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ナニワっ子は惚れっぽいが飽きっぽい [田中康夫 にっぽん改国]
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2011/11/30 日刊ゲンダイ
意外に思われるかも知れませんが、奥多摩を擁する東京都よりも大阪府は面積が少なく、香川県と並んで全国で最も小さな都道府県です。「すべて山の中である」と島崎藤村が謳(うた)った木曾谷と同規模に過ぎぬのです。
他方、政令指定都市なる存在は道府県知事にとって“厄介”な相手です。だって、知事室を構える道府県庁舎の目の前を通る道府県道すら、維持管理は政令市が担当するのですから。教育も福祉も、国からの補助金や交付金は道府県を経由せず直接、政令市に届きます。
象徴的事例は横浜、川崎、相模原と3つの政令市が存在する神奈川県です。神奈川県が“管轄”するのは三浦半島、厚木から小田原に至る中小の基礎自治体に留まります。故に当該3政令市選出の県会議員は、語弊を恐れず申し上げれば、「名誉職」としての“生活保護受給者”です。だって、地元要望に応える権限を有さぬのですから。
大阪府の一般会計当初予算は3兆2千億円。他方、大阪市・堺市の合算は2兆1千億円。したり顔で新聞が解説する「二重行政の弊害」云々以前の問題として、政令市の有権者からも付託を受けて就任した筈の知事にとっては“目の下のたんこぶ”です。
況(いわ)んや木曾谷と同面積の、而(しか)して平坦な地勢の大阪府です。結局は東京の後追いをするのか、と揶揄(やゆ)されるのを防ぐべく、「都」に代わる惹句の創出は求められるにせよ、橋下徹氏ならずとも「One Osaka」を掲げたい衝動に駆られるでしょう。都構想自体はアリだと当初から僕も評価していた所以(ゆえん)です。
他方で冷徹に捉えれば、大阪都なるハコモノが誕生せずとも、府と市が共闘・協調すれば、納税者への顧客サーヴィスの向上は容易に図れるのです。両社が合併せずとも阪神なんば線と近鉄難波線が相互乗り入れを開始し、神戸三宮から大阪ミナミを経て奈良まで乗り換え無しで移動可能の利便性が高まった様に。
小選挙区制導入で政策本意の政党政治、郵政民営化実施で日本経済の建て直しが実現すると喧伝されました。が、松尾芭蕉ならずとも今や何れも「夏草や兵どもの夢の跡」です。
首相ならぬ市長に当選したウラジミール・プーチン氏と、大統領ならぬ府知事に当選したドミトリー・メドベージェフ氏を連想させる2人の首長が、惚れっぽいが飽きっぽい気質のナニワっ子から、一体、景気はどうなん、と言われぬよう、願うや切です。
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