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【小沢被告第11回公判】会計専門家「収支報告書は家計簿と同じレベル」
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/111220/trl11122022180007-n1.htm
2011.12.20 22:13 産経新聞
《資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる虚偽記載事件で20日、政治資金規正法違反罪で強制起訴された民主党元代表、小沢一郎被告(69)の第11回公判が開かれた。この日、証人として出廷したのは、筑波大学の男性教授。会計学の専門家だ》
《陸山会は問題となっている土地について、平成16年10月に購入代金の支払いを終えたが、所有権移転の本登記を行ったのは翌17年1月。土地代金の支出は16年分ではなく、17年分の政治資金収支報告書に記載している。検察官役の指定弁護士は、これが「虚偽記載にあたる」と主張しているが、これに対して弁護側は本登記を基準にした記載に違法性はないとしている》
《午後1時10分、明るい青色のネクタイを着けた小沢被告は入廷すると、裁判官らに向かい、一礼した。大善文男裁判長が開廷を告げる》
《続いて、証人の教授が入廷。弁護側は商事法、制度会計を専門とする教授の略歴などについて確認した後、企業における会計処理の方法について質問を始めた。教授は、企業については情報提供先として想定されるのが投資家や債権者らで、財政見通しなどを含めた広範な財務状況の開示が求められるのに対し、政治団体は「より『固い』確実な情報を提供する目的がある」と指摘。「経済実態」を示す企業会計と対比させ、政治団体が開示すべき情報を「法的形式」という言葉で表現する》
弁護人「『法的形式』がより重視される理由はありますか」
証人「形式であれば外部から見ても分かる状態で会計処理され、主観の見積もりが入りづらいです」
弁護人「他にメリットはありますか」
証人「(会計書類の)作成者も予想の見積もりを立てる必要がなく、簡単です」
弁護人「専門知識がなくても『法的形式』であれば会計処理できると?」
証人「おっしゃる通りです」
《教授はすでに提出した意見書の中で、「法的形式」の観点に基づけば、本登記の時点で土地代金の支出を収支報告書に記載した陸山会側の対応に問題はなかった、としている》
証人「不動産の引き渡し時を特定するのは難しい場合もある。客観的に確定される登記時が、中小企業であれば基準になります。むしろ、本登記していないものを収支報告書に計上することに問題が生じる可能性もあります」
弁護人「資産取得と支出の計上時期は、同一年度であったほうがよいと考えますか」
証人「支出だけ記載され、資産の記載がなければ、誤解を生む恐れがあります。例えば前年に5万円の手付金を払い、翌年に95万円で資産を取得したとしても、資産取得代金が『95万円』と記載されるべきではないと考えます」
《教授は会計学の視点で、資金管理団体の帳簿について、一般企業と同様の厳格な基準で論じるべきではないと繰り返し強調する》
弁護人「政治資金規正法は、資金管理団体にどの程度のレベルの会計処理を求めていますか」
証人「現金の収支がきちんとしているかどうかを求めているが、公認会計士も監査法人も通さない仕組み。非常に乱暴な言い方になるが、主婦が家計簿をつけるレベルにかなり近い。せっかくつけたから、配偶者に報告する、そういうイメージだ」
《「主婦」は政治資金団体の会計責任者、「配偶者」は国や国民を指すのだろうか》
弁護人「会計学の専門家でなくても作れるのが収支報告書ということですね」
証人「会計だけでなく、法的な知識がなくても作成できるもの。(一連の土地売買が)終わっていないから記録しなくてもいい、という素朴な感覚を否定するルールを(政治資金規正法が)定めているとは考えられません」
《弁護側の尋問が終わり、30分の休廷を挟んだ後、指定弁護士側の反対尋問が始まった。小沢被告は開廷時と同様に一礼して入廷し、肩を上げ下げしリラックスした様子で席に座る》
《質問に立った指定弁護士は、教授の意見書は前提事実に問題がある、と指摘した。不動産会社と陸山会は16年10月に、同月内に売買が完了するとの契約を結んだが、登記は翌17年1月に行われた。弁護士側はその過程で「売買契約が売買予約契約に変更された」と主張、指定弁護士側は「売買契約は10月中に完了した」としているが、この争点が欠落している、という内容だ》
指定弁護士「売買予約契約に変更されたと理解したんですか」
証人「変更と推測しました。若い頃には法学を勉強した身ですから。暗黙の理解で当然、契約内容の変更があると思ったが、意見書では会計学の専門家として、そのことに直接ふれていません」
《指定弁護士は本登記を17年1月にする、という内容の司法書士あての委任状を廷内モニターに表示した。委任状は本登記日の「1月7日」部分が手書きされている。実質的には、16年中に売買に関するすべての業務が終わっていたとして、指定弁護士は教授に質問。これは、教授が意見書を提出した段階で持ち合わせていなかった情報で、指定弁護士側は判断の変更を迫っていく》
証人「白紙で委任状が出されていたなら、(16年に)所有権の移転がなかったというのは無理がある、ということはありえます。しかし、(「1月7日」が)事後に埋められたのでなければ、やはり最終的に手続きが終わったのは1月7日となる。会計学的な評価は難しいです」
《指定弁護士との押し問答が続くが、自説の撤回には頑として応じない教授。根負けした様子で質問が終わり、別の指定弁護士が質問に立つ》
《指定弁護士は16年分の収支報告書で、登記を終えていない別の不動産が、売買契約段階で記載されている点を指摘。矛盾を強調するが、教授は「16年分の収支報告書に土地購入を記載したくなかった、という動機1つでは、翌年の記載が合理性を欠くとはいえない」「矛盾の可能性はあると思うが、はっきりいう根拠がない」と繰り返し、指定弁護側に言質をとらせない》
《指定弁護士の尋問が長引き、裁判官の尋問は閉廷予定の午後5時を過ぎて開始される。左陪席の裁判官は、土地取得と報告書の記載の「期ずれ」の問題について疑問を呈する》
裁判官「16年に取得した土地を17年分の収支報告書に記載してかまわないということですね」
証人「そうです」
裁判官「どの条文を解釈しているんですか」
証人「取得年月日を書けという(政治資金規正法の)要求は、報告書を作成する人が、本登記した日を書くと理解されます。16年に土地取得を書けないのに、支出だけ書くのはアンバランスです」
裁判官「でも、司法上は誤りなんですよね」
証人「土地取得が(年内に完了していると)特定できていれば、誤りです」
裁判官「後で誤りが分かっても、直さなくていいのですか?」
証人「難しい質問です。企業が過年の誤りを一つ一つ訂正しているかどうか…」
裁判官「誤りは直した方がいいですか」
証人「直した方がいいか、そこまで要求されているかどうかは言い切れません」
《右陪席の裁判官も、この日の論点となった法解釈について改めて数点確認。大善文男裁判長は質問せず、審理を終えた》
《次回期日は年明けの1月10、11日で、いよいよ小沢被告の被告人質問が行われる。大善裁判長から日程を告げられ、小沢被告は「わかりました」とはっきりと返答した》
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