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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2011120702000043.html
【コラム】筆洗(東京新聞)
太平洋戦争の分岐点になったガダルカナル島の攻防戦では、約三万人の日本の将兵のうち二万人が犠牲になった。七割が餓死や病死である。一九四三年二月、大本営は敗北した事実を隠して、所期の目的を達して転進した、と発表した
▼これ以降、日本軍が太平洋の拠点から撤退した時に、新聞では「転進」が使われるようになる。部隊が全滅した時は「玉砕」に。軍部と新聞は言葉を言い換え、国民の目をそらした
▼同じようなことが今、政府や東京電力の記者会見で起きている。事故やトラブルの危険性を小さく見せるために「事象」という言葉を連発。記者が原発の「老朽化」に言及すると「高経年化」と言い直すと、本紙記事が報じていた
▼原子力建屋の中にたまった高濃度の放射能汚染水は「滞留水」。これでは危険性は伝わるわけがない。極め付きは、正常な原子炉を定期検査で止める時などに使う「冷温停止」に「状態」を付けた「冷温停止状態」だろう
▼事故が収束に向かっていると強調したい政府の常套句(じょうとうく)であるが、圧力容器から格納容器に溶け落ちた核燃料の状態が十分把握できていないのに、その言葉を平然と口に出せる感覚を疑う
▼かつて、新聞は軍部と一体になって、国民に本当のことを伝えなかった。もう過ちは繰り返したくない。事故が風化するのを待っている原子力ムラとの根比べでもある。
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