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TPP国会では揚げ足取りに終始、オリンパス問題も上場廃止に至らずーー日本はいつからこんな幼稚な議論しかできない国になったのか、
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/26958
2011年11月18日(金) 長谷川 幸洋「ニュースの深層」:現代ビジネス
先週のコラムhttp://gendai.ismedia.jp/articles/-/26140で環太平洋連携協定(TPP)とオリンパス問題が「日本経済に打撃になる可能性が高い」と書いた。その後の展開をみると、そんな感じがますます強まっている。議論のお粗末さがにじみ出ているのだ。
TPPからみていこう。
野田佳彦首相はTPPへの参加を表明したが、言い方をめぐって永田町でぐずぐずともめた。野田が言ったのは「交渉参加に向けて関係国と協議に入る」である。すると、反対派の急先鋒だった山田正彦元農林水産相は「事前協議にとどめてくれた。ほっとした」と語った。
山田は交渉参加なら離党をほのめかしていたが、実は本気じゃなかったから「協議に入る」という言い方を前向きに評価して、離党しない口実にしたかったのだろう。あまりに見え透いている。
■野田の言い方は正しかった
日本が「交渉に参加したい」と表明したところで、相手が「入ってもいいよ」というかどうかは話し合ってみなければ分からない。それは当たり前である。相手はもう9人(9ヵ国)が集まってパーティを始めている。そこに後から来て「オレも入れてくれ」と言っても「大歓迎だ」となるかどうかは9人次第ではないか。
日本が「入りたい」と言えば、必ず入れると思うのは勘違いもいいところだ。本当にそう考えていたとしたら、日本がいつまでも一流の経済大国だと思っている思い上がりの反映か、よほどおめでたいかのどちらかである。日本の参加について米国に慎重な意見があることは前回コラムで指摘した。
だから、野田が「参加に向けて協議に入る」と表明したのは正しい。日本に参加する意思があるのは明確に伝わったし、かつ相手国との協議次第であることもしっかり踏まえている。それでもダメなら、それは相手が拒否したという話になる。
ところが、野田が表明した後も国会やマスコミ報道で「野田の言い方があいまいだった」というような批判が出た。
交渉に参加できるかどうかは相手次第の要素が半分あるのは、小学生でも分かる理屈だろう。離党を避けたかった山田が無理矢理、野田の言い方を評価したのはまあ理解しても、野党などが「あいまい」などと批判するのはいただけない。本質に迫っていないのだ。
交渉から離脱する場合があるかどうかも議論になった。野田が「国益を損ねてまで交渉参加することはない」と答弁すると「二枚舌ではないか」と批判された。が、これまた野田の答弁は当たり前の話である。
交渉ごとなのだから、どんな合意ができるのかできないのか、やってみなければ分からない。最終的に納得できれば合意、できなければ合意しない。それが普通である。さらに言えば「合意しない場合もある」というカードを残しておかなければ、相手に足下を見られるだけではないか。いくら与野党で立場が違うとはいえ、国会で議員が真顔で激論を交わすような話とも思えない。
■アメリカが配った報道資料で大騒ぎする必要があるのか
あきれた話は、まだある。
オバマ大統領との首脳会談で野田が「すべての物品やサービスを貿易自由化交渉のテーブルに乗せる」と言ったかどうかをめぐって大騒ぎになった。野田はカギカッコ内のような発言はしていないと言っているが、これまで日本政府は「重要品目に配慮しつつ、すべての品目を自由化交渉対象とする」という基本方針を決めている。
米国にすれば、日本の既定方針を含めて首脳会談の報道資料を配ったにすぎない。
米国の報道資料には「重要品目に配慮しつつ」のくだりが抜け落ちているが、そこはまさに今後の交渉で最大の焦点になる。米国の報道資料にあろうがなかろうが、これから議論になるのは関係者全員が百も分かっているのだ。報道資料になかったから、もう議論しないなどという話ではない。
それを「言ったか言わなかったか」で批判するのは、まったく揚げ足取りと言っていい。中身の議論をしたくないから、外形的な部分で攻撃している。国民が聞きたいのは、そんな些末な話ではない。何をどう自由化するのか、それとも例外扱いをどうするのか、というもっと根本的な議論である。
実際には、9カ国の間で交渉はもう佳境にさしかかっているのだから、日本が「入りたい」と言えば「では、日本はこれこれの品目をどう自由化するのか」という実質的な話になる可能性が高い。つまり、自由化の中身の議論を国内でも早く始めなければならない。あれこれと入り口の議論をしている時間はそう残っていないはずだ。
ようするに国会論議が子供じみているのだ。国会はいつから、こんなに幼稚になってしまったのか。こんな調子では戦う前から、相手にバカにされてしまうだろう。
だいたい野党の自民党はTPPに賛成するのか反対するのか、いまだに党の方針がはっきりしていない。党内は反対論が8割のようだから、執行部あたりから聞こえてくるのは反対意見ばかりだ。一方「元老」的存在の中曽根康弘元首相は「尊皇攘夷みたいな考えでは通用しない」と批判している。自民党はもともと自由貿易推進の党ではなかったのか。
党として自分たちのスタンスをはっきり打ち出せないから、言葉尻をとらえて難癖をつけている。こんな態度では、永遠に支持率は上がらないだろう。有権者はそれほど幼稚ではない。
もちろん野田にも責任がある。なぜTPP交渉に参加したいのか、自分の言葉で説明を尽くしてきた、とはとうてい言えない。方針をあきらかにしたのはアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出発する前夜であり、それまでは「だんまり作戦」を続けていた。
国のトップリーダーがそういう姿勢だから、多くの人が「こんな首相で大丈夫か」と不安になっている。それで話が本論に入っていかない。まさしく「政治の劣化」が極まっている。
■オリンパス事件では原理原則を守れ
オリンパス事件については、証券取引等監視委員会が上場廃止ではなく行政処分にとどめるよう金融庁に具申する方針と報じられた。読売新聞が第一報を流した後、ロイター通信、テレビ各社、朝日新聞などが追随した。
経済評論家であり、金融のプロでもある山崎元が16日付けコラムで指摘したように「オリンパスは、ライブドアよりもかなり悪い」。私もそう思う。山崎はオリンパスを上場廃止すべきかどうか、やや留保しているが、証券市場について素人同然の私はライブドアが上場廃止になって、より悪質な違反をしたオリンパスが上場廃止にならないのだとしたら、理解に苦しむ。
上場廃止になれば、多くの株主は損するだろう。だが、行政処分にとどめて株価が急反転すれば、山っ気のある投機家が大儲けするかもしれない。これだけの事件を起こし、いまの株価水準でもオリンパス株を売らずに持ち続けている株主は、証券取引等監視委員会と金融庁の出方に一か八か賭けている面があるかもしれない。
火事場泥棒のような投機行動を助長する監督当局の姿勢は容認できない。行政処分で済ましてしまうという話には、本当に驚いた。世界の市場が日本の対応を見ている。ここは原理原則をしっかり踏まえて対応すべきである。
(文中敬称略)
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