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●「白川日銀総裁の主張にも一理ある」(EJ第3198号)
2011年12月09日 :{Electronic Journal}
日本の中央銀行、すなわち日銀は、他の先進国の中央銀行に比べて異なる政策をとっているようです。それは先進各国のインフレ率の推移をみるとはっきりします。
添付ファイルを見ていただきたいのです。これは、高橋洋一氏が先進各国の2000年代のインフレ率の推移を分散分析という統計手法で分析したものです。はっきりしていることは、フランス、カナダ、ドイツ、イタリア、イギリス、アメリカについてはその動きが非常によく似ていますが、日本だけがほとんど「0以下」というレベルになっています。
インフレ率というのは、昨年に比べてどのくらいインフレになったかをあらわす指数です。昨年と変わらない場合はインフレ率は0%です。昨年より3パーセント物価が上昇すれば、インフレ率は3%になるのです。インフレ率が上がると、物価が上がり、インフレ率が下がると物価は下がります。
高橋洋一氏によると、日本をのぞく各国は一定の水準を目標としたインフレ・ターゲット政策をとっているとし、逆に日本はまるでデフレ・ターゲット政策をとっているようだというのです。
これに対して日銀はもちろん反発を強めています。
日銀側の主張に立ってみましょう。今回のテーマの主眼は財務省ですが、日銀も国の経済を担う公的機関ですので、合わせてメスを入れていくつもりです。しかし、日銀は、財務省とは少し違うものを私は感ずるのです。
1990年代初頭に日本はバブルが崩壊し、戦後はじめて金融危機とデフレ経済に直面したのです。これに対して日銀は直ちに金融緩和を行い、それを繰り返して、90年代初頭には8%台であった短期金利を2000年には実質ゼロに引き下げたのです。
さらに2001年からは量的緩和政策を導入し、2006年まで続けているのです。その結果、日本経済は何とか最悪期を脱し、景気は少しずつ上昇したのです。しかし、デフレからは依然として脱却できていないのです。なお、デフレ状況であっても景気回復はするのです。
ところで「金融緩和」とは何でしょうか。
金融緩和策というのは、一般には金利を下げること──専門的には、GDPの潜在成長率よりも金利を下げることをいいます。
日銀は1990年代は段階的にこれを行い、2000年には金利を実質的にゼロにまで下げたのです。ここで潜在成長率というのは、その経済が本来持っている実力の成長率のことです。
しかし、金利をゼロまで下げてしまうと、それ以上下げられないので、資金供給をすることで同様の効果を狙います。日銀がとった方法は「量的緩和策」です。これは、「日本銀行の当座預金残高」の量の調節によって金融緩和を行う異例の金融政策のことです。これを2006年まで続けたのです。
2000年当時白川氏は、日銀の金融市場局審議役をしていましたが、当時『週刊ダイヤモンド』/2000年1月29日号に論文を書いて発表しているので、その内容を次の7ポイントに要約します。
1.90年代の金融緩和は日本経済を復帰させるほどの効果を発揮できていない
2.しかし、経済が何回かのデフレスパイラルに陥る危機を回避できていること
3.金融政策と財政政策はマクロ経済教科書からは考えられないほど行っている
4.それでも日本経済の停滞が続いているのは、潜在的経済成長能力低下が原因
5.潜在的経済成長能力を引き上げるには社会全体に変化対応能力が必要である
6.市場メカニズムの有効利用と、法律、税制、会計、規則の制度改革が不可欠
7.金融政策には限界があり、構造改革実施までの「時間を買う」しかできない
──白川方明著「金融政策は構造改革まで代替できない」
『週刊ダイヤモンド』/2000年1月29日号{ 茶 }
実は、白川方明総裁は日本の国内外におけるリーダーシップを代表する存在として世界で注目を集めつつあるのです。厳しい批判は受けているものの、日本の弱体化した政府においては最も安定した政策担当者であるからです。約3年に及ぶ任期において、これまで4人の首相と7人の財務相と共に仕事をしており、その仕事ぶりには一定の評価があるのです。
その証拠として上げられるのは、国際決済銀行(BIS)が昨年、白川総裁を理事会副議長に任命したことです。日本人がBISにおいて、それほどの大役を任されるのは1930年代以来のことなのです。
白川総裁は、伝説的なエコノミストといわれるミルトン・フリードマン氏がインフレについて「中央銀行がどれだけ資金を経済に循環させるかという仕組みに過ぎない」と述べていることに関連して、デフレについて次のように述べています。
デフレは、現金の経済への大量注入だけでは対処できないということを日本の経験が示している。これによって、フリードマ ン氏の命題は日本の事実によって反証されている。
WSJ日本語版: 白川総裁、日銀批判に反論
白川氏は、日本は他国とは事情が違い、潜在的な経済成長能力の回復が必要であり、そのためには根本的な構造改革が必要であること──金融政策は、その構造改革が行われるまでの「時間を買う」効果くらいしかないというのです。フリードマン派の考え方とは大きく異なるのです。
── [財務省の正体/24]
≪画像および関連情報≫
●白川総裁の主張と一致する意見/藤沢数希氏
日本の経済の停滞を救うには潜在成長率を高めることしかありません。それができなければグローバリゼーションにより日本の多くの単純労働者の賃金が中国などの途上国にサヤ寄せされていくだけです。
そして物価もそれぐらいの給料で生活できるぐらいになるまで下がるでしょう。究極的にはこのままほっといていてもそこまで物価も賃金も下がれば日本のデフレは止まります。
政治的に移民政策は難しいでしょうし日本の高齢者の社会保障費を負担するために日本に移住したいという奇特な外国人はあまりいないでしょう。ということは日本の労働人口は今後も減り続けるわけです。
つまり成長率を上げるには生産性を上げるしかないということです。そのためには民間企業が創意工夫をして新しいモノやサービスを生み出していかなければいけません。国民一人一人が起業家精神を持ち切磋琢磨しないといけないのです。
それはなにかあるとすぐに補助金をたかったり、規制を作って新規参入者をつぶしたりするような堕落した経営者の精神とは相反するものです。
すぐに格差是正などと叫び国に再分配を求める堕落した国民と、そういった国民に阿る堕落した民主党政権とも相反するものです。
BLOGOS:勝間さんのインフレ政策を実行するとどうなるのか?
●グラフ出典/高橋洋一著/『財務省の隠す650兆円の国民資産』/講談社刊
主要各国インフレ率の推移
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/239388123.html
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