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2011年12月23日 (金)
2011年年間回顧(1)消費税と小沢氏攻撃が織り成す綾
2011年も残すところわずかとなった。2012年を展望するにあたり、まずは、2011年を回顧することが必要である。
3.11の大震災と原発放射能事故の衝撃があまりに大きく、他のすべてがかすんでしまうのが2011年の特徴である。
しかし、こうしたなかで現実を注意深く観察すると、震災・原発事故を大きな背景としながら、そこに二つの大きな流れが生み出されていたことが分かる。
消費税という縦糸と、小沢氏攻撃という横糸である。この縦糸と横糸はひとつの布を編み込むように、相互に絡み合う糸である。
さらに、全体を覆い尽くしてきたのが欧州政府債務危機という暗雲であった。
3.11の大震災は、死者・行方不明者約2万人という未曽有の犠牲者を生み出した。戦後の自然災害で最大の犠牲者を生んだ巨大災害となった。
被害を生み出した最大の原因は津波だった。1896年に発生した明治三陸地震津波では岩手県綾里で38.2メートルの津波遡及高が観測されている。今回の津波では、一部地域で津波遡及高が40メートルを超えたことが報告されており、明治三陸地震津波とほぼ同規模の津波が日本列島を襲った。
原発事故が発生してから一般にも広く伝えられるようになったが、東北地方太平洋岸には、古くから定期的に巨大津波が襲来している。古くは869年の貞観地震津波が記録に残されているが、この巨大津波により東北地方の当時の海岸線から3〜4キロメートルも内陸部まで浸水していたことが明らかにされていた。
さらに、同規模の津波が450〜800年の再来間隔で過去に繰り返されていたことも明らかにされており、その研究の成果として、同規模の津波が近い将来に発生する可能性が強く警告されていたことも、3.11津波のあとに広く一般に知らされるようになった。
津波に備えて、太平洋岸の各地域では、巨大な防潮堤などが建設されてきたが、今回発生した巨大津波には無力であった。過去に発生した津波に対する検証と、その検証に見合う備えが十分に実行されては来なかったのだ。
かけがえのない人命を奪った最大の要因は津波である。過去に巨大津波に襲われた地域では、「これより下位に住居を建てるべからず」などの教訓を残した箇所が多数ある。その戒めをかたくなに守った地域では、人的被害の発生を回避できた地域もある。
日本は地震国であり、かつ、周囲を海洋に囲まれた海洋国家である。人的被害をもたらす最大の脅威が津波であることは明白であり、昭和、平成の時代においても、巨大な犠牲者を生んだ最大の原因は津波なのだ。
この教訓を生かさなければ、尊い多数の犠牲者の御霊は慰められることがない。
東北地方の復興計画の策定が始まっているが、巨大な人的被害を二度と引き起こさないという、絶対的な基準が明確に定められているか。住み慣れた海外線近辺に居住したいという住民感情は理解できる。また、高台に移転する場合の用地費を誰が負担するのかという難問も発生するだろう。
しかし、これこそ、政府が強いリーダーシップと責任を発揮して対応するべきことがらではないか。二度と巨大な人的被害を生まないよう。津波被害の危険のない場所に住民が安心して暮らせる環境を整備することを、行政の責任の範疇に組み入れるべきである。
巨大地震・巨大津波が発生したが、決して想定できない規模の地震や津波ではなかった。専門調査機関がさまざまな調査を実施して、450〜800年の再来間隔で巨大地震と巨大津波が襲来することを学術的に明らかにし、そのうえで、とりわけ原発の構造対策に反映することを再三にわたって要請してきたことも明らかにされた。
3.11地震・津波の最大の特徴は、これに連動して原発事故が発生したことにある。
12月20日付記事に記述したが、サブプライム危機と原発事故は、時代を画する出来事である。「効率と成長」から「調和と共生」に価値規範の軸を転換する、その契機となる出来事であるというのが、私の率直な受け止め方である。
原発事故はなぜ生じたのか。原発事故の対応で明らかになったものは何か。
原発事故のあと、政府は何を実行し、何を目指したのか。
多くの驚くべき事実が明らかにされたのである。
その詳細を拙著『日本の再生』(青志社)に記述したので、ぜひ、ご高覧賜りたいが、2011年を回顧するに際して、これだけに目を奪われることは許されない。
日本の再生
著者:植草 一秀
販売元:青志社
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縦糸の消費税、横糸の小沢氏攻撃がひとつの布を織りなし、米・官・業が日本政治を支配するという旧制復古が民意を無視して進められたことを見落としてはならない。
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