http://www.asyura2.com/11/senkyo122/msg/898.html
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転載する記事に添付されているグラフによると、10年実績で、オーストラリアからの輸入金額約4兆円のうち90.5%が関税ゼロ(57.2%が石油&天然ガス、鉄鉱石と石炭を加えると80%超が資源)である一方、日本から豪への輸出金額約1兆4千億円のうち75.7%に関税(関税対象の自動車が全体の51.4%)がかかっている
豪からの輸入で関税がかかっている9.5%のうち、農産品と魚介類が8.1%を占めている。
記事にもあるが、「農産品で日本が譲歩しなければ、豪州はEPA交渉を急ぐ理由がなくなる。関税撤廃が原則のTPP交渉を待つだろう」(キャノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主)どころか、豪は、金融資産を保有する移民や直接投資を歓迎する国だから、農産品で日本が譲歩しなければEPA交渉をする意味がない。
豪の自動車産業は、GM(ホールデン)・トヨタ・フォードという外国資本が現地生産している。豪内で生産された自動車の約30%が中東中心に輸出されている。
豪国内市場に占める国産車は15%で、輸入車が85%と圧倒的な割合を占めている。外国資本であるがゆえに、現地生産と輸入の数量コントロールも期待できる。
このような条件のもと、農産品・乳製品・魚介類で関税ゼロが勝ち取れるのなら、自動車など工業品の関税をゼロないし低減することに問題は少ない。
日本政府も、自動車と農産品・魚介類の差し違えであれば、“金額上”は3200億円の譲歩で7300億円を勝ち取った交渉と言い募ることもできるので、国民をゴマカすことができる。
そのような交易条件にあるオーストラリアとEPAを締結しようという発想そのものが、自動車を中心とした産業の利益のためなら農漁業を犠牲にしてもかまわないという政治意思の現れである。
この豪州とのEPA交渉は、TPPでも物品交易が2国間交渉になることから、実質的なTPP交渉の幕開けとなる。
「豪州に農産品の市場を先に開放すれば、牛肉や小麦の対日輸出で豪州と競合する米国を刺激する恐れもある」というより、豪に譲歩した内容は、最低限としてそのまま米国やNZに適用されることになる。
日経新聞は、「どの国の農産品と価格や品質でどれだけの差があり、本当に守るべき農産品は何なのか−−。民主党のTPP議論では素通りした現実的、戦略的な農業論議を急ぐ必粟がありそうだ」と寝とぼけたことを書いているが、議論を素通りさせるほどTPP参加を煽った張本人が今さら何を言っているのかということになる。
豪州とのEPA交渉については、衆参の農林水産委員会が「農林水産物の重要品目が除外または再協議の対象となるよう全力を挙げて交渉する」と決議しているそうだから、交渉担当者は国権の最高機関の意向を踏まえて交渉に臨んで欲しい。
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TPPの試金石 日豪EPA交渉来月再開 戦略的な農業論議急務
日本とオーストラリアが12月、経済連携協定(EPA)の交渉を10カ月ぶりに再開する。豪州は環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加国でもあり、農業分野が焦点となる日豪EPAはTPP交渉の試金石にもなる。農産物保護の思惑もあって日本は早期に日豪EPAをまとめたい考えだが、筋書きどおりには進みそうもない。
日豪EPAの交渉は2007年に始まった。東日本大震災の影響で中断していたが、11月の野田佳彦首相とギラード首相との日豪首脳会談で再開が決まった。TPPをにらんで日本国内で交渉を急ぐよう求める声が強まったことが一因だ。
「TPP交渉の前に日豪EPAを終えておくべきだ」。TPP問題で激論を重ねた民主党の経済連携プロジェクトチーム。TPP推進派と慎重派の主張はほとんどかみあわなかったが、日豪EPAについては珍しく双方が「早期妥結」で一致した。背景にあるのは農産物保護の思惑だ。
TPP交渉では米国が「豪州とは締結済みの自由貿易協定(FTA)合意を優先して砂糖の関税を撤廃しない」と主張しているとされる。11月の声明でも「既存のFTAでも慎重な扱いが必要な品目がある」と言及した。民主党議員らが日豪EPAの早期妥結を求める理由もここにある。
豪州は農家一戸の平均耕作面積が日本の約1900倍で牛肉、小麦、乳製品、砂糖などを日本に輸出する。いずれも日本が高い関税で保護しており、関税撤廃により「北海道だけで農業産出額が4456億円減り、4万7000人の雇用が失われる」と道庁は試算する。これらの農産品で日豪間で関税撤廃の「例外措置」を勝ち取っておけば、TPPではやっかいな米国との交渉に集中できる――政府・民主党が描くのはこんな筋書きだ。
だが、事はそう簡単に運びそうもない。EPA締結で豪州が日本への輸出を増やしたいのは農産品だ。キャノングローバル戦略研究所の山下一仁研究主幹は「農産品で日本が譲歩しなければ、豪州はEPA交渉を急ぐ理由がなくなる。関税撤廃が原則のTPP交渉を待つだろう」と指摘する。
それでは日本が農産品で大幅に譲歩できるかというと微妙だ。日豪EPAは06年12月に衆参の農林水産委員会が「農林水産物の重要品目が除外または再協議の対象となるよう全力を挙げて交渉する」と決議。コメ、小麦、牛肉など5品目の関税を撤廃しないようクギをさした。経済産業省の関係者は「国会決議は重い。手足を縛られて交渉するようなもの」と話す。
豪州に農産品の市場を先に開放すれば、牛肉や小麦の対日輸出で豪州と競合する米国を刺激する恐れもある。結局、農産物保護の思惑が強すぎれば日豪EPAは前に進まず、TPP交渉の足かせにもなかねない。どの国の農産品と価格や品質でどれだけの差があり、本当に守るべき農産品は何なのか−−。民主党のTPP議論では素通りした現実的、戦略的な農業論議を急ぐ必粟がありそうだ。
[日経新聞11月29日朝刊P.5]
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