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●「隠れ増税派の財務省系議員もいる」(EJ第3205号)
2011年12月20日 :{Electronic Journal}
林芳正参院議員は、復興債について次のように述べています。
東日本大震災のほぼ一カ月後の2011年5月のことです。
復興の財源についてわれわれは、既存の予算のなかの4Kのような不要不急のものを削ったうえで、「復興再生債」を発行すればいいと考えている。 それはいままでの赤字国債、建設国債とは別勘定とし、償還にあたっても別途、資金を調達する。たとえば10年償還だとすれば、これから10年のあいだにそれを返す資金を調達すればいい。
これだけの大きなショックで経済が落ち込んだ直後に増税をするようなことをせずともいいのだ。
その場合、個人的な意見を申せば、いずれかの段階で所得税や法人税を臨時的に割増して、毎年決まった額を返還資金として貯めていく。
発行段階から償還への道筋を描き、いままでの国債とは別の枠組みで、そこで完結するように設計する。こうすれば、年金財源にも手を付けずに済み、急な消費税大幅増税といった事態も避けられる。
──上念司著
『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』/徳間書店
林議員は非常に慎重なものいいをしています。まず、「復興再生債」の発行を提案していますが、「いままでの赤字国債、建設国債とは別勘定」といい、意識的に建設国債を外しています。これは財務省の増税説得話法と同じです。
続いて、ひとつの例と断わって、「10償還」という言葉を出し、その間に返していけばよいといっています。10年というと長い期間のように思えますが、復興債の償還期間としては非常に短いのです。そして「これだけの大きなショックで経済が落ち込んだ直後に増税をするようなことをせずとも・・」と述べています。これで誰でも林氏は増税反対だと思ってしまいます。
しかし、「所得税や法人税を臨時的に割増し」という表現で増税という言葉を避け、しっかりと実質的な増税を主張し、発行段階から償還への道筋を描き、毎年決まった額を返還資金として貯めることを提案しています。何のことはない。増税によって復興再生債を償還する提案なのです。
復興債の発行は仕方がないが、増税で財源を確保してきちんと計画的に返済する必要がある──ここまでは財務省の増税説得話法そのものです。それでは、「日銀の国債直接引受」はどうなのでしょうか。林芳正氏は次のように述べています。
復興財源を日銀が直接引き受ければよいとの議論もあるが、それを主目的にした政策形成や国債発行は避けた方がよい。「日銀の直接引き受け」という側面が強調されることで、逆に、日本国債の需給状態がよくないとの誤解を与えてしまう恐れがある。
要は、国債が安定的に消化されることが大切なのだ。いまでも日銀は、市場を通じて国債を引き受けている。現在のように1.2 〜3%という低い金利で国債が消化されているあいだは、まだそこまで考える必要はない。
──上念司著
『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』/徳間書店
林芳正氏の話を聞くと、国債の日銀直接引き受けはきわめて特殊なもので、きわめてリスキーなものというイメージを持ってしまいます。まして林氏のような経済の専門家からいわれると、本当にそうなかなと思ってしまうものです。
しかし、既に述べたように、日銀直接引き受けは必ずしも特殊なことではなく、毎年のように行われているのです。まして今回のように100年に一度の大震災で、非常時でもあるので、特別会計の予算総則第5条に定められている金額の範囲内であれば、復興再生債を引き受けても何ら問題はないはずです。
それにしても野党である自民党の林芳正氏がなぜこのように財務省と同じ趣旨のことを主張するのでしょうか。
それは、林芳正氏が元自民党衆議院議員の林義郎氏の子息であることに関係があります。林芳正氏は2世議員なのです。父の林義郎氏は、第1次中曽根内閣で厚生大臣、宮沢改造内閣で大蔵大臣を歴任しているのです。
1992年12月に父の義郎氏が大蔵大臣に就任したとき、芳正氏はハーバード大学に在籍していたのですが、急遽休学して帰国し、父の大臣秘書官を務めたのです。このとき、大蔵省の官僚と深い接点ができているのです。大蔵省でも財務省でもそうですが、将来財務相になれそうな有望株が出てくると、財務省として情報提供したり、財務官僚をコンタクトさせて囲い込みを行うのです。林芳正氏などはまさに逸材であり、財務省人脈の一人として財務省が目をつけて育成した人材であると思われます。
このように意外な人物が財務省の代弁者であることが多いのです。そういう政治家は与野党に幅広く存在するのです。したがって、今回の消費増税では財務省はそういう核になる政治家にはすべてコンタクトし、増税擁護で論陣を張ってもらうように依頼しているのです。
ところで林芳正氏といえば、菅前首相が財務相だったとき「乗数効果」で1本取った人物として知られています。そのときのやり取りは「画像および関連情報」をご覧いただくとして、菅財務相(当時)が、経済の基本的な知識に弱いことを林氏に近い財務官僚が知らせていたという話は有名です。
現在の野田内閣が完全なる財務省主導になってしまった原因も首相をはじめ、閣僚の勉強不足にあるといえます。内閣全体が、財務省の論理に完全に乗ってしまっており、正しくないことも正しいといいくるめられているのです。
ウソも何回も繰り返されると、本当になってしまうのです。日本の財政は危機的状況にある──このフレーズは多くの日本人のアタマの中に刷り込まれてしまっています。ウソが本当になっているのです。
── [財務省の正体/31]
≪画像および関連情報≫
●乗数効果をめぐるやり取り/お粗末の一言
菅 財務相:1兆円の予算を使って1兆円の効果しかない公共事業はだめだ。
林 芳正氏:では子ども手当の乗数効果はどれぐらいか。
長妻厚労相:子ども手当は実質GDPを0.2 %押し上げるが、乗数効果はわからない。
林 芳正氏:GDPの増分を財政支出で割れば乗数効果は出るだろう。
仙谷 大臣:1以上であることは間違いない。幼保一体化すれば・・(ヤジで意味不明)
(中断。3分後再開)
菅 財務相:子ども手当の消費性向は0.7 程度。定額給付金は0.3 ぐらいだった
林 芳正氏:消費性向と乗数効果の違いを説明してください。(中断。3分後再開)
菅 財務相:乗数効果の詳細な計算はまだしていない。
林 芳正氏:計算すればわかるだろう。消費性向と乗数効果の関係は?
菅 財務相:1兆円の事業に金を使ったとき1.3 兆円の効果があれば、乗数効果は1.3 。
(中断。1分後に再開)
林 芳正氏:消費性向が0.7 ということは、1を切っている。財政支出より低いのだから、
財政支出を切って子ども手当にしたら、景気への効果はマイナスになるのではないか?
(中断。1分後に再開)
菅 財務相:子ども手当の効果は1以下だが、その他の効果がある。
子育てで働けない人が働けるとか少子化が防げるとか・・・
林 芳正氏:市場が暗くなるといけないので、もうやめる。
池田信夫ブログ:乗数効果を知らない財務相
尚、著書のAmazon アソシエイトリンクはasyuracom-22 です。
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/241417644.html
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