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2011年12月20日 (火)
市場原理主義=弱肉強食奨励勢力台頭を警戒せよ
サブプライム金融危機と福島原発放射能事故は、ひとつの時代の終わりを告げる出来事である。
この重大なことがらを感じる感性が私たちに残されているか。
2001年に登場した小泉政権を多くの国民は、白馬の騎士のように歓迎した。この政権が日本の低迷を払拭してくれるのではないかと、淡い期待を寄せたのである。
「いまの痛みに耐えてより良い明日を目指す」
の言葉に多くの国民は幻惑されてしまった。
小泉政権が掲げた政策の柱は、市場原理主義と財政再建原理主義であった。
「退出すべき企業は市場から退出させる」
2001年末に青木建設が倒産したとき、小泉首相は「これは構造改革が順調に進展している表れである」と述べて、青木建設の破綻を歓迎する発言を示した。
強い者のみが生きる。弱い者が死ぬことを厭わない。弱肉強食を奨励する方針が明確に示された。
他方、財政政策運営では「国債を絶対に30兆円以上発行しない」ことが政権公約に掲げられた。史上最強の緊縮財政が実行された。
緊縮財政で経済にブレーキを踏み、「退出すべき企業は市場から退出させる」との、企業破綻推進の政策運営を実行すれば何が起きるのかは明白だった。
私は、小泉政権がこの方針で政策を実行するなら、日本経済は間違いなく奈落の底に落ちる。金融恐慌に突入してもおかしくないと明言した。
小泉政権が発足したとき、日本全体が小泉政権を支持する空気に包まれたが、私は、政権発足の瞬間から、小泉政権下で日本経済は最悪の状況に突き進むとの予測を明確に示した。
大半のエコノミストは「小泉構造改革で株価は上昇する」と予測した。私は小泉竹中経済政策で、株価は暴落、日本経済は奈落の底に向かうと予測した。
現実に株価は小泉首相が所信表明演説を行った2001年5月7日の14,529円を起点に、2003年4月28日の7607円まで、暴落していった。この過程でりそな危機が創作され、日本経済は金融恐慌の一歩手前にまで追い込まれたのだ。
「いまの痛みに耐えてより良い明日を目指す」
はずが、
「いまの痛みに耐えている間に、さらに体全体を激痛が走る」
ようになったのである。
小泉政権が発足した2001年度当初予算の国債発行額は28兆円だったが、この財政赤字が2002年度には35兆円に急増した。緊縮財政で減らしたはずの財政赤字は、逆に35兆円に急増したのだ。
小泉竹中政治が叫んだ「改革」の中身は何であったか。小泉政権が実現したことは、住宅金融公庫の廃止、道路公団の民営化、郵政民営化の三つ、プラス、派遣労働の規制緩和だった。
「改革」と大騒ぎした割には、成果は乏しかった。
その功罪を見る。住宅金融公庫はあまた存在する政府関係機関のなかで、例外的に国民からその存在が評価されていた機関だった。国民が評価する例外的な機関である住宅公庫を民営化したのは、小泉首相が銀行界に利益を供与するためだった。銀行界は貸出ビジネスが縮小し、住宅ローンビジネスを拡大したかった。ところが、国民に低利資金を提供する住宅公庫が存在するのでは、この分野の業務を拡大できない。
小泉純一郎氏はれっきとした大蔵族議員であり、銀行業界への利益供与をなりわいとしていた。その一環で、住宅公庫を廃止して民間銀行に利益を供与したのだ。
道路公団は民営化されたが、国民から高額道路料金を徴収する仕組み、ファミリー企業が跋扈して天下り王国を形成している状態はまったく変わっていない。民営化されたことで、国会の監視が行き届かぬようになった分だけ、不透明性は強まったのが現状だ。
郵政民営化は米国に利益を供与するための施策である。四分社化したが、失敗だらけである。株式売却が凍結されたから、郵政マネーが米国に略奪されることは回避されているが、かんぽの宿疑惑に代表されるように、一部の外国資本が濡れ手に粟の暴利をむさぼる青写真が描かれていたことは間違いない。
規制緩和として実行された派遣労働の製造業への解禁がどのような結果をもたらしたのかは、あえて説明するまでもない。
2008年の年末、サブプライム危機不況に直面した製造業は、一斉に派遣労働者を放逐した。製造業に派遣労働を認めるなら、経済が急激に悪化する場合の、労働者に対する安全網=セーフティーネットを整備することが不可欠であった。ところが、小泉−竹中政治は、何の手当てもなく派遣労働の大幅解禁に踏み切った。
その結果、多数の国民が命からがら日比谷公園にたどりつき、年越し派遣村で2009年の新年を迎えたのである。
サブプライム金融危機をもたらしたものは、強欲資本主義である。あくなき暴利の追求、実体のない机上の空論を積み上げたマネーゲームによって、法外な利益を獲得することが目指された。この過程で、強欲資本主義者たちは、制御不能な規模にまで、金融工学商品の残高を膨張させた。デリバティブ金融バブルは膨張し、そして破裂した。
2008−09年のサブプライム金融危機、2011−12年の欧州政府債務危機は同じマグマ系列から噴出したものだ。
強欲に不労所得のバブルを追求し、ごく少数の者がこの世に現存する所得と富を独占的に支配する。この強欲資本主義の破綻を示しているのが、サブプライム金融危機であり、欧州政府債務危機なのである。
この失敗の教訓とともに、新たな思想と思潮上の変化が生み出されている。弱肉強食奨励の市場原理主義から共生重視の共存共生主義がもう一度見直され始めている。
福島原発の放射能事故も、あくなき利益の追求を是とする強欲資本主義が必然的にもたらした、起こるべくして起きた事故である。
共存共栄を否定し、ひたすら際限のない利益を求める強欲資本主義がもたらした、システムの失敗が今回の福島第一原発放射能事故である。
私たちはいま、「効率」ではなく「調和」を求めるべきである。
私たちはいま、「官僚の利権」をはく奪し、「国民」への還元を求めるべきだ。
私たちはいま、「核の利用」を断念し、世界の非核化を進展させるべきである。
これを実現することが次期総選挙に向けての最大の課題である。
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