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対米従属の起点となった旧安保条約── 野田首相はTPP交渉参加へ向けて関係国と協議に入ると表明したが、TPP反対運動が日々高揚している。
森田 TPP問題は、いまや対米関係を大きく変える一大政治問題と化しつつある。TPP反対運動は、今後の展開次第では、日本の真の独立を求める運動となり、対米従属外交を終焉させる契機となるかもしれない。
改めて日本の対米従属が固まった歴史を振り返っておく必要がある。私は、対米従属の起点は日米安保条約にあると考えている。
旧日米安保条約は、戦後史におけるわが国の最大の汚点と言っていい。一九五一年九月八日、わが国はサンフランシスコで連合国側と講和条約に調印したが、同日、米国政府と日米安保条約(第一次安保)にも調印した。講話条約がオペラハウスにおいて全権代表団によって調印されたのに対して、安保条約は下士官用クラブハウスの一室で、吉田茂首相ただ一人が調印した。しかも、吉田は内閣総理大臣という肩書きなしで、安保条約に調印した。宮沢喜一氏の証言によれば、吉田は「君たちは来るな。自分だけでいく」と語った。日米安保調印が大きな汚点になることを知っていたからだ。
そして、対日講和と安保の二つの条約を「サンフランシスコ二条約」という形でセットにして批准手続きがとられ、全く国内で議論をすることなく、日米安保条約は批准されてしまったのである。講和条約はそれなりに国民的議論があったが、安保条約は全く議論されないまま、アメリカに強要される形で、秘密裏に調印されたのだ。
国際法では、占領下において占領当局が一方的に強要した条約は、講和条約発効によって独立した場合には消滅することになっている。ところが、日米安保条約は消滅されず、その条約の改定という形で六〇年安保条約が締結された。つまり非合法な旧安保条約は改定条約締結というトリックによって合法化されたのだ。こうして、ポツダム宣言で連合国が約束した日本の独立は反故にされた。そして日本は半永久的に米国の隷属下に置かれることになったのだ。六〇年安保に私たちが激しく反対した理由の一つが、旧安保条約の非合法性を蔽い隠そうとすることに対して反発し、怒ったことにあった。
── 森田さんは、全学連を率いて砂川闘争などの米軍基地に対する反対闘争を展開し、六〇年安保闘争を闘ったが、当時から旧安保の非合法性についての認識はあったのか。
森田 当時からあったが、まだ十分な資料はなかった。「インチキがあるらしい」という漠然とした疑いも持っていた。当時は、それを裏付ける資料が公開されていなかった。第一次安保は破棄すべし、と主張していた。
── 独立後の日本は、そうしたトリッキーな方法によって、アメリカの支配下に置かれ、首都東京に米軍基地が設けられるというな状況が生まれ、その延長線上で、今日までアメリカによる従属体制が続いている。
森田 その通りだ。旧安保条約が秘密裏に、非合法的に結ばれ、それを改定するトリッキーな方法で合法化し、日本を永遠に植民地化する体制を築いたのが、一九六〇年の安保改定だった。インドネシアのスカルノが言った通り、国土の一部が占領されているような状態は独立ではない。
アジア太平洋地域を分断するTPP
── TPPを推進するアメリカの狙いをどう見るか。
森田 TPPには国内的に様々な問題点があり、議論され始めているが、私が心配しているのは、それがアジア太平洋地域の分断を招くことだ。
戦後の日本が唯一、自発的、主体的に提唱した世界秩序構想が、APEC(アジア太平洋経済協力)だった。これは、戦後日本の主体的外交の立脚点であり、戦後日本の外交上の宝といってもいい。
APECは、もともと一九七八年に大平正芳首相がアジア太平洋地域の経済協力体制構想として「環太平洋連帯構想」を呼びかけたことに始まる。大平政権下では政策研究会「環太平洋連帯研究グループ」が設けられたが、一九八〇年六月の大平首相の死去により頓挫した。大平氏の後を継いだ鈴木善幸総理は、大平構想に注目しなかったが、次の中曽根康弘氏は大平構想に注目し、大平首相のブレーンを中曽根内閣のもとに再結集して大平構想の実現に意欲を示した。その結果生まれたのが、APECだったのだ。
発足した一九八九年時点の構成国は、日本、アメリカ、カナダ、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、当時のASEAN加盟六カ国で、一九九三年には中国と台湾が加盟、文字通りアジア太平洋地域を包含する経済協力機構となった。これは、わが国が誇るべき外交成果であった。
次第にAPECはアメリカ主導による貿易自由化推進の場としての色彩を強めた。ところが、アメリカはいまTPPを自ら主導し、APECを分断し、中国に対抗する経済ブロック化を推進しようとしている。
APECに加盟している中国、インドネシア、フィリピンなどは、TPPには参加していない。TPPはまさに、アメリカに追随し、中国を包囲しようとする国々中心の組織の性格がある。つまり、TPPはアジア太平洋地域を分断し、アメリカ主導の新たなブロック形成の道具になる恐れのある組織なのだ。TPP推進は、日本が自ら築き上げたアジア太平洋の全ての国々を含む平和的経済協力構想の崩壊を意味する。しかも、中国とTPP参加国を分断しておいて、アメリカは自ら中国の市場を押さえようとしている。アメリカのわがままである。
日本は、真っ先にオバマ大統領に次のように直言すべきだ。「TPPは、アジア太平洋地域全体の経済協力という、APECの立脚点に反するものだ。アジア太平洋の分断につながるからこれを推進するのは止めなさい」と。そう言ってやることが、アメリカの友好国である日本が果たすべき役割である。
ところが、菅直人前首相は、このようなアジア太平洋地域を分断する恐れのあるTPPに喜んで乗ってしまった。そして、三・一一の大震災の後、一時的にTPP交渉参加についての結論を先送りしていたが、この間アメリカ政府は日本政府に強い圧力をかけ続けた。野田総理は表面上は曖昧な態度をとり続けながら、TPP推進派に対しては、TPP推進の姿勢を示していた。菅氏と野田氏には、TPPを推進するという約束があったのではなかろうかと言われている。私は、すでに野田内閣はアメリカ政府に対して、日本政府はTPP交渉に参加すると伝えていたのではないかと推測している。野田首相は国内と海外の対応を使い分けている。
野田政権が十一月上旬のG20サミットで「大増税」を国際公約したことにも、この政権の財務省寄りの姿勢と、対米従属的性格が如実に示されている。野田政権は従米・従財務省政権である。
野田首相は十月末の国会における所信表明演説では一言も語らなかった消費税増税を、十一月三日のG20サミットにおいて国際公約をするという大フライングを犯した。消費税増税という政治の大事を日本国民には何も語らず、国権の最高機関の国会において一言も言わないまま、国際公約するとは、日本国民に対する裏切り行為にほかならない。これほどひどい首相の裏切りはほとんど例がない。
http://gekkan-nippon.com/?p=1651
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