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日経新聞が昨日(23日)から連載を開始した「TPPの視点」の第1回目は、なぜだか自然にTPP反対派と見なされている農水省の元事務次官だった高木氏である。
高木氏は98年に事務次官就任、01年の退官後は、農林中金総合研究所理事長・農林漁業金融公庫総裁を歴任した。
農水省がTPP関連で「食糧自給率」が急低下するといったデータを出していることや鹿野農水大臣が“慎重な”言い回しをしていることから、農水省はTPP参加に反対していると思われているフシもあるが、これまでも書いてきたように、農水省の多数派はTPP参加派である。
農家や漁業者そしてそれらの団体との歴史的関係性から、TPP参加に反対しているように見せかけているだけである。
10年前に退官した高木氏に“代弁”させているのも、彼なら風当たりが小さくて済むと考えてのことだろう。
農水省の官僚は、農業の現状が続く限り、彼らの“能力”を発揮する機会も少なく、予算も「個別所得補償制度」が中心になってしまうことを憂慮している。
TPP参加を契機に、“農地の集約=大規模農家育成”や“傾斜型所得補償制度”そして付随する農業土木など、政策立案・予算の両面で農政の新しい地平が切り開かれることを期待しているのだ。
TPP反対派を農水省の既得権益を守るものたちと批判されている方もいたが、TPP賛成派こそが、農水省の権益拡大を力強く後押しするものなのである。
元農水事務次官の高木氏は、TPPと農政の関係について次のような概要を述べている。
○ 「TPPに参加するしないにかかわらず、日本の農業は衰退の危機にある。耕作放棄地が40万ヘクタールと埼玉県の面積を超え、高齢化と新規就農者の減少で担い手不足も深刻だ」
コメント:それは非農家出身者が就農できるための工夫とその促進を怠ったツケ。
○ 「輸入米には700%超の関税を課し、外国米が国内に入りにくいようにした。コメの価格を維持するために、減反政策など生産調整も実施した。その結果、農業経営の創意工夫を奪った。コメの生産費は米国の7倍で日本のコメ農家は競争力を失った」
コメント:逆の説明である。先住者の土地の上に築かれた根っからの販売農業から生産されたコメの輸入を抑えるために高率関税をかけ、国内需要の減少を見ながら減反政策で価格を維持したのであって、その結果が競争力の喪失をもたらしたわけではない。
○「戸別所得補償の対象を専業農家に絞るべきだ」
コメント:個別所得補償は、経済的に疲弊している農家や地方を活性化させる目的も含む政策である。次項との関係になるが、戸別所得補償を専業農家に絞っても、貸し出しに応じることはあっても、売却にはほとんど進まない。
○「『所有者=耕作者』という理念に根ざした農地法の廃止も検討課題だ。同法は企業の参入にも障壁を設けている」
コメント:戦後日本の基礎の一つである「農地改革」を踏みにじるものである。企業が大々的に農業に参入すれば、かつて数多くいた小作農よりも過酷で最低限の主体的な作る喜びさえない、「非正規季節派遣農業労働者」が数多く生み出されることになる。
○「関税撤廃による影響はどれだけ時間をかければ小さくできるか検証し、交渉の中で例えば撤廃まで長めの期間を求める戦術をとればいい」
コメント:何年あっても同じだが、成田空港建設時のように農地を強制収用して大規模企業化農業にでもしない限り、猶予期間で米・豪・ベトナムなどに対するコメの価格競争力が実現できるというのは夢想である。
東北・関東を中心に膨大な放射能をまき散らし、この先いつから耕作が可能になるのかさえわからない農地が膨大な広さにのぼっている状況でタワゴトを言うのは犯罪である。
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TPPの視点
(1)農家の創意工夫引き出せ
元農水次官高木勇樹氏
アジア太平洋地域の自由貿易構想が熱を帯びてきた。関税撤廃や市場開放を掲げる環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に日本も参加を表明した。農業など国内問題をどう乗り越え、経済再生につなげるか。識者に聞く。
改革待ったなし
−−TPP交渉参加をどう評価しますか。
「日本の立場を主張できる環境がようやく整った。長い目でみれば農業にとってもプラスになる。TPPに参加するしないにかかわらず、日本の農業は衰退の危機にある。耕作放棄地が40万ヘクタールと埼玉県の面積を超え、高齢化と新規就農者の減少で担い手不足も深刻だ。この20年間で農業所得は半減した。負の連鎖を断ち切る構造改革が待ったなしの状況にある」
「農林水産省OBとして残念に思っているのは農業の守り方を間違えたという点だ。輸入米には700%超の関税を課し、外国米が国内に入りにくいようにした。コメの価格を維持するために、減反政策など生産調整も実施した。その結果、農業経営の創意工夫を奪った。コメの生産費は米国の7倍で日本のコメ農家は競争力を失った」
――農業再生では何が大事になりますか。
「耕地の大規模化を通じて効率化を促す政策が不可欠だ。現行の戸別所得補償は小規模な兼業農家も対象とし、小規模農家がコメ生産の6割を占める構造が改善しない一因になっている。まず、戸別所得補償の対象を専業農家に絞るべきだ。そのうえで、兼業農家が農地を貸し出すメリットを高めるために、賃料の上乗せ分を国が補助する制度を導入するのも一手だ」
「『所有者=耕作者』という理念に根ざした農地法の廃止も検討課題だ。同法は企業の参入にも障壁を設けている。販売力や商品開発力を持つ企業と生産ノウハウを持つ農家が互いに得意分野で協力すれば競争力強化につながる。入り口から規制する必要はない」
−−農政が農業を縛っている面があるともいわれます。
「農家の創意工夫を引き出す農政への転換も大切だ。戸別所得補償では、コメや麦など品目ごとに補助金を決めているため、結果として、何をどれだけ作るか、農家の判断を縛っている。欧州連合(EU)のように、お金の使い方は農家の自主性に任せた方がいい。農家は所得を最大化するために、市場環境をにらみながら農業経営をするようになる」
時間との戦いに
−−農業団体は関税撤廃で国内農業が壊滅すると主張しています。
「違和感がある。過去20年間で農業産出額は4兆円近く減った。農水省はさらに農産物の生産が4兆1千億円減ると試算する。だが、世界のすべての国との間ですべての関税がなくなった場合を前提にしており、TPP参加との関係は明確ではない」
「もちろん農業への影響は出るだろう。農業改革と競争激化の時間との戦いともいえる。関税撤廃による影響はどれだけ時間をかければ小さくできるか検証し、交渉の中で例えば撤廃まで長めの期間を求める戦術をとればいい。農業団体はそれを踏まえて、どのような保護政策が必要か提案をした方が生産的だ」
「TPP参加で農業が得るものもある。知的財産分野などを主導し、温度変化に強い品種改良の技術や高い安全性など日本の農業の強みを生かすルール作りが望まれる」
[日経新聞11月23日P.5]
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