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この臨時国会の最大課題は震災復興と原発事故への対応を万全なものにする事である。ところがそれらの財源を生み出す郵政改革法案や国家公務員給与削減法案の審議を置き去りにして、国会は会期末ギリギリの5日と6日を毎度おなじみ「政治とカネ」の集中審議に充てた。国民の税負担を圧縮できる法案を見送って開催するのだから、どれほど国民生活に寄与する議論が行なわれるのかとテレビ中継を眺めたら、相も変らぬバカバカしいパフォーマンスの連続だった。
翌日の新聞に審議の模様を伝える記事はなかったから報道する価値もなかった事になる。「政治とカネ」の集中審議を開かせた野党の狙いは、一川防衛大臣と山岡国家公安委員長の問責決議案を参議院で可決するための景気付けである。一川大臣の問責理由はカネの話ではないが、ここで二人の大臣の不適格性をアピールし、あわよくば不適切な答弁を引き出して9日の問責可決を万全にしようとする党略と言える。
従って「政治とカネ」は表看板に過ぎない。しかしその看板を掲げれば長年の習慣で国民が関心を持つと考えたのだろう。それを裏付けるように二人の大臣を追及する自民党議員は「今テレビを見ている国民は怒っている」と何度も繰り返した。しかし国民が今怒っているのは震災復興と原発事故収束に向けて国会に真剣味が足りない事である。それを理解できない野党第一党の自民党はだから支持率が上がらない。
かつて「政治とカネ」の国会審議は金科玉条のように考えられた。政治家は巨悪であり、政治家の倫理を正す事が、税金の使い道を正すよりも、国際情勢に目を凝らすよりも重要だと考えられた。予算委員会では予算を吟味する時間を「政治とカネ」の追及に割き、おかげで予算は官僚の思うままになり、財政は莫大な借金を抱えるようになった。
旧ソ連が崩壊し、世界構造が根本的な変化を迎えた時も、国会はそちらに全く目を向けず、ゼネコン汚職に伴う「政治とカネ」の議論に終始していた。「政治とカネ」を金科玉条のように思わせたのはロッキード事件である。総理経験者が逮捕されて「政治家は巨悪」のイメージが生まれた。しかしロッキード事件は不思議な事件である。
ロッキード社から金を受け取った政治家は世界中にいたが誰も捕まってはいない。日本でも本命ルートの捜査は見送られた。田中角栄氏を受託収賄罪にした証拠である嘱託尋問調書は、角栄氏の死後に最高裁が証拠能力を否定した。そのロッキード事件は既に歴史の彼方だが、しかし「政治家は巨悪」のイメージと「政治とカネ」を金科玉条とする国会審議はその後も続いた。
55年体制の時代には「爆弾男」と異名をとる野党政治家が厳しく与党を糾弾し、審議拒否を貫くと、与党から野党に密かにカネが流れた。例の官房機密費である。金権を批判する野党政治家がカネを受け取るのだから話にならない。「政治とカネ」の追及の裏には恥ずべき話が隠されている。
55年体制が終わり、政権交代が可能となった今では裏取引はないと思うが、しかし「政治とカネ」を最優先の政治課題と位置づける考えは変わらない。野党が手っ取り早く与党を攻撃できる材料だからである。政界は怪文書の世界である。政治家には選挙区に明確な敵がいて常に鎬を削っている。チャンバラの時代とは違って武器は情報、戦いは情報戦だから真偽不明の怪情報が乱れ飛ぶ。選挙区での情報戦に敗れた政治家は選挙に落選する。
政治家には「選挙の洗礼」があるのだから、選挙民の支持を得た者は尊重されなければならない。行政権力や立法府がいたずらに政治家の地位を貶める事は許されない。政治家を生かすも殺すも有権者というのが民主主義の基本である。しかし選挙区で繰り広げられる情報戦を国会に持ち込めば、国民生活に関わる話は置き去りにされ、政治は収拾が付かなくなる。
5日と6日の集中審議では、自民党と公明党が防衛省幹部の暴言問題で一川防衛大臣に辞任を迫り、山岡国家公安委員長のマルチ業者からの献金問題を追及した。これに対抗して民主党議員は衆議院の土地を自民党が駐車場に使用している問題を取り上げた。私は日本の政治が直面する重要問題から外れた議論に国会がこれほど時間を割いている事に苛立ちを覚えた。
「政治とカネ」の集中審議が行なわれた6日、受託収賄罪で懲役2年の実刑判決を受けた鈴木宗男前衆議院議員が釈放された。その出所祝いパーティが国会内で開かれ、民主党の小沢一郎元代表、鳩山由紀夫元総理、自民党の伊吹文明元幹事長、社民党の福島瑞穂党首ら与野党の国会議員100名以上が集まった。
鈴木氏も「政治とカネ」の国会審議で追及され、「疑惑のデパート」と呼ばれた人物である。証人喚問では「記憶にありません」を連発して国民から批判を浴びた。その鈴木氏の出所祝いに100名を越す国会議員が駆けつけたのは象徴的である。党利党略のパフォーマンスを見せつけられた後だけに、「政治とカネ」の追及を懲りず続けている国会の異様さを改めて感じさせた。
http://www.the-journal.jp/contents/kokkai/2011/12/post_283.html#more
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