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●「なぜ日本はデフレから脱却できないか」(EJ第3195号)
2011年12月06日 :{Electronic Journal}
野田政権が推し進める「社会保障と税の一体改革」は、菅政権時代に与謝野馨前経財担当相が中心となってまとめられているのですが、問題なのはその前提になる考え方です。
与謝野氏は「デフレは別にわるいものではない」という前提に立っているのです。これは「良いデフレ論」といい、同じ考え方の学者もいます。日銀の白川総裁も同じ考え方のようです。
経済にはいろいろな考え方があります。学者であれば、どのような説を唱えてもそれは自由ですが、それによって国の政策を決めるとなると、大きな問題になります。
こんなことがあったのです。7月5日に行われた与謝野経財担当相の記者会見です。
少し長いですが、再録します。
記 者/大臣、前回の記者会見の中で1%ぐらいのマイナス、
物価下落は何でもないと、プラス要素だということを
仰いましたけれども、今政府はデフレの脱却を重要政
策として掲げているわけですけれども、この政策を見
直すおつもりはあるのですか。
与謝野/勿論、私は見直したのです。私が前回経済財政担当大
臣のときにデフレという言葉を政府の言葉から削除い
たしました。定義のない言葉を使ってはいけないと。
それを私が申し上げたいと思っています。
記 者/今の政権でも同じことをやるのですか。あとデフレの
定義は、政府はそれなりにきちんとやっていると思う
のですけれども。
与謝野/デフレは、政府の定義は物価下落が数年続く世界をデ
フレと言っているのですけれども、1%程度の物価下
落で驚いて自己暗示にかかるようなことをやってはい
けないと、今でもそう思っております。
記 者/ということは、デフレ脱却という政府の政策課題は取
り下げるということでいいのですか。
与謝野/そんなことはありません。政府の課題は、日本の経済
を成長させることであります。
記 者/矛盾しませんか。
与謝野/何故矛盾するのですか。
記 者/政府はデフレを脱却するということで、今の1%程度
の下落が続いている状況をそういう状況から脱しよう
というのを政策目標として出しているわけですよね。
それは大臣の仰るのは、そういう状態はかえって望ま
しいのだということを仰っているわけで、根本的に違
うと思うのですけれども。違うのだったら違うで、き
ちんとそこは改めるべきなのではないかなと。
与謝野/私の記者会見をもう一度読んでいただければ、1%程
度の物価下落は労働所得を得ている人、年金所得者に
とってはむしろプラスになっているということを申し
上げたはずなので、そこのところが重要なのです。
Baatarismの溜息通信:http://d.hatena.ne.jp/Baatarism/20110718/1310960213
この与謝野氏の話は支離滅裂です。それに何ということでしょうか。与謝野氏は「デフレ」という言葉を政府の言葉から外したというのです。日銀にも「デフレ」という言葉はないので、デフレを脱却できるはずがないのです。しかし、「良いデフレ論」など考えられないことです。与謝野氏は「フィリップス曲線」というものをご存知ないのでしょうか。
フィリップス曲線は、経済学においてインフレーションと失業の関係を示したものです。アルバン・ウィリアム・フィリップスが1958年の論文の中で発表しています。
縦軸にインフレ率(物価上昇率)、横軸に失業率をとったグラフの曲線であり、次の関係を表しています。
インフレと失業率は、トレード・オフの関係にある
「トレード・オフの関係」というのは、どちらかを良くすればどちらかが悪くなるという関係のことです。つまり、失業率を下げようとすれば、インフレ率が上がるし、インフレ率を下げようとすれば失業率が上がってしまうというわけです。
物価が持続的に下落するのがデフレですから、デフレになると失業率が高くなるのです。高橋洋一氏は、これについて次のように述べています。
与謝野経済財政担当相(当時)の「良いデフレ論」は、政府が雇用の確保をやらないと宣言するに等しい暴言だ。今のデフレのために数十万人の失業者が余計にいると思われるので、そのまま放置されるわけだ。失業者放置のまま増税すれば、大震災以上の経済破壊になるだろう。
──高橋洋一著
「2011『日本』の解き方」/353/夕刊フジ
いろいろ調べてきてわかってきたことですが、日本では政府も日銀もこの長く続く慢性デフレから脱却しようとしていないし、それは自分たちの仕事ではないと考えているようです。むしろ現状のままの方がよいと考えているのです。その証拠はこれから出していくつもりです。
このデフレのために、1世帯当たりの可処分所得は、10年前に比べて月当り4万4000円も減っているのです。野田政権はそのやせ細る家計から、復興増税、消費税増税、B型肝炎訴訟の和解金の支払い、福島原子力発電所事故の補償費についても税としてむしり取ろうとしているのです。
どうして日本人は平然としているのですか。まるでかつての悪代官顔負けの異常な政策が、これから平然と実施されようとしているのです。
── [財務省の正体/21]
≪画像および関連情報≫
●日本のフィリップス曲線から見えるデフレと失業率の関係
総務省統計局の最新の労働力調査によると、日本の就業者数は6271万人、完全失業者数は331万人、完全失業率は(季節調整値)5.2%、非正規の職員・従業員:1743万人とのことらしい。
かつて日本は、1億総中流とも言われ、世界一安全で平和な国であった。それは、もう20年近く前の話である・・・。
今や日本は、5%を超える社会不安一歩手前の高失業率の中、かつての中流層は貧困層へ転落し、希望の見いだせない疲弊した国になり果ててしまった。
学校を出ても就職難の憂き目に遭い、働けどワーキング・プアでサービス残業に代表される過酷な労働環境でうつ病になり、失業率の増加に比例するように自殺率も増加している。
フィリップス曲線
元記事リンク:http://electronic-journal.seesaa.net/article/238908562.html
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