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近聞遠見:「国民」を安易に使うまい=岩見隆夫
http://mainichi.jp/select/seiji/iwami/
毎日新聞 2011年11月26日 東京朝刊
政治家とメディアは、私の自戒もこめてだが、
<国民>
という言葉を安易に使いすぎるのではなかろうか。
民主党の小沢一郎元代表が、22日のグループ会合で発言したのも、そのケースで、
「今この時期の消費税の増税議論は国民に受け入れられない。強行するなら党内の運営もむずかしくなる」
と野田佳彦首相が進めようとしている消費税増税に反対したという。ここでの<国民>が、国民のマジョリティー(多数派)を指しているのだとしたら、正確さを欠く。
毎日新聞の10月全国世論調査で、社会保障費の財源として消費税増税の賛否を問うたところ、賛成48%、反対50%となった。世論は完全に二つに割れており、この傾向はほかの調査も含め、ほぼ定着している。
今後、賛成が増えるか反対が増えるかは政治による説得力の勝負だ。現段階で<国民が受け入れない>と決めつけるのは間違っている。
衆院解散の時期が言われ、新党論が飛びかうなか、日々、
<消費税政局>
の様相である。野田首相は就任後、<わが政治哲学>と題する一文(月刊誌「Voice」10月号)のなかで、
<われわれが心せねばならないことは何か。それは、苦しいときにもきちんと覚悟を決めて、物事を進めていく政治を実現することだ。その意味で、いまあらためて学ぶべきは、大平正芳さんの政治のあり方ではないか……>
と書き、大平首相が財政再建のため一般消費税導入の覚悟を決めながら、結果的に挫折した(79年)ことに触れている。
大平の気概こそ、と野田はたたえ、先輩がたどった苦難の道を自分も歩く決意を記しているのだ。しかし、気概は大切だが、それだけで片づかないことは、大平の挫折以来30年余のきわどい消費税攻防史が物語っている。
中曽根康弘、竹下登、細川護熙、村山富市、橋本龍太郎、菅直人に大平、野田を加えると、8人もの首相が消費税という難物にかかわり、何人かが深手を負った。
中曽根は最近、
「私の在任中、売上税(のちの消費税)を打ち出したものの、国民や野党、メディアの反発にあって断念した。勉強が足りなかった。明らかに政治的未熟だったと反省している。野田政権も同じ失敗を繰り返しかねない」
と体験的に警鐘を鳴らした。ここにも<国民>がでてくる。
竹下のもとで難産のすえ消費税法の成立にこぎつける(88年)が、この時、安倍晋太郎自民党幹事長は、
「世紀の法律とも言うべきもので感無量だ」
と述べている。それが決して大げさに聞こえなかった。
細川による国民福祉税騒動を経て、税率を導入時の3%から5%に上げたのは社会党首相の村山の時だった(94年)。翌年改選の社会党参院議員は、
「とても生き残れない」
と猛反対したという。当時、蔵相で担当した武村正義は、先日の民放テレビで、
「消費税増税はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)よりはるかに重大な、国民全部に響く問題だ。野田さんはまっしぐらに堂々と、連日テレビに出て、国民に訴えるぐらいのことをやらないと、うまくいかない。
あの時、『なぜ2%上げるか』を一生懸命説明して歩いたら、次の選挙で3万票(衆院滋賀2区)増えた。わかってもらえる」
と語った。<国民>が2度使われている。
野田首相の相手は、野党や民主党批判派でなく、国民だ。(敬称略)
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