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デマゴーグ的手法駆使した橋下・松井の勝利の意味
一一月二七日投開票された大阪府知事・大阪市長のダブル選挙は、いずれも大阪維新の会の松井、橋下の勝利で終わった。
府知事選では一二年ぶりの五〇パーセントを超える五二パーセント、市長選では四〇年ぶりに六〇パーセントを超える六〇・九二パーセントの高投票率であった。府知事選では松井が二〇〇万六〇〇〇票、倉田が一二〇万一〇〇〇票、
共産党推せんの梅田が三五万七〇〇〇票であった。平松は、前回市長選より票を伸ばしたが落選、梅田は前回より一六万一〇〇〇票減らした。この投票率の高さと松井、橋下の得票の多さは、新自由主義世界の危機を受けた行き詰まり感の蔓延、不安と不満感の拡大の中で、小泉ばりの無内容ではあるが単純化した争点と敵を作り感情に訴える橋下・維新の会とそれをあおるマスコミの戦術が功を奏した面は多分にある。朝日新聞の出口調査によると、市長選では、民主党支持者の五二パーセント、自民党支持者の六一パーセント、公明党支持者の三七パーセント、共産党の支持者さえ二五パーセントが橋下に投票する結果になった。 橋下・松井・維新の会は、徹底的にデマゴーグの手法を用いて選挙戦を切り抜けた。
メインテーマのはずの都構想では、「大阪二四区を人口三〇万を目途に八つほどの区に再編する」と主張する一方で、人口六万人の福島区での演説では「福島区は残す」といい、大阪市解体が訴えの中心のはずがそれに危機意識を持つ人たちに対しては「大阪市を残す」とさえ主張した。大阪市営交通の民営化問題でも、高齢者無料パスの廃止に危機感を持つ高齢者には、「民営化はしても無料パスを残す」と何の保証もなく言い張った。
しかし、こうしたデマゴーグ的手法の選挙戦の中でも一貫しているのは、公務員労働者をはじめ、労働者の既得権、社会保障などに対する攻撃であった。これらの攻撃を他の「改革」と一緒に訴えることによって公平性を装いながら、行き詰まり感を強く感じている若年層・青年層に、公務員労働者をはじめ組織労働者に対して「不当な利権」の占有者としてイメージを植え付け敵意を抱かすことに少なからず成功した。
おごる橋下・維新の会になびく民主・自民・公明
橋下・松井はさっそく居丈高に勝利宣言し、「民意を無視する職員は市役所から去ってもらう」と平松のために動いた市職労など市・府関連労組に恫喝と屈服を迫っている。
今回の選挙の異例さは、民主・自民などの全国政党で、地方議員などが、橋下・維新の会のあまりにひどい恣意性や強権性に危機感を持ち平松支持に動いたが、中央は、関西・大阪を地盤とする議員をはじめ次回選挙での維新の会の協力をあてに、維新の会との激突を避け中立的立場にとどまったことにある。公明党は、徹底的に中立を保つように地方議員や党員・支持者に締め付けをした。こうしたことが民主・自民の支持者の過半数が松井、橋下に投票する結果を促進した。
これら、民主・自民・公明などの対応の核心は、今後の国政選挙での協力をあてにしているにとどまらず、ますます危機を深め行き詰まる新自由主義と資本主義社会に、より一層の新自由主義的強権政治で対応しようとする橋下・松井・維新の会の手法に反対できないだけでなく共感さえ寄せているところにある。それは、関西経済界が、橋下・松井対平松・倉田の対決に中立を保ったこととも通底している。
こうした基礎の上に、勝利後の維新の会・橋下・松井は、「大阪都構想」のためと称して、民主、自民、公明をはじめ中央政界に協力要請の行動を開始している。民主を含め政党中央は都構想をはじめとする橋下・松井・維新の会の工作に易々とのりつつある。政界における新自由主義の旗手としてのみんなの党は、維新の会に触手を伸ばし、新自由主義の全面化を画策している。さらに、名古屋・愛知の河村の「減税日本」などが合流し勢いを付けようとしている。これらは「都構想」への協力にとどまらず、全国政治における「ポピュリズム」と強権政治に向けた流れを推し進めるであろう。
新自由主義グローバル化のための大阪都と関西州
共産党は、こうした事態の中で危機意識を高め「橋下・維新の会独裁」反対のために市長選で独自候補の渡司考一を下ろし平松への投票の呼びかけにまわった。梅田府知事候補の選挙運動でも、多くの時間を平松への投票の呼びかけに割いた。
こうして市長選挙においては、平松がこれまで大阪市政で行ってきた反労働者的「改革」に対する批判の表現手段は奪われてしまった。その上、この共産党の決定は、われわれも運動を共にする労働組合や市民運動の中でも好意的に受けとめる部分が少なからずいた。こうした動きは、運動勢力の中では、「反ファシズム統一戦線」として合理化・正当化されている。
橋下・維新の会にファシズム的手法が内包されていることは事実である。しかし、反労働者的な強権政治・独裁政治とファシズムは同じではないし、それに対する闘い方も同じではない。現に橋下は、ブルジョアジーの基本的利益の一部に手を付けることによって労働者階級を引きつけ、本質的なところで資本家階級とその社会を救済するという極限的手法に打って出ているわけではない。橋下のほとんどの政策は、行き詰まる資本主義社会を新自由主義の手法で発展をめざし救済しようとするものであり、ブルジョアジーの重大な利益を犯そうなどとはしていない。
今は、労働者階級が自らの闘いと戦線を作り、現に起こっている橋下・維新の会の危険な強権政治、新自由主義的グローバリゼーションによる社会の解体を阻止することである。「ファシズムを芽のうちに摘み取る」ということはそうしたことであるだろう。
平松・倉田対橋下・松井の対立は、労働者階級が自己の存在と利益を捨てても合流しうる対立であったろうか。橋下・維新の会の都構想に対する、平松の「広域連合」なるものをみても、新自由主義・グローバリゼーションが世界的に進み、国境を越えた巨大国際資本、金融資本の活動の本格化・自由化に障害となる肥大化した国家とその役割」の再編、縮小に対応する「道州制」の導入に対応するという同じ目的を持っている。現に平松陣営も、自らが関わった「広域連合」を造られるべき「関西州」への下地づくりとして打ち出している。
今後も、大阪など国際都市とその周辺部の再編に対する、資本家間、地域間、あるいは省庁間・官僚間の対立がさまざまに出てくるであろう。そこには、労働者市民にとって無関係ではない対立もあるであろう。橋下・維新の会は、選挙戦でもそうであったとおり、こうした事態に終始一貫した政策をもって事に当たっているわけではない。今後とも、ご都合主義的に、行き当たりばったりに、方針を取り下げたり変更したりするだろう。それが大阪府・市の政治に混乱を作り出すだろう。しかし、橋下・松井・維新の会の政策は、労働者市民の社会的利益、「既得権」への攻撃という点では終始一貫している。
橋下・松井・維新の会は、大阪府、大阪市、堺市などで、維新の会による教育への支配・介入を正当化し大阪の公教育の破壊・再編、府の職員への強権的支配を目論んで教育基本条例、職員基本条例を二月府議会などに提案すると宣言している。さらに橋下自らの失政・赤字づくりを隠す目的も込めて咲島の旧WTCに統合本部を設置し事業仕分けを開始しようとしている。
反資本主義の政治勢力と運動を形成しよう
労働者市民は、彼らの対立、混乱から独立し、反新自由主義、反資本主義の観点から、自らの利害のために闘わなければならない。
今求められているのはそうした闘いとそのための勢力・戦線づくりである。これらの闘いと戦線は、世界的な資本主義の危機の進行の中で、アメリカでのティーパーティーなど「極右」をてことする政治再編と右傾化、ヨーロッパでの危機の進行などに連動した日本の既成政党の行き詰まりと、橋下・松井・維新の会の「ダブル選挙での『勝利』」と連動する日本政治の右翼的転換に対決することが求められる。
それらの闘いは、アメリカでのウォール街占拠をめざす「九九パーセント」の若者たちの反乱、ギリシャやイタリア、スペインの労働者の決起、アラブ中東の「革命」など、破綻する新自由主義グローバリゼーションとの闘いと連帯・連動することが求められる。東日本大震災と福島原発事故の被災者支援と脱原発運動、沖縄の基地撤去、新基地建設反対、反戦平和の闘いも含まれるのはもちろんのことである。
「敗北的」な府知事・市長選挙の中でも、運動にとっては重要な前進の可能性も作り出されている。大阪では、これまでの政治や大衆運動のいきさつから実現が困難であった、分断を越えた労働組合や大衆運動での協力・共同が萌芽的ではあれ始まっている。全労連、全労協、独立組合の「反維新の会・反独裁」の共同アピールが出され、連合系労組も内容的に共通するアピールを独自に出すことで連帯を表明した。教育労働者の戦線では、各地で連合・日教組組合も参加したアピールが出された。まだまだ大きな動きとはいえないが、大きな前進のための一歩である。新自由主義と強権政治を打ち破るためには、こうした新しい動きを大切にしかも大胆かつ息長く取り組み育て上げなければならない
府知事・市長選の直後の一二月一日には、「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪の「教育基本条例」案反対!大阪府庁包囲行動がもたれ二四〇人が行動に起ちあがり、条例廃案まで闘いを続けようと誓い合った。この集会では「橋、元通りの会」(注)も連帯の挨拶を行って共同の闘いを訴えた。堺市でも条例反対集会が準備されている。こうした行動、大衆運動の強化発展を基礎にして、より広い、橋下・松井・維新の会を包囲する戦線を作り出す努力が求められている。これまでも、憲法改悪反対行動や日航労組の闘いなど労働運動の具体的課題、世界社会フォーラムなどでも共産党系といわれる運動とわれわれも含む運動での共闘・協力が始まっていた。君が代斉唱強制条例や教育基本条例、職員基本条例を撤回させ廃案にする橋下・松井・維新の会との闘いや反戦・平和、沖縄連帯、脱原発闘争でもさらに拡大し強化することが必要である。
具体的な闘いとその協力・共同の戦線を基礎に反資本主義、新自由主義グローバリゼーション反対の労働者統一戦線の形成をめざそう!
(一二月二日)
(注)「橋下徹さん、元のテレビタレントに戻って大阪府民の会」のこと。「吹田のジャーナリストの西谷さんが橋下さんの教育改革に危機感を覚えて始まったばかりです」(同会のツィッターより)。共産党を支持する人たちが多く参加している。
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