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●「デフレをどの程度認識しているか」(EJ第3194号)
http://electronic-journal.seesaa.net/article/238679496.html
2011年12月05日 :{Electronic Journal}
現在の日本の経済状況は「デフレ」です。このデフレを何とかしないと日本経済は回復しない──この20年間ずっといわれ続けてきており、「失われた20年」とまでいわれているのにデフレは深刻化する一方です。どうしてなのでしょうか。
それは政治家に大きな責任があります。常識的には日本は一刻も早くデフレを脱却して経済成長を目指すべきです。かつては池田内閣の所得倍増政策のように明確に成長を目指す政策も推進されたのですが、それが1990年以降になると、ほとんど経済成長は口先でいわれるだけで、政策課題となっていないのです。これは自民党に大きな責任があります。
しかし、自民党には「上げ潮派」と呼ばれる経済成長を目指して国を発展させるという考え方の人も少なくなく、橋本政権下での消費増税による経済悪化に懲りて、少なくともデフレをさらに悪化させる政策はとってこなかったといえます。
しかし、民主党政権、とくに菅政権以降は増税に前のめりになり、デフレを脱却させるどころか、一層悪化させる政策を取るようになったのです。政権が財務官僚に占領されてしまったからです。官僚中心の政治を国民の手に取り戻そうと訴えて政権交代を成し遂げた民主党が官僚に制圧されてしまった結果なのです。
それは民主党議員には経済のわかる人が少なく、経産省や財務省の経済官僚に頼らざるを得なかったからです。この点について嘉悦大学教授の高橋洋一氏は次のように述べています。
民主党政権は政党の成り立ちから「格差」を問題にして、「成長」をやり玉にせざるをえない。経済成長は、格差を含む諸問題を全部とはいわないが、本コラムで指摘してきたように財政問題を含めてかなり解決できるのに、「成長」に集中してリソースを注げないのは日本の不幸としかいいようがない。
──高橋洋一著/『2011「日本」の解き方』422号
2011年10月20日付、夕刊フジ
現在野田政権が推し進める「社会保障と税の一体改革」──これは与謝野馨氏が原案をまとめたものです。ところが、この与謝野前経済財政担当相はデフレを肯定的にとらえているのです。そして次のようにいっています。
1%ぐらいのマイナス物価は、むしろ働く人や年金生活者にとってはプラスの要素である。
──与謝野前経済財政相
この発言には唖然とします。与謝野馨氏といえば、自民党において経済に強い議員といわれ、財務大臣にまでなった人の発言なのです。どうしてこのような経済の基礎的なことがわからないのでしょうか。
デフレになって物価が下がれば、確かに一時的には消費者は喜ぶかも知れませんが、その一方で賃金も下がってくることになります。企業としては安くしないと売れないので、経営が圧迫されるからです。この状態が長く続くと、消費者の財布の紐は一層固くなり、企業はリストラすらも敢行せざるを得ない状況に陥ってしまうのです。現在の日本の経済状況はそうなっています。とにかく、与謝野、藤井、菅、野田、安住──財務大臣の劣化はますますひどくなっています。
デフレについて少し調べてみました。デフレと一口にいいますが、実は1992年までデフレのはっきりした定義はなかったのです。それまで「マクロ経済学」のテキストといわれていたのはスタンレー・フィッシャーとドーン・ブッシュ著の『マクロ経済学』ですが、その中には「デフレーション」という言葉は一度も出てこないのです。
1992年になって、マンキューの『マクロ経済学』が出版され、インフレーションについて論じている第10章で、やっとデフレーションという言葉が登場するのです。
スタンレー・フィッシャー/ドーン・ブッシュ著
『マクロ経済学』/マグロウヒル出版
グレゴリー・マンキュー著
『マンキュー経済学2/マクロ編』/東洋経済新報社
マンキューは、インフレーションと対比してデフレーションについて、次のように述べています。
物価の上昇のことをインフレーションと呼ぶが、19世紀には物価が下落するデフレーションと呼ばれる現象が長期間にわたって生じた。つまり、デフレーションとはある期間にわたって物価が下落することである。
──グレゴリー・マンキュー著
『マンキュー経済学2/マクロ編』/東洋経済新報社
それでは、物価の監視人といわれる日本銀行は、デフレをどのように定義しているのでしょうか。
日本銀行法第2条には次のように規定されています。
日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当っては物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもってその理念とする。
──日本銀行法第2条
この中で「物価の安定」とは何を指すのかについては規定がないのです。それではデフレの定義はないのでしょうか。デフレについては『日本銀行調査月報』/2000年10月号に掲載した「わが国の物価動向」という論文に「デフレとは物価の全般的かつ持続的な下落を指す」と示されているに過ぎないのです。デフレは定義されていないのです。
── [財務省の正体/20]
≪画像および関連情報≫
●「株式日記と経済展望」──デフレとは何か
デフレとは何か。経済学上の定義では、物価の下落が将来にわたって続く状態を指すのだが、その程度の認識ではデフレが日本の国難という切迫さが生まれない。
その典型例が、デフレ対策の鍵を握る日銀の白川方明総裁である。
お公家集団といわれる日銀の生え抜きエリートだけあって、まるで世俗に疎い。たとえば、2009年12月にテレビ東京の報道番組に登場したとき、司会者から「デフレを実感したことがあるか」と聞かれると、「奥さんと一緒に食事に行ったりすると、これだけの内容のものがこれだけの値段で食べられるのかと驚くこともある」と素っ頓狂な返事。何しろ首相の給与をはるかにしのぐ年収3400万円以上の超高給取りで「セレブ」族である。庶民には縁遠い高級レストランで、こんないいものが安いね、おいしいね、と奥さんと屈託もなく会話しているわけだ。
デフレを深刻に受け止める機会もない。あるのは、経済学上の知識だけだから、白川日銀は何ら有効な政策をとらない。
08年9月の「リーマン・ショック」のときも、白川総裁らは「物価の上ぶれリスク」つまり、インフレを心配して何もせず、米欧の金融緩和に同調しなかった。これを機に、円高局面に突入した。逆に韓国はウォン安政策をとり、中国は人民元をドル安に合わせる。
日本の輸出は激減し、景気の落ち込みぶりは米欧をしのいだ。需要も減るので、デフレはさらに悪化していく。
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