸つくるにもすべて中央が査定して、霞ヶ関へ持って行って、そこでまた検討して、やと補助金が出る。しかも、旧来の役所のメニューにある事業、やり方しか対象にならない。
私は、今こそ民主党が政権交代で訴えてきた補助金制度の改革を断行して、一気に「地域主権」を確立すべきだと思う。中央集権の霞ヶ関一極集中の統治機構を変える絶好の機会だと思っているんだけれども、そういう発想はまったく出てこない。非常にジレンマと苛立ちを感じています。
渡辺:あなた自身、大震災が発生して現地に入るまでどういう気持ちだったのか。
小沢:かつてないほど多くの方が亡くなった。僕は昔から浜も何もかも歩いて知っているから、どこがどうなったかはわかる。しかし、生きている者は町づくり、村づくりをしなくちゃいかんから、そっちの方に目が向いた。僕はどのようにして復興財源を賄うかとか、どういうふうに直せばいいのかとかいうことを考えなければならない。だから、達増拓也岩手県知事とはずっと連絡を取り合って協力しながらやってきた。
実はあれだけの大津波にもやられなかった浜があるんですよ。岩手で2ヶ所かな。明治時代に津波にやられた教訓で、昔の村長さんが主導して高台に全部移転していたんだ。それが今回幸いした。だから同じ金を掛けるにしても、そういうことまで考えて、根本的な浜の町づくりをしないといけない。
■「もう帰れない」と伝える責任
渡辺:被災者の人たちが、苦悩、苦難、困難を抱えながらも自分たちの手で何かやらねばならないという、この大衆のエネルギーを政治が汲み取ろうとしないところが悲しく虚しい。
小沢:今回、一般の人たちがお互いに連帯していろいろな救助活動や復興活動に立ち上がった。これは日本人のとてもいいところで、みんなが感動した点だと思う。
一方、地方はいちいち中央の霞ヶ関の許可をもらったりするのが面倒臭くてしょうがないと思っているけれども、それが政治的な運動にならない。そこが日本社会が他の国から遅れているところですね。大きな変革を起こせない理由でもある。本来ならば、特に福島県の人たちなんか、全県民が上京して、霞ヶ関を取り巻くぐらいの筵旗(むしろばた)デモを起こしてもよさそうなのに日本はそうはならないんだね。
渡辺:外国なら暴動が起きても不思議はない。
小沢:政治に何をして欲しいんだというものは必ずあるはずです。それが政治の変革を求める運動に繋がっていかないのが、日本社会の最大の問題だね。
渡辺:元ソ連邦大統領のゴルバチョフ氏は回顧録で、チェルノブイリ原発の事故について「わが国の技術が老朽化してしまったばかりか、従来のシステムがその可能性を使い果たしてしまったことを見せつける恐ろしい証明であった」と書いている。福島原発も同じ問題を内包していると思う。
小沢:溶けた核燃料を取り去るなんて工程表に書いてある。でも、どうやって取り出すの?それをどこへ持っていくの?何も方策がないのに、そんなことを文書にだけ書いてどうするんだ。そういう意味のないスケジュール表みたいなのを作ったって、何の役にも立たないと僕は思う。
それをこのままに放置しておくとなると、今を生きている我々が末代まで責めを負わなければならない。
渡辺:戦争以外であれだけの領土を事実上、失うことは大変な事態です。
小沢:(大きく頷いて)まさにそうです。
渡辺:それだけ重大であるという意味が、政・官・財、大メディアにも共有されていない。
小沢:原発から20キロだか30キロのあたりで、これ以上放射能が拡散しないという保証があるならいいけれども、もっと拡散するかもしれない。まだ政府はなんとなく避難した人たちがいずれ故郷に帰れるみたいな話ばかりしているでしょう。だから避難した人たちは、もしかしたら帰れるかもしれないと思って新しい生活設計ができない。中途半端で宙ぶらりんの状態になっている。これは政治の一番の罪だと思う。
事実上、放射能の強い地域には帰れない。だから、被災者にはきちんとそう言って、新しい生活に対して支援をしていくべきです。みなさん、それぞれ生活設計をしてください、帰るのは当分考えられる限り無理です、ということをじはっきり言わないと避難している人たちに対する裏切りというか、背信、嘘つきになっちゃう。
■増税せずとも当面の金はある
渡辺:被災者も国民も、政治は国民のために動いていないと怒っている。たとえば、原発事故では被曝予測システム「SPEEDI」の情報を隠し、復興を口実にして国民に負担増を強いる。この震災の結果責任の悲劇的なところだ。
小沢:自分が担当している間は無難に過ごせばいいという事なかれ主義、悪い意味の官僚的発想なんですね。誰も泥をかぶらないで、かわい子ちゃんでいたい。官僚だけでなく政治家もそうなっちゃったということですね。
渡辺:あなたが唱えてきた「自立と共生」の視点から、これだけ病み、傷んだ国土、国民、国家の震災後の在り方を語るときに、どういう再生の方向性があるのか。それは国民があなたに注目する大きな一つの視点だ。
小沢:日本には、市民の力によって政治体制を変えた歴史がほとんどないですから、自ら政治を動かそうという発想がなかなか国民の間に生まれてこない。
ただ、インターネットの広がりとともに、政治に無関心であったといわれる若い人たちがかなり関心を持ち始めて、そして実際に行動するようになったんじゃないだろうかと思う。原発の問題もそうだけれど、年金の問題でも、掛け金(保険料)を払ったって年金をもらえるのかという先行き不安が現実に出ている。いずれも結局は政治の場で解決する以外ないわけだから、だんだん政治に対する見方が変わってきているんじゃないかという気がします。
民主主義社会では、上からの革命というわけにはいかない。国民が支持し、国民が支援してくれなきゃ改革はできない。今はほとんどの人がインターネットで情報を共有できるので、普通の人、特に若い人が行動するようになってきたことに僕は希望を見出します。
渡辺:今の答えの中にあったが、年金と消費税がセットで国民生活を闇の中に押し込めようとしている。「国民の生活が第一」という政権交代の理念と基本政策を、民主党は冷凍保存しようとしているのではないか。
小沢:僕が代表のときに掲げた言葉だから嫌なんでしょう。(笑)
渡辺:政府・与党の中枢部は事あるごとに「国民にも痛みを分かち合ってもらう」という言い方をするが、安易に復興税だ、消費税だとのめり込み、返す刀で年金支給年齢引き上げを画策したりと、国民負担増だけに政治の軸足を置いている。
小沢:これは民主党だけでなく、自民党も同じなんですが、自分たちが唱えてきたこと、選挙に国民に訴えたことは何だったのかということをまったく忘れている。
先日も政府に入っている議員10人ぐらいと会合があったから話してきたんです。「今の時点では、それぞれの役目をこなす以外にないけれども、我々は古い仕組みを変えるんだと主張して政権を与えられたんだから、そのことを頭において仕事をしないといけない。役人の言うことばかりを聞いていたら、国民から自民党以下だと言われる。それだけは忘れないでくれ」とね。
渡辺:「痛みを分かつ」というのは、変節政治家と官僚が自分の無能を隠蔽する常套句だ。あなたは消費税の増税について非常に厳しく批判し反対している。
小沢:我々は総選挙で、特別会計を含めた国の総予算207兆円を全面組み替えて、国民主導の政治と地域主権の社会を実現すると国民に約束して、政権交代を認めてもらった。その理念、主張をまったく忘れちゃって、今までと同じやり方で予算編成を行っている。各省庁の要求を集めたものが総予算ですが、それが前年度の大枠よりちょっと出ていれば一律のカットするというだけのことで何も変わっていないわけです。
我々はそれを変えて、政治主導で国家予算の総組み換えを断行して行政の無駄を省き、中央集権の官僚支配を打破することによって、必要な財源も生み出していくと主張した。それで民主党は政権をいただいたんですよ。なのに何もせずに役人のペースにどっぷり浸って「お金はありません。だから増税です」という話しか聞こえないわけだね。これじゃ、国民の理解は得られない。
渡辺:政府・与党は消費税を5%上げて社会保障、年金財源にするという名分を掲げているが、本当にそうなのか。5%上げると、税収は約13兆円増える。ところが、今年7月に閣議了解された「社会保障と税の一体改革」の成案によると、13兆円の税収のうち、社会保障の充実に回るのは消費税1%分の2・7兆円。うち年金分は6000億円に過ぎない。つまり、消費税は倍に上げても大半は何に使うかわからない。痛みを分かつと言いながら、これではまた官僚に好き勝手に利権食いされるような心配が先に立つ。それが消費税増税の最大の問題点だと思う。
小沢:消費税増税を言う前に私は「当面の金はまだある」と言ってます。増税せんでも財源はある」と言っているんだけれど、誰もそれを言おうとしない。
僕はずっと所得税減税を主張していて、そのためには間接税の消費税の引き上げはいずれ検討しなくちゃいけないかもしれない。それは否定していないけれども、なんの政治理念もなく、何の努力もせずに「痛みを分かち合ってください」というのは詐欺的行為だと思います。税制論議以前の問題だね。
渡辺:消費税アップの「社会保障・税一体改革成案」は7月に閣議了解したといわれているが、実際は与党の国民新党が反対したために閣議決定できず、閣議了解さえもできていない。「閣議報告」という形で当時の菅内閣は発表した。だが、政策だけは既成事実となり野田首相はいつの間にか「もう決定した」みたいなことを言う。行政の正しい手続きすらない。
小沢:野田さんが本当に国民のために、お国のためにそれが必要なんだ、それはこういう理由からだとちゃんと説明して、自分の政治生命を懸けるという決意がはっきりすれば、まだ国民はそうなかなという気持ちになるかもしれない。けれども、上げた消費税を何に使うのかもわからない。ただ闇雲に消費税、消費税と言っているようにしか見えないから、絶対に国民に理解されないと思います。
渡辺:あなたは優しいからそう言う。(笑)でも、野田首相が今の状態でいくら説明し、決意を述べたとしても納得できない。
小沢:いや、僕も賛成しないですよ。
■増税推進なら「他の手段」を考える
渡辺:先ほどの一体改革成案には、現在65歳の年金支給開始年齢の68〜70歳への引き上げが盛り込まれている。増税が年金充実のためというなら、給付が手厚くならなきゃ辻褄が合わないのに、70歳支給になったら、国民の老後は真っ暗になる。現在、厚生年金の平均受給額は月に約16万円だから、支給開始が5年引き上げられると1人当たり1000万円の減額になる。
それだけでも空前の年金カット計画だが、なぜそれが必要なのか。厚生省年金局の「年金検証結果レポート」によると、年金財源に厚生年金で500兆円、国民年金で50兆円、合わせて550兆円の債務がある。1人1000万円ずつ年金を減らすと、厚生年金加入者は約3444万人だから344兆円が浮く。さらに、これから厚生年金に加入する19歳以下世代の削減額を含めると、550兆円の債務を帳消しにできる。いかにも役人らしい悪巧みが潜んでいることを『週刊ポスト』は指摘している。
これが「国民の生活が第一」を掲げて政権交代した民主党内閣がやろうとしている消費税増税と年金改悪の二重詐欺です。あなたの消費税増税批判はちょっと中途半端じゃないか。
小沢:我々は年金制度を根本から変えて一元化すると主張している。月額7万円前後の最低保障年金は消費税を全て充てて安定させ、その上に報酬比例年金を設けて、2階建ての新しい年金制度を作ると提案した。
ところが、それについても政府は作業をしていない。国民との約束をまったく顧みないで、支給開始年齢だけでなく、掛け金まで上げるというのだから、僕は本当に詐欺、裏切り行為だと思う。消費税も年金も所得税も国民負担を増やすという話には僕は到底賛成できない。
渡辺:大新聞も支給開始年齢の引き上げを叫んでいる。いわば内閣と官僚と大新聞の共同正犯行為による詐欺みたいな形になっている。
小沢:ただ、国民はかなり情報を正確に知るようになってきている。国民が情報を得る手段はもうテレビや新聞だけじゃない。いずれ国民に鉄槌を下されると僕は思います。
渡辺:公約に対して忠誠を誓うという意味において、先の大阪のダブル選挙、あるいはその前に愛知のトリプル選挙で当選した市長・知事たちの、有権者に対する死に物狂いの公約実現の努力をどう見るか。民主党も国の仕組みを変えると言ったけれども、今に至る政権の姿は橋下徹大阪市長、河村たかし名古屋市長と真反対です。
小沢:彼らが頑なに自分の主張、市民との約束を徹底して実行しようとしているということは、まず間違いないと思います。
それに反して民主党政権、そして今の自民党も、市民感覚からはもう駄目だと思われている。だから、荒っぽいかもしれないけれど約束は守る、国民のためには旧体制を壊さないと駄目だ、という橋下さんや河村さんに期待する結果になったのは無理もないと思う。
渡辺:その意味では、あなたはもう一度総選挙でその動きを作り直すしかない。
小沢:橋下さんは府庁舎や市役所そのものをぶっ壊さないと本当の改革はできないと主張している。僕も旧体制、アンシャン・レジームをぶっ壊さないと新しい世の中はできないとずっと言い続けてきた。それゆえに「壊し屋」とみんなから非難されているけれど、橋下さんはまだそういわれていないようだから、それだけでも彼はたいしたもんじゃないの。(笑)
予算編成のことを例にして言いましたけれども、自民党政権のときとずっと同じことをやってきておいて、金がない、何がないのと言ったって始まらないんです。
渡辺:民主党がアンシャン・レジームになってしまった。
小沢(苦笑しながら)そうなんだよね・・・。
渡辺:その民主党をどうやってもう一度ぶち壊すのか。
小沢:僕は現時点においては、野田さんが初心に帰り、政権交代の原点に思いをはせて、そして是非「国民生活が第一」の政策に戻って欲しいと、ひたすらに望んでいます。そうしなきゃ民主党政権に明日はない。必ず国民から見放される。
渡辺:すでに今日もない。
小沢:ん?今日もないけれども。(苦笑)
渡辺:次の総選挙で「今度こそやります」と訴えたからって国民は民主党を・・・。
小沢:それは信用しない。
渡辺:政策を担保する何か、あるいは覚悟が本気だと思ってもらうための新たな努力が必要ではないか。
小沢:さっき言ったように、僕は野田さんがまず「国民の生活が第一」の理念に基づいて、しっかりしたビジョンを語るべきだと思う。それがまったくないまま、ただ増税だけを推進しているとなると、民主党政権は滅びる。かといって自民党政権に戻ることもない。日本はぐちゃぐちゃのカオスの状況に入ってしまう。
渡辺:国外に目を転じると北朝鮮では金正日が死亡し、東アジア情勢が流動的になってきた。
小沢:突然のことで大変驚きました。核開発の問題もありますので、日中韓をはじめ関係各国が緊密に連携して、不測の事態に対処しうる体制を早急に構築することが肝心だと思います。
渡辺:選挙までの残り任期は少ない。今の政権が原点に戻らない場合、あなた自身はどういう覚悟を決めるのか。
小沢:その時は他の手を考えなきゃならない。
渡辺:その手段とは。
小沢:今、具体的にどうこう言うわけにはいかないけれども、今の政権がどうしても(原点回帰は)だめだといったら、僕も国民を裏切ることになってしまう。それは困るし、それによる日本の大混乱も防がなきゃならない。何らかの方法を考えなければならない。
渡辺:そのカオスを突き抜けるところで、あなたにとって2012年は相当過酷な年になる。
小沢:最後のご奉公です。文字通り「最後」です。
(以下次号)
※以上が「前編」です。「後編」は週刊ポストの次回の発売日が1月4日になっているようですので、その頃にまた書き起こしたいと思っています。
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