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●「なぜ、名目GDPの増加に注力しないのか」(EJ第3199号)
2011年12月12日 :{Electronic Journal}
日本の財政の何が問題なのかというと、税収よりも、実際に必要な経費である「経常経費」がその倍以上あるということです。
これは、1975年度以降に日本経済の成長率が大幅に低下したことと連動して、経常経費についての借金を年々重ねてこざるを得なくなったのです。
このようにして積み上げられた借金──赤字国債は2011年度末において、391兆円に達する見込みです。この借金だけは何としても早く返済する必要があります。これを返済するには、どうすればよいでしようか。
それは「税収」を上げること──これしか方法はないのです。
問題は税収を上げるにはどうすればよいかです。ところで、日本の税収は何によって決まるのでしょうか。
税収 = 名目GDP × 税率 × 税収弾性値
最初はごく大雑把に考えます。税収は名目GDPによって支えられています。GDPというのは、経済活動のすべて──自動車を購入したり、家を建てたり、タバコを買ったり、タクシー代を支払ったりするなどの生産性を示すもので、日本国内で日本人が使ったお金の総合計を指します。このGDPの増減が経済の成長率を示すことになります。
そうだとすると、税収は名目GDPの多寡によって決まってくるのです。日本の経済状況は目下デフレですが、デフレは名目GDPを減少させるのです。さて、増税をするということは、上記の式で税率を上げることに相当します。
この場合、税収が伸びるのは、名目GDPが変化しないときだけです。しかし、増税すればデフレは一層深刻になり、名目GDPはさらに減少してしまいます。そうすれば税収は今よりも減少し、赤字国債の額はさらに積み上がってしまうのです。何のための増税なのでしょうか。野田首相はなぜこのような簡単な理屈がわからないのでしょうか。本当に税収を増やしたいなら、増税をしては駄目なのです。
ついでに名目GDPと実質GDPの違いについても触れておきましょう。名目GDPと実質GDP、どちらも国が経済成長をしているかどうかを測るためのものさしです。この場合、名目GDPは「金額」、実質GDPは「数量」と考えるとわかりやすいと思います。
よく使われる例ですが、日本という国をみかんだけを売っている店であると考えてみます。そうすると、その店の売上高がGDPということになります。
ある年にその店でみかんを100個売ったとします。そして次の年には105個売ったとします。これを数量と金額で考えるのです。まず、数量について考えます。
(105円−100円)/100=0.05 → 5%
この5%が実質GDP成長率ということになります。次に金額について考えます。ある年にみかんは1個100円であるとします。それが今年物価が下がって1個50円になったとします。
ある年 → 100円×100個=10000円
次の年 → 50円×105個= 5250円
(5250円−10000円)/10000=
−0.475→−47.5% ─→ 名目成長率
政府はなるべく名目GDPに触れないようにしています。名目はなかなか伸びないからです。サラリーマンのケースでいうと、給料が減ったというのは名目の考え方ですが、デフレで物価が下がっているので買い物はできるというのは実質の考え方です。
「税収」の式に戻ります。税収を増やすには、名目GDPを上げればよいのです。所得税は累進課税であり、年収が増えると税率も上がるのです。そして消費も活発になります。
ものが売れると、企業の利益も増えるので、法人税も増えるのです。企業の場合は、赤字になると法人税はゼロなので、名目GDPが増えると、法人税は大幅に増加します。
ここで式の最後の項目である「税収弾性値」について知る必要があります。「税収弾性値」とは、名目GDPが1%の場合に税収が何%伸びるかを示す数値です。高橋洋一氏は、過去15年間の税収弾性値は「4」であるとして、次のように述べています。
過去15年間の税収弾性値は、税制改正を無視すると、平均で4。財務省はいつも「1.1」 という低めの数字で計算している。財務省の連中は、みんな本当は税収弾性値がこれより高いことを知っている。なぜなら、成長率が高まると、実は法人税収がすごく増える、赤字から黒字になって、税金を納めるようになる企業が増えるから。それをみんな知っているのだけれど黙っているのですよ。
──高橋洋一氏
上念司著/徳間書店刊
『日本再生を妨げる/売国経済論の正体』
2010年度における日本の名目GDPは総額で475兆円で成長率は0・4%です。もし、名目GDP成長率を4%にすることができると、増加分の3・6%に4をかけると、税収は14・4%増えることになります。税額でいうと、約6兆円であり、消費税2・5%分の増税で得られる額と同じです。
消費増税という発想ではなく、なぜ野田政権は名目GDPを増やすことに注力しないのでしょうか。財務省は確実性のない経済成長よりも税金で取ろうとしているのです。経済がどうなろうとその方が確実だからです。
── [財務省の正体/25]
≪画像および関連情報≫
●財政危機はいつまで続く/税収弾性値「1・1」の功罪
国や自治体の財政見通しには、しばしば「税収弾性値」が用いられます。「弾性値」とは「ある指標の1%の増加が他の指標の何%の増加につながるのか?」を意味します。(「ある指標の1単位の増加が、他の指標の何単位の増加につながるのか?」を意味する「弾力性」とは異なることに留意!)よって、税収(の対名目GDP)弾性値とは、「名目GDPの1%の増加に対し、税収が何%増加するのか(ただし、税目ごとの動向などを見る場合は、法人所得や雇用者所得といったケースもあります)」を示すものです。
また、とくに政府の財政見通しにおいては、この税収弾性値に「1・1」という数字が用いられます。これは、ある程度長期の税収とGDPの関係(75年以降、近年までを推計期間とした場合の値らしい・・・)から導かれたもののようです。
しかし・・「景気が良いときは税収が見積もりを上回って、景気が落ち込むと下回る」という昨今の傾向であり、思い浮かぶのは、この1・1という数字が「小さすぎるのではないのか?」という疑問です。
雑記帳―日記版 :財政危機はいつまで続く/税収弾性値「1・1」の功罪
上念司著/「売国経済論の正体」
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/239976198.html
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