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オバマの外交軍事戦略チェンジ、ナイ教授からウォルト教授の“オフショア・バランシング”
2011年12月08日 :(世相を斬る あいば達也)
最近の米国の対イラン仮想敵国の“仮想在イラン大使館”サイトが話題になっている。数日前の拙コラムのプロパガンダ、そのものである。先ずは時事通信の記事を読んでいただき、続いて孫崎氏のツイッターのまとめで“オフショア・バランシング”について言及しておく。
≪ 「仮想在イラン大使館」開設=ネット上で情報発信−米
【ワシントン時事】米国務省は6日、イラン国民への情報発信を目的に、インターネット上に「バーチャル(仮想)在イラン大使館」を立ち上げた。ペルシャ語で米国の政策や文化、留学の情報を提供し、イラン国民との直接対話を目指す。
仮想大使館では、渡米のためのビザ申請もオンラインで受け付ける。「駐イラン大使」は置かないが、ペルシャ語を話す広報官のブログや交流サイト(SNS)のフェイスブック、簡易ブログのツイッターなどを駆使し、交流を図る。≫(時事通信)
≪ 米の仮想大使館サイト遮断=「大悪魔の謀略」と批判−イラン
【カイロ時事】イラン当局は7日までに、国交のない米政府がインターネット上に立ち上げた「バーチャル(仮想)在イラン大使館」へのアクセスを遮断した。米国はペルシャ語で米国の政策や文化、留学情報を提供し、イラン国民との直接対話を促したい考えだった。
AFP通信によると、イランではサイトにアクセスできず、「コンピューター犯罪法に基づき、このウェブサイトへのアクセスは不可」との文言が掲載された。国会外交政策・国家安全保障委員会のボルジェルディ委員長は「仮想大使館の開設は大悪魔による新たな謀略だ」と批判した。≫(時事通信)
≪ 米国戦略:米国アジア重視発言。この中ウォルト教授一日FPで「オフショアー・バランシングという考え方が、オバマ政権で有力になってき」たとの指摘あり。オフショアー・バランシングは「特定の大国が、想定される敵国が力をつけてくるのを、自分に好意的な国を利用して抑制させる」という概念。超大国が実際に自己の軍隊を展開せずに影響力を保とうとする考え方。歴史的にみると大英帝国が欧州大陸に使用。1930年代、米国が英国等に 武器を供与。第二次大戦初期、米国は直接戦場で戦う戦闘員になっていない。ナチと戦う英国を間接的に助け、民主主義の武器庫となった。これもオフショアー・バランシング。一九八〇年代イランのイスラム原理主義の中東地域への拡大懸念。米国はイラン・イラク戦争でイラクを支援。これもオフショアー・バランシングの例。今日、このオフショアー・バランシングを東アジアに適用の提案。つまり、台頭する中国に対し、自ら戦闘するのではない。敵は中国である。米国はこの日本を支援する形をとる。敵対的行動、戦闘するのは日本である。南沙諸島で比、越を利用するのも同じ。海兵隊基地を豪に展開するのも同じ。言葉は綺麗だが、傀儡政権を自国国益に利用するという概念。≫(孫崎 亨ツイッターまとめ)
スティーブン・M・ウォルト氏はアメリカの国際政治学者。1983年、カリフォルニア大学バークレー校から博士号取得(政治学)後、プリンストン大学助教授、シカゴ大学准教授・教授を経て、現在、ハーバード大学ケネディ行政大学院教授。博士論文である The Origins of Alliances. では、同盟の形成において、勢力均衡(balance of power)ではなく、脅威均衡(balance of threat)が大きな役割を果たしていることを明らかにした。所謂、“オフショア・バランシング”こそ米国のとり得る最大の武器だと主張している。2003年のアメリカのイラク攻撃に際して、ジョン・ミアシャイマーらとともに、現実主義の立場から、イラク攻撃がアメリカの国益にそぐわないと批判した。
ブッシュ政権ではナイ教授らのネオコン勢力が幅を利かせたが、此処に来てオバマ政権は、このスティーブン・M・ウォルト氏の“オフショア・バランシング”論を採用、軍事外交を展開しようとしているようだ。つまり、ナイ教授やCIA、ジャパンハンドラーズのネオコン勢力とは一線を画した方向の外交軍事指向を深めていると思われる。
この事は、アフガン、イラクの米軍撤退戦略とパキスタン・トルコ・その他中東各国との脅威均衡を目指しているようだが、イランとの脅威均衡の対応は、シリアの不安定化、その他中東の民衆の火種状態と北アフリカのイスラム化が進行するなか、どのようにウォルト氏の“オフショア・バランシング”を成就するのか、綱渡りといえるのだろう。
アジアにおいては、中国が地域の覇権国となり得ると仮想、その対応を行おうとしている。孫崎氏が指摘するように、あくまで原則的にだが、中国に対し、東アジアにおける牽制は日本と韓国にやらせ、南シナ海における牽制はフィリピンとべトナム等々に担わせようとしている。つまり、“オフショア・バランシング”という考えの根底には、背広の裏に持つマグナムをちらつかせ、子分どもに仮想敵国を牽制させ、自国は面と向かって戦争の火ぶたを切らない、戦禍に巻き込まれない、トンデモナイ戦略を持っているのだ。”人の褌で相撲を取る“如きである。
そのお先棒を担ぐのが野田佳彦だが、野田がどこまで“オフショア・バランシング”を理解しているか定かではない。ただ前原・長島らネオコン勢力とは思惑が異なっている可能性は大いにある。つまり、隷米では同一線に存在するが、オバマの“オフショア・バランシング”外交軍事戦略において、前原・長島らのネオコンは排除されつつあるのだと思われる。ナイ教授・CIA・アーミテージらジャパンハンドラーズと、キッシンジャーが一線を画している点が注目なのだろう。タダいずれにしても、対中戦略に我が国が利用されるだけの事実に変わりはない。
筆者が此処で思い出すのが、小沢一郎の「米軍駐留は最終的に第七艦隊だけで構わない」と云う話と繋がるのが非常に興味深い。小沢は米軍撤退後の穴は自衛隊が当然埋めると主張しているわけだから、オバマが選択している“オフショア・バランシング”に適う軍事的バランスについて主張していたわけである。ただ、鳩山・小沢政権において問題になったのは、どうも鳩山のパイプがロシアに太く、仮想敵国を中国にする“オフショア・バランシング”の脅し相手が、地域における覇権国家が二つ生まれる厄介さを抱えた為かもしれない。軍事戦略が絡むと、どうも政治を観察する為に複合視野が求められ、疲れる事夥しい。
最近、米国の有力政治家が「“普天間基地問題”によって、折角の日米同盟にヒビを入れる愚はないだろう。海兵隊の沖縄撤退で、米軍のプレゼンスが異常に低下するとは思えない」等々の発言をしたようだが、鳩山由紀夫も突然「普天間基地移設先、今でも国外、最低での県外の可能性を探るべし」なんて事を口にし出した背景には、上述のオバマの外交軍事戦略が、ナイ教授からウォルト教授にチェンジしたことを示唆しているのかもしれない。そう云う意味で、小沢一郎が強く、米国軍事力の空白を自衛隊が十二分に埋めるべき論を展開する事と符合する。あくまで大きな仮説だが、早目に小沢一郎の立場が急転直下、好転することがあり得るのかもしれない。ただ、鳩山は封印されるのだろう。
元記事リンク:http://blog.goo.ne.jp/aibatatuya/d/20111208
投稿者コメント:元記事には、下記の書籍が推奨されてます。
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
クリエーター情報なし :講談社
米国世界戦略の核心―世界は「アメリカン・パワー」を制御できるか?
スティーヴン・M. ウォルト :五月書房
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