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2011/12/02
9月に発足したばかりの野田佳彦首相の政権運営に早くも黄信号が灯ってきた。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉参加、米軍普天間飛行場移設、さらに消費税増税問題や選挙制度改革……など数々の難問に直面した野田首相は、いずれの課題でも解決への糸口をつかむことができず、民主党はがたつき始めた。
連立与党の一員である国民新党との間にもすきま風が吹き、与党の結束も崩れつつある。大阪市長・大阪府知事のダブル選挙でも惨敗し、有権者の既成政党離れは加速。まるで濁流に弄ばれる木の葉のように野田政権は揺れに揺れている。そんな中、政界では、野田首相が来年6月に一か八かの衆院解散・総選挙を実施せざるを得なくなる可能性が囁かれ始めた。
■反旗を翻した小沢氏
主要課題のうち、政権の命運にもっとも重大な影響を及ぼすと考えられているのが、野田首相自身が主導して進めている消費税増税問題である。
野田首相が消費税を段階的に10%まで引き上げるとしているのに対して、野党各党は増税慎重論でほぼ足並みをそろえている。さらに、かつて民主党が「4年間は消費税を上げない」(鳩山由紀夫元首相)としていただけでなく、「今は議論すべきではない」(同)として、消費税増税について議論することさえ封印していたため、野田首相の増税方針に猛反発している。
野田首相にとって、野党の反発以上に気がかりなのは、政権を支える足下の民主党内の“大物議員”から増税に「待った」がかかったことだろう。
「消費税増税問題をきっかけに政権運営が不安定になり、それが野党に攻撃の種を与えるような形になって、解散総選挙につながっていったら、まだ民主党が政権交代してやろうとしたことの半分もできていない段階なのに、何のための政権交代だったのか」
民主党の小沢一郎元代表は11月22日、小沢氏を支持する民主党所属衆院議員らで構成する「一新会」の定例会でこう言い放ち、野田首相の方針に反旗を翻した。
小沢氏は、資金管理団体「陸山会」に絡む政治資金規正法違反事件の公判中である上、今年9月には、この事件で元秘書3人に有罪判決が出されて政治的な力を失いつつあった。さらに、野田首相が「小沢対反小沢」の党内対立の構図を嫌って、小沢系議員を人事で優遇したため、小沢氏は非主流派を統率する合理的理由を失い、発言も湿りがちだった。だが、野田首相の消費税増税方針をきっかけに猛然と牙をむき始めた。このままでは、民主党内は消費税問題をきっかけに再び事実上の分裂状況に陥る可能性がある。
■所得税法附則第104条
もちろん野田首相が増税に踏み切らざるを得ないと判断したのは理由のないことではない。政府は年々かさんでいく社会保障費の動向に対応せざるを得ないことに加え、財政再建を進める必要に迫られている。このまま放置すれば、日本の財政が破綻する危険性が指摘されているのも事実だ。
だが、来年の通常国会で消費税増税に関する法案を成立させようという野田首相の方針はあまりにも急ぎすぎの感がある。
なぜ野田首相はそこまでして増税を急ごうとしているのか。
その理由のひとつとして、野田首相をはじめ、民主党執行部が挙げているのが、自民党政権時代に成立した所得税法附則第104条である。だが、その理屈はよく聞いてみると詭弁としか思えない内容だ。
民主党が強調するのは、104条の中の次の文言である。
「遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うため、平成23年度までに必要な法制上の措置を講ずるものとする」
たしかにこの条文に抵触しないためには、野田政権は来年3月までに消費税を増税する法案を成立させなければならないように見える。
ところが、同じ104条には、消費税改革の前提条件として、次のような文章も盛り込まれている。
「平成20年度を含む3年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として……」
つまり、野田首相がこだわる消費税増税の法案を成立させるためには「経済状況を好転させる」ことが必須条件になっているのだ
■2%成長なら経済回復?
そこで野田首相サイドからはかなり強引な発言が相次いでいる。たとえば、民主党税制調査会長を務める藤井裕久元財務相は11月22日、読売新聞のインタビューで次のように言い放った。
「(実質GDP成長率)2%なら経済回復だ」
複数の民間調査機関は2012年度の経済成長率を2%前後と予測している。藤井氏はこうした調査を百も承知の上で、消費税増税を現実化するために、達成可能な成長率を提示したのだろう。たとえ低成長でも「これが経済回復だ」と言い張りたいのだ。だが、実際問題として、今の日本で104条の文言どおりに「経済状況が好転」していると実感している人はほとんどいないだろう。
一方、野田首相は消費税増税の是非について、衆院選で国民の信を問うとしている。だが、その時期については、「増税を実施する前ではあるが、法案成立後」だとしている。つまり、増税法案を成立させ、その後に衆院解散・総選挙を実施、さらにその後に実際の増税があるという順序になる。だが、法案がいったん成立してしまえば、逆戻りできない可能性もある。また、どうせ衆院選で国民の信を問うのなら、なぜ法案成立前ではいけないのかという理由が判然としない。
■「信念に近いものがある」
この点について、マスコミも野党も野田首相に噛みついている。
フランス・カンヌで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)に出席した野田首相が現地に同行した日本人記者団と懇談した際、こんなやりとりがあった。
記者「なぜ法案を通す前まではいけないんですか」
野田首相「なぜ、実施前ではいけないんですか」
記者「法案が通ってしまえば元に戻すのは難しいのではないですか」
野田首相「そんなことないんじゃないですか」
堂々めぐりの議論だが、結局、野田首相がどうしても消費税を増税したいのだということだけは分かる。
11月21日の参院予算委員会では、質問に立った自民党の礒崎陽輔参院議員との間で次のようなやりとりもあった。
礒崎氏「衆院選で負けたら執行が止まるのか」
野田首相「当然、民意を踏まえた対応があるということだと思う」
まったくの詭弁である。野田首相は衆院選で敗北した場合には、民意を踏まえて対応すると言っているわけだが、衆院選敗北後は野田首相は首相の座にはいないだろうから、責任をもって民意を反映することができるわけがない。
「法案さえ通してしまえば、国民もあきらめるだろうと思っている」と自民党幹部は揶揄する。野田首相の消費税に関するこだわりぶりをみると本当にそうなのかもしれないと思えてくる。財務相時代に財務省の官僚から増税の必要性を入念にすり込まれたとも言われている一方、「将来の日本にとって消費税増税は必要。それを自分自身の手で実行したいという首相の名誉欲」(自民党税制調査会幹部)とも言われる。附則104条にある「経済状況の好転」という条件が満たされていなくとも、あるいは国民の信を問う衆院選の実施が法案成立後だという点をマスコミにつつかれても、とにかく増税に道筋をつけたいというのが今の野田首相である。民主党ベテラン議員はこう評している。
「野田首相は消費税については信念に近いものがある」
■選挙準備を進める野党
だが、その信念を貫こうとすれば、民主党は分裂しかねない状況だ。消費税だけでなく、野田首相はTPP交渉参加にも強いこだわりをみせた。その結果、民主党内に修復不能とも思える亀裂が生じた。
野田首相に襲いかかる課題はそれだけではない。米軍普天間飛行場移設問題では、田中聡沖縄防衛局長の失言問題でさらに混乱に拍車がかかり、解決は困難になりつつある。
こうした政治状況になると、首相が強い指導力を発揮し続けることは難しくなってくるだろう。民主党内の分裂状況が解消されないかぎり、TPPと同様に、消費税増税も前に進めることはできない。国会で民主党内から造反者が出れば、増税法案が否決されて成立させられない可能性があるからだ。しかし、野田首相は消費税増税にこだわっているため、衆議院を解散して総選挙で消費税増税に対する国民の審判を仰ごうとするかもしれない。こうした予測に基づいて、政界では3月解散の可能性を指摘する声がある。
だが、民主党内に一定の割合の増税反対論者がいるとすれば、そもそも野田首相は消費税増税法案の成立どころか、「法案のとりまとめすらできないのではないか」(公明党幹部)と予想する向きは多い。法案がまとまらなければ、当然、法案を国会に提出できないし、法案を成立させられない。
そうなると、法案を成立させた後に衆院選で消費税増税の是非を問うという野田首相のもくろみは崩れる。だが、野田首相がどうしても消費税を増税したいのだとすれば、順番を逆にして、まず衆院を解散して国民の信を問い、その後に消費税増税法案のとりまとめに着手するという手はある。
その場合は、来年の通常国会は以下のような見通しになる。まず、野田政権は3月までに法案を国会に提出することに失敗。しかし、4月以降もとりまとめの努力を続ける。だが、進展のないまま会期末の6月を迎える。その時点で野田首相は勝負をかけて衆議院解散に踏み切る。
一部の野党幹部はそんなシナリオを予想している。実際、すでに公明党など複数の野党は選挙準備を整えつつあるのだ。
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