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2011.12.18 大阪維新の会の試金石と課題、国政進出と同和行政(解同問題)の刷新、(ハシズムの分析(その3)〔リベラル21〕
〜関西から(46)〜
広原盛明(都市計画・まちづくり研究者)
12月19日の橋下新市長就任を控えて、目下、大阪維新の会は「絶好調」であるかに見える。すでに橋下氏による大阪市役所幹部からの「聴き取り」(というよりは要求・注文)は終わり、年内立ち上げ予定の府市統合本部の最高顧問に堺屋太一氏が決まるなど陣容も整ってきている。関西の新聞・テレビは連日その一挙一動を報道しており(関東では違うかもしれないが)、視聴者の関心も引き続き高い。
また選挙直後の空気の反映とはいえ、毎日新聞の全国世論調査(12月3、4日実施)では、「大阪維新の会の活動に魅力を感じる」と回答した人が65%に上り、「感じない」とする回答31%を大きく上回った。一方、既成政党の支持率は民主・自民とも17%と相変わらず低迷しており、「支持政党なし」がほぼ半分の49%に達している。(毎日12月5日)
この世論調査のなかで注目されるのは、民主党支持層の74%、自民党支持層の63%、公明党支持層の48%、無党派層の63%が「大阪維新の会の活動に魅力を感じる」と回答していることだろう。つまり大阪のみならず全国的にも既成政党離れが進み、有権者の政党支持構造に重大な変化が生じているのである。これらの調査結果から、毎日新聞は「維新の会代表を務める橋下徹・大阪新市長は「大阪都構想」を実現するため、国政選挙での独自候補擁立にも言及しており、今後、既成政党側の維新接近が強まりそうだ」との観測を導き出している。(同上)
またそれに続くNHK全国世論調査(12月9〜11日実施)でも、野田内閣に対しては発足後3か月で不支持が初めて支持を上回り、「支持しない」42%が「支持する」37%を逆転したにもかかわらず、その一方、「大阪市長選挙で当選した橋下徹氏が代表を務める大阪維新の会が「大阪都構想」の実現を目指して国政に進出することを望ましいか」との質問に対しては、「望ましい」28%、「どちらかといえば望ましい」31%、「どちらかといえば望ましくない」17%、「望ましくない」11%という肯定的結果になった。この結果は毎日新聞と比べてもほぼ同様の傾向を示しており、大阪維新の会に対する世論は「肯定6割」「否定3割」で変わっていない。
こんな数字に気をよくしたのか、橋下氏は12月13日の記者会見で次期衆院選に維新が候補者を擁立する場合、「大阪都構想と道州制を訴える。国のかたちを変える道州制が次の選挙の主役になる」と述べた。さすがにこの発言に対しては、井戸兵庫県知事から「大阪都をつぶして関西州に変える話しで、都構想と矛盾しているのではないか。地域政党である維新が国政選挙に出るために国家的課題を取り上げたのではないか。直ちに共感を得られるかは別の問題だ」と批判されることになった。橋下氏の浮かれ様が目に見えるというものだろう。(日経12月14日)
たしかに大阪維新の会が、当面、民自公体制が膠着する閉塞状態のなかで国民の反射的な(一過性の)期待を集める可能性はあるのかもしれない。だが私は、「大阪維新の会=ハシズム」は所詮“大阪止まり”の局地的・瞬間風速的現象だと考えている。大阪都構想が全国版の「見せかけのパン」になるにはその中身があまりにも貧しすぎるし、また大阪都構想を全国バージョンの「道州制」に嵩上げしたとしても、道州制自体がすでに手垢にまみれた不人気なスローガンである以上、国民を惹きつける「見せかけのパン」になりようがないからである。
一方、橋下新市長がただちに直面しなければならない大阪市政の課題には、膨れ上がった大阪市役所の機構改革問題がある。聞くところによれば、幹部職員はもはやそれなりに腹を括っているというが、一番落ち着かないのは、「余剰人員」がだぶついているといわれる現業職場だそうだ。そこでは日々、寄るとさわると“1万2千人削減”の話で持ちきりなのだという。
それはそうだろう。これまで大阪市役所は、市当局・市議会・市労連が三位一体で強固な利益共同体・「市役所一家体制」を形作ってきた。その象徴的存在が解同(部落解放同盟)との癒着にもとづく現業職場での「余剰人員」問題だった。平松前市長が選挙前の退任記者会見で、「在任中に一番頭を悩ましたのは、相次ぐ職員不祥事問題だった」と述懐したことがいみじくもそのことをあらわしている。
周知のごとく、大阪市は市民千人当たりの職員数(2008年10.4人)が政令指定都市平均(同7.2人)に比べて1.5倍近くにも達している。もちろん民営化路線を遮二無二進めて大リストラ政策を強行した中田横浜市政などとの安易な比較は慎まなければならないが、それにしても現業職場での「余剰人員」問題の存在を否定することはできない。また凶悪事件も含めて年間2桁に達する職員不祥事についても、本来公務員としての自覚や資質に乏しい(欠ける)職員がこれまで多数「選考採用」されてきたことをうかがわせる。
この問題は、マスメディアでは表立ってほとんど報道されることがない。大阪市の「余剰人員」問題はことあるごとに指摘されるが、大半はその中身を論じることなく単なる量的比較で終っているのである。どこで「余剰人員」問題が生じているかを具体的に解明することなく、単なる上辺の数字の比較で「事足れり」としているだけだ。これでは「垂れ流し記事」の類だと言っても過言ではなく、問題を摘出することもできないし、処方箋を書くこともできない。
しかし選挙前に大阪で行われたジャーナリスト関係の討論会では、ある全国紙の論説委員が「大阪市役所の一家体制を崩すには、信長が比叡山の焼き打ちをしたぐらいのことをしなければ解決しない」と語ったほどの深刻な問題なのだ。平松氏敗北の有力な原因が、平松氏が同和行政(解同問題)の刷新にさしたる実績を上げられず、心ある職員が市長の“優柔不断”に絶望して多数離反していったことが大きいといわれる。
このことはまた、大阪市民の投票行動にも大きな影響を与えている。橋下氏を「独裁」と批判して平松支持に踏み切った共産党の大胆な政治決断は大方の支持者から賛同を得たものの、そのなかから少なくない橋下支持票が出たのは、平松氏では解同問題を解決できないと見なされたためだろう。“信長”のようなやり方でなければ解同問題の刷新は無理だとして、少なくない共産党支持者がその期待を橋下氏に託したのである。
したがって、橋下市政の第1の課題は、新市長がどれだけ解同問題に切り込み、同和行政を抜本的に刷新できるかにあるといえる。大阪市政の内実を詳しく点検すれば、余剰人員問題のみならず同和関係団体・関係施設への膨大な補助金がたちどころに浮かび上がってくる。また公共事業の受注に関しても「公開競争入札」が原則であるにもかかわらず、実質的には“談合指名入札”が横行している。「同和枠」という予算が各部局で厳然と受け継がれ、予算執行に際してもその「枠」が同和系団体・企業によって消化されるという慣行が続いているのである。
知事時代に、橋下氏は「同和問題は解決されていない」と広言した。その本人が果たしてこの課題に取り組めるかどうかは大いに疑問の残るところであるが、自らの出自をめぐって「いわれのないこと」と激怒したのであれば、容赦なく同和行政(解同問題)の暗部に切り込むことで、大阪市民の前に新市長としての覚悟のほどを示してほしい。
また、中田前横浜市長が大阪市副市長として就任することが巷間伝えられているが、もしこの異例の人事が実現するとすれば、中田新副市長の役割は何よりも同和行政(解同問題)の刷新でなければならないだろう。幸い関西や大阪に余りしがらみのない中田氏のことだから、横浜市政で振るった「辣腕」を同和行政(解同問題)刷新に発揮することはさほど難しくないのではないか。
ともあれ、大阪市民の目は橋下新市長の手腕に鋭く注がれている。そして、もし「スーパーメガ官庁・大阪市」の刷新が「同和抜き」で行われるようなことになれば、その時にどれだけのリアクションが返ってくるかは想像を超えるものがあるだろう。
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