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[マニフェスト無残]政権交代は何だったか
全国 2011年12月24日 09時20分
(9時間41分前に更新)
政権交代を成し遂げた2009年衆院選で、民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)が総崩れ状態だ。新政権が誕生したのは有権者が公約に惹(ひ)かれたことが大きかった。だが、いま公約にかけた期待と熱気は見る影もない。
政府は、時代に合わない無駄な大型公共工事の代表としてやり玉に挙げていた八ツ場(やんば)ダム(群馬県)の建設を再開することを決めた。
政権交代直後に当時の前原誠司国土交通相が公約に基づき建設中止を打ち出し、賛否が渦巻いた。
後任の国交相は中止から軌道修正していたが、民主党政権の「コンクリートから人へ」を象徴する目玉政策だっただけに、建設再開で公約はすっかり色あせてしまった。
前田武志国交相は来年度予算案にダム本体工事費を計上すると説明。群馬県の現地で知事や町長に報告し、約2年3カ月の迷走を謝罪した。
八ツ場ダムの建設再開について、中止を宣言した前原政調会長は「無理やり予算に入れるなら、閣議決定させない」と反発している。これに対し、前田氏は「予算案は内閣が国会に提出する」と党側の関与を嫌っている。
前田氏と前原氏が対立するのは政府・党の政策決定の在り方があいまいなためだ。
公約には「内閣の下の政策決定に一元化へ」と盛り込んだが、野田佳彦首相は党政調会長の権限を強化し、予算案や重要政策について事前に政調会長の了解を得ることとした。前原氏が息巻いているのもこのためだ。
政治の混乱で復興が大幅に遅れている東日本大震災。東京電力福島第1原発事故は収束したとはいえず、その影響は長期間に及ぶ。
政治は変化する現実に迅速に対応しなければならず、公約が絶対ではないのは言うまでもない。だが、現状はあまりに惨憺(さんたん)たるものだ。
米軍普天間飛行場の移設先を「最低でも県外」としたのは事実上の公約となったが、それも自民党政権時代の辺野古に回帰している。
子ども手当も中学卒業まで1人当たり月2万6千円を支給するとしていたが、目標には届かず、来年4月から新しい制度に移行する。高速道路の原則無料化も1年間の実験の後に中止となった。
国の総予算の全面組み替えはできず、税金の無駄遣いの根絶もまだまだだ。月額7万円の最低保障年金を確保した年金制度改革、衆院定数を80減らすとした議員定数削減も手付かずのままだ。
公約の変更について野田首相は国民にきちんと説明する責任がある。マニフェストに期待して一票を投じた有権者への最低限の務めだ。
野田首相は公約として正面から取り上げていなかった消費税増税には「不退転の決意」で臨むと財務省とタッグを組んでまっしぐらだ。
マニフェストとは「国民との契約」と表現される重い意味が込められている。このまま公約の柱が次々とうち捨てられていくのなら国民はだまされたことになる。マニフェストは選挙に勝つための単なる方便だったのか。
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