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愛媛新聞社ONLINE 骨抜きの派遣法改正 政権交代の原点を忘れたか
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2011年11月24日(木)
■骨抜きの派遣法改正 政権交代の原点を忘れたか
派遣という働き方が問われたのは2008年の米国発金融危機後だ。自動車、電機業界による節操のない「派遣切り」も、全国に出現した「年越し派遣村」の問題提起も、はや記憶のかなたに追いやられようとしている。
雇用の不安定が潜む社会のゆがみを解消しなくてはならない。それこそが政権交代の原動力だったはずである。
ところが、かつて民主、社民、国民新の3党で合意していた懸案の労働者派遣法改正案は、大幅に修正され、中核部分が骨抜きのまま今国会で成立する可能性が高まっている。規制強化に慎重な野党の自民、公明両党の要求を、政府と与党がのんだ格好だ。
修正後の改正案では、製造業派遣と、仕事のある時だけ雇用契約を結ぶ登録型派遣の原則禁止を削除する。違法な派遣があった場合、労働者が派遣先に直接雇用を申し込んだとみなす「みなし雇用」の導入も3年後に延期する。
これでは派遣労働者の不安定な条件に歯止めをかけるのが難しく、大量の雇い止めの再発を防げない。民主党はまたしても重要公約をないがしろにし、政権交代の原点を見失ったことになる。
もっとも、何の手当てもない規制は社会を混乱させるだけだ。今の労働法制と慣行のままで製造業派遣を禁止すれば、さらに待遇の悪い請負労働を増やすことになりかねない。規制強化に反対する声は当事者の派遣労働者からも挙がっていた。すでに主要企業は派遣から有期の直接雇用への転換を進めてもいる。
労働者の4割近くが非正規となった今、労働市場の規制緩和以前の世の中に戻すのは不可能だという現実を突きつけられる。とはいえ、過酷な労働条件を強いて個人の尊厳を損なうような状態を放置し続けるとしたら、それは産業革命の時代に逆戻りである。
「国際競争力が低下する」「雇用機会が減る」などと、企業も労働者も近視眼的な現状追認にとらわれては、社会不安が顕在化する。やはり企業が熟練の価値を認めない製造業派遣はなくす方向で政策誘導していくべきだ。
政府は来年の通常国会に、社会保障と税の一体改革の一環で非正規労働者の待遇改善を盛る法案の提出を目指すという。そのために派遣法改正案成立を急いだようだが、対症療法の繰り返しでは問題の根本的解決には至らない。
労働者を合理化の対象におとしめる制度と風潮がある限り、雇用差別は続く。非正規労働を認めることで恩恵を受ける正規労働者の処遇を含めて、労働者全体で調和を図る必要もあろう。低成長社会を前提とした持続可能な雇用と労働市場のあり方を戦略として示すのが、民主党政権の使命といっても過言ではない。
【関連リンク】
Yahoo!ニュース - 意識調査 - 「製造業派遣禁止」の見送り、納得できる?
http://polls.dailynews.yahoo.co.jp/quiz/quizvotes.php?qp=1&poll_id=7328&typeFlag=1
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