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予想したとおり、これまでTPPの世論調査を出してこなかったマスコミが、政府のTPP参加表明と同時に揃って発表してきた。その数字は、これまた予想したとおり、賛成が異常に多く、反対が少ない結果になっている。拮抗していない。朝日は、賛成が46%、反対が28%。NHKも、賛成が34%、反対が21%。これまでずっとTPPを宣伝し、TPP参加へと世論を扇動してきたマスコミが、反対が多いとする結果を出せるはずがなく、当然、こうした比率で自分たちの報道を正当化するのだが、やはり、野田佳彦が参加表明をした直後の時機を捉え、政府の決定を国民が支持した恰好にしている。こうやって駄目を押すのであり、TPP参加が不可逆的な流れで後戻りはできないのだと説教し、「決断」の意味を強調して刷り込み、TPP反対派に武装解除と転向を迫るのである。朝日の1面には、この世論調査の記事と並んで、「交渉へ各国雪崩」の見出しが踊っていて、カナダ、メキシコに続いて、フィリピン、パプアがTPP参加に意欲を示したとする記事が載っている。TPP参加が正しい方向だったと意義を固める工作報道だ。一方、ネット言論の方は、相変わらずTPP反対論が多数で、APEC各国の参加ラッシュに動揺する気配もなく、この動きの本質を看破する論調になっている。要するに、日本が参加表明したため、日本への一次産品の輸出メリットが生じ、「バスに乗り遅れるな」となったという理解だ。
これまで、TPP参加国は9か国だったが、今度のハワイAPECを機に5か国が加わり、14か国の大所帯になろうとしている。こうして参加国が増えることは、朝日が報道するように、TPPがこの地域の経済ルールの標準になる可能性を示すものだが、同時に、TPPの実務交渉が複雑になり、各国の利害調整に時間がかかることも意味している点を見落とせない。当初、来年の8月か9月に正式締結と言っていたTPP協定の納期は、「来年中に最終合意をめざす」(オバマ)という方針になり、大幅に遅れる状況になっている。ここに新たに5か国が入った場合、特に日本とカナダの立場と国情を考えれば、例外品目の扱い等をめぐって交渉が難航するのは必至で、来年中の合意日程など到底無理であり、少なくとも2年の交渉期間を要すると予測する見方が支配的だ。この意味するところは、すなわちTPPのWTO化である。世界の貿易と経済秩序の流れがWTOからFTAへとシフトしたのは、WTO加盟国が増え、調整を要する利害が錯綜し、先進国と途上国との間の環境や知財の問題など、コンセンサスに時間がかかりすぎるようになったからだと言われている。包括的で標準的な自由貿易秩序の構築をめざしたWTOのジレンマだが、同じ矛盾がTPPにも孕まれるのであり、参加国を増やせば増やすほど、参加国間での交渉は面倒になる。
特にTPPで厄介なのは、米国という自国の利害のみで動くエゴイズム大国が中心に位置して、ルールメイクを強引に主導しつつ、同時に、シンプルでファンダメンタルな自由貿易の枠組作り(例外なしの関税ゼロ)をめざしている点である。これまで、TPPについて情報開示が少なく、具体的にどのような交渉が9か国で行われているか秘密の部分が多すぎる印象があった。今から考えると、その理由が腑に落ちないでもない。これは、単に官僚が都合の悪い情報を隠匿していただけでなく、TPPが秘密主義を通していた作戦があったからだろう。それは、11月のAPECで日本を引きこむという9か国共通の目標だ。日本を取り込んだことで、TPPは市場としての魅力を明確に持ち、参加するメリットが具体的になった。おそらく、日本が入らなければ、TPPは9か国から増える形勢にならず、魅力のない経済圏に止まっていたはずだ。そして、外には大声で言えない事情を抱えていて、NZと米国との間の乳製品とか、豪州と米国との間の砂糖とか、二国間で要調整の品目があり、前途多難であったのが実情なのだ。そうしたTPPの負の部分について、各国は情報を出さず、バラ色の自由貿易圏のように粉飾し、内心はひたすら日本の参加を待望しながら、表向きには強面を演出してカードを隠し、「早く入らないと交渉余地がなくなる」と脅してきたのである。
日本の参加でTPPは存在感を得、空中分解せずに済んだ。いずれにせよ、TPPの参加国が増えることは、TPPそのものにとって成功と前進であると共に、WTOと同じジレンマを抱えることになる。交渉成立・協定発効までの道程は遠く、紆余曲折は避けられない。私は、場合によっては、将来、米国が離脱するハプニングもあるのではないかと想像している。米国にとって、TPPは戦略的な道具であり、ここには二つの意味と目的がある。第一は、日本との実質FTAであり、日本の関税撤廃と制度改定で日本を(事実上)植民地化することである。米国の産品と資本による日本市場と日本経済の支配を強めることだ。この目的の達成は、来年の大統領選の宣伝材料にするもので、数値化されなくてはならず、事前協議で素早く合意される必要がある。第二は、中国封じ込めであり、アジアの市場と経済に中国の影響力が拡大することを抑止し、対中包囲網の軍事経済ブロックを構築することである。TPP拡大で中国に揺さぶりをかけ、中国にもTPPルールを適用させるという遠大な目標に繋がる。この課題も、大統領選で共和党候補との競合を睨んだ際の説得材料の意味がある。が、米国の国益の面で最も重要なのは第一で、日本の国内がTPPルールの制度となり、植民地従属を深めれば、日本の最大の貿易相手国である中国も、その影響を受けずには済まないという計算が成り立つ。
つまり、第一の目的を達成すれば、戦略としてのTPPはダン(done)なのである。昨年の横浜APECで、オバマはTPPについて、「2011年のAPECまでに妥結と結論を得ることを目標にしたい」と言った。1年後のホノルルで、また「来年中の最終合意を」と言っていて、客観的に見れば、TPP協定は1年間作業が立ち止まっていた事実がわかる。日本で震災と原発事故が起き、日本のTPP参加が遅れたためだ。それと、諸国が考えていた以上に、TPP協定の交渉と妥協がタフであるためだ。9か国の交渉でさえ、簡単に合意へとは至らない。ここで参加国が増え、カナダと日本が入り、台湾が入りとなると、交渉の行方はどうなるのか。おそらく、来年のAPECでも、TPP首脳会合で、「TPPの協定成立は来年中」という先送りの結論になるだろう。行き詰まってFTAに方向転換したとされるWTOについて見ると、GATTを解消してWTOに移行したのが1995年で、わずか16年前の発足である。16年前にスタートして、10年後の2005年には早くも行き詰まっている。TPPについても、めざす自由貿易の「理想」が高ければ高いほど、参加国を拡大することで障害となる案件が増え、WTOと同じジレンマを増幅させる。そしてまた、TPPの看板である「高いレベル」の経済連携とか貿易自由化というのは、米国が他国に強制するものであって、他国が米国に適用させるものではない。日米二国間で言えば、制度改定するのは一方的に日本であり、米国はその義務を負わないのである。米国の既存業者が打撃を受ける条件は米議会が拒絶する。
今回、政局でTPP参加を白紙化することができなかった日本は、TPP協定の交渉や締結や批准の前に、もっと早く、二国間協定で米国の要求を呑み、懸念される不利益の応諾へと踏み込んで行くだろう。カークが提起した、牛肉、自動車、郵貯・簡保についても、すぐにマスコミで米国の要求が正当だと言う論者が登場し、「日本の基準は厳しすぎる」「郵貯・簡保は市場競争を阻害している」と喚き始めるに違いない。そして、議論もないまま米国に「決断」の期限を切られ、野田佳彦が会見で「国益のために」と規制緩和を発表し、すぐにマスコミが世論調査で「決断」を奉祝する次第となる。TPP参加という国家の重大な進路決定でさえ、まともな議論もなく、国会審議もせず、マスコミが既成事実化の報道を重ねる政治で押し切ってしまった。TPP参加に反対する国民的な集会もデモもなかった。そこから考えれば、何か個別の案件で、大きな反対運動が起きるとは全く思えない。本来、自国の農業を潰されるとか、主食の穀物を輸入品で供給されるようになるとか、自国の医療保険制度を崩されるとか、国民の預貯金である郵貯の経営を指図されるとか、こういうことは、戦争に負けて主権を失った国が受ける仕打ちであり、戦争に負けた国で起きる事態である。戦争で勝った国が負けた国を植民地化するとき、こういう不平等条約を押しつけるのだ。押しつけられ、国富を奪われ、戦争の償いをさせられる。TPPは日本にとって、まさに下関条約であり、対華21か条の要求である。戦争に負けてもいないのに、こんな条約を押しつけられる。
そのことをマスコミが祝賀して報道している。そして、国民がヘラヘラと悦んでいる。
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