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大阪ダブル選 私はこう見る/ショー化に危機感/高村 薫氏 作家
毎日新聞 2011.11.29 朝刊 6面
思ったよりも大差がついた。普段は投票に行かない人、浮動票が一気に動いた。具体的に何かを望んで1票を投じたのではなく、何となくの「変化」を求めたのだろう。新聞を読まない人、政治に関心ない層、特に若者が橋下徹氏と松井一郎氏に投票したのだろう。
背景には国政への無力感と既成政党の崩壊がある。地方自治体の首長は権限が強く、パフォーマンスを見て、「何とかしてくれる」と期待したのだろう。しかし、地方自治は生活に密着し、地味なのが当たり前だ。それをショー化してはいけない。今回の投票結果に危機感を抱いている。橋下、松井両氏の意見を聞いても、どんな具体像を持っているのか理解できず、心に何も響いてこない。いまだに「都構想って何?」と思う。訴える内容と暮らしに接点がないからだろう。
そもそも2人から大阪に対する愛情を感じない。橋下氏が咲州庁舎(旧WTC)への大阪府本庁舎の全面移転を断念したとき、東日本大震災を理由にした。しかし阪神大震災を知っていれば、埋め立て地の高層ビルが危ないことぐらい分かる。その当時は大阪や関西に関心がなかったのだろう。
確かに大阪経済の地盤沈下は深刻だ。一方で生活保護率は突出して高い。大阪の病は深く、暮らしている一人としてつらい。しかし府と市の二重行政を解消したところで投資を呼び込めるとも思えないし、意味もない。
では大阪の希望を託すのは何か。それは子どもしかいない。貧困の連鎖を断ち切り、納税できる中間層に育てていかねば、お金は生活保護に回ってしまう。エリート教育は私学に任せておけば良い。そうではなく、義務教育にお金をかけなければいけない。貧しくても学校に行けば大事にされる経験が子どもには必要だ。大事にされた経験のある子どもは人を大事にできる。
だが、維新が提案する教育基本法条例は生活者にとってほとんど関係なく、そこから見えてくるのは非民主的で強権的な政治手法だけだ。これではいじめが隠蔽され、成績の悪い子どもが切り捨てられないか。これから何が起きるのか、有権者は今度こそしっかり見なければいけない。【聞き手・日野行介】
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たかむら・かおる 作家。1953年生まれ。国際基督教大学卒。大阪府在住。商社勤務を経て90年、「黄金を抱いて翔べ」でデビュー。「マークスの山」(93年)で直木賞、「サンデー毎日」の連載で好評を博した「レディ・ジョーカー」で毎日出版文化賞を受賞した。政治・社会問題で新聞などに積極的にコメントしている。
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