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ニュースの匠:熱狂の行く先には=鳥越俊太郎
http://mainichi.jp/select/wadai/torigoesyuntarou/news/20111203ddm012070021000c.html
毎日新聞 2011年12月3日 東京朝刊
大阪のダブル選挙か、巨人軍“清武の乱”か。今回はテーマの選択に困ったというのが本音です。まず、大阪の選挙。これはかつて小泉純一郎首相が行った“小泉選挙”の大阪版ですね。「郵政改革」というシングルイッシュー(単一の課題)を掲げ、“抵抗勢力”という敵をつくって大声で叫ぶ。有権者、特に無党派層があおられる。
今回も同じですよね。「大阪都構想」という旗印を掲げ、大阪市役所という敵役をつくり出して熱く語った橋下徹氏。大阪を再生させたいという大阪の人々の願いと大阪都構想がどこでどう結びついているのか、今ひとつ見えないまま、大阪の有権者は「橋下さんなら大阪を変えてくれるだろう」という、熱狂状態で投票日を迎えました。結果は小泉選挙の時と同じ。熱狂は一つの変化を生み出しました。大阪維新の会が擁立した橋下市長と松井一郎府知事の誕生でした。
しかし、ここで一つ考えてみましょう。小泉選挙がもたらし、残したものは何だったでしょうか。日本はよくなったでしょうか。変わったでしょうか。答えは「NO!」です。変わったどころではありません。貧富の差は広がり、国の借金は900兆円近くまで積み上がりました。
私は常々思っていますが、国民の、有権者の熱狂はロクな結果を生まないということです。それは太平洋戦争の末路が私たちに教えてくれる最大の教訓です。そして、この熱狂状態をつくり出すのにメディアのあり方が大きくかかわっているという事実です。小泉選挙の時はテレビが先導しました。今回も一見大阪市長選は平松・橋下両候補にバランスを取って報道されているように見えましたが、独裁者をアピールする橋下氏がテレビ向きでした。
さて、もう一つの話題、清武の乱。私が最も心を痛めたのは江川卓氏のことでした。“空白の1日”の主人公は今でもこんな扱いを受けねばならないのでしょうか。
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