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【TPPと日本農業の真実】JA、TPP猛反対の裏に“カネの臭い”
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20111115/plt1111150822000-n1.htm
2011.11.15 夕刊フジ
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)反対運動の大騒ぎは一体何だったのか。一部、医師会や消費者団体、一般市民の参入があったとはいえ、全都道府県で繰り広げられた反対運動の首謀者は農協組織であった。
野田佳彦首相によるTPP参加協議入り表明に対し、全国農業協同組合中央会(JA全中)の萬歳章会長は「断じて納得できない」と抗議した。「国民生活の根本に関わる重大問題の説明責任を十分に果たしていない」と、全国民の代表のような発言をするが、農協は一組合組織に過ぎない。
「TPPに参加すれば(輸入農産物で)日本農業が壊滅する」とも繰り返すが、農協自身、海外農産物(コメ、麦、大豆、牛肉など)を輸入販売して毎年1000億円も儲けている(前年度実績)。1995年のコメ輸入解禁時、商社と並び、真っ先にコメの輸入認可を申請したのも農協だ。
米国農家から穀物を大量輸入し、約5000億円の飼料を農家に販売する国際穀物メジャーでもある。飼料や肥料、農薬、燃料などの生産資材の取扱高は3兆円。すべて関税ゼロ品目である。安く仕入れ、農協への「独禁法の適用除外」を利用して価格競争を縛り、農家には高く売って儲けている。
農家の生産コストを共同購入で下げる−という本来の目的・精神と矛盾する。利益は約4000億円で農産物取り扱いによる利益の3倍超だ。TPP参加でコメなどの価格が下がれば、資材価格を値下げせざるを得ず、利益が減って困るのだ。
野田首相の表明に先立ち、鹿野道彦農水相は「(TPP参加なら)農業の助成金が新たに3兆円必要になる」(10月28日)との試算を発表した。農水省によると「コメ9割減試算の対策が半分以上」を占めるという。現実となれば、既存の1兆円と合わせて4兆円。大半は農協の口座に入る。信用(金融)事業の利益は8000億円と農協一番の稼ぎ頭だ。
過去に6兆円を費やしたウルグアイラウンド対策費で農業支援の浪費は実証済みだが、今度は毎年4兆円である。半分がコメ用だとされ、その額はコメの現生産額1兆8000億円をも上回る。農協は今回、与野党議員をTPP反対に動員したが、「票田」の見返りに「補助金」という利得を狙う“ゴネ得”運動だったなら、許しがたい。
農協が、TPPを恐れる理由は他にもある。
長期共済保有高320兆円に上る共済(保険)事業である。共済職員は「TPPの中身は分からないが、米国の対日要望書には『kyosaiの規制緩和』は名指ししてある」と危機感を募らすが、農業とは関係ない。
農協は「反対署名が1166万人」と強調するが、筆者の取材では、農村部各地で、事前に氏名が印刷され、サインだけするような回覧板が回っていた。賛否の判断がつかない人でも「署名しないとすぐバレるし、面倒なことになる」(東北の専業農家)とサインしている。自由意思による署名数では決してない。
総括すれば、自由貿易を最も謳歌し、独禁法と市場原理主義と国内規制などを利用して、利益を出してきたのが農協である。給与・福利厚生面は公務員並みで、職員数20万超を誇る大企業組織。「反対デモは業務の一貫。参加すれば、日当に食事代が付く」(職員)。農民の利益とも、まして一般国民の利益ともまるで関係ない。
毎年数兆円のハイリターンがあると思えば、抗議デモに何十億円かかってもローリスクな必要経費に過ぎない。
TPP反対運動にだまされてはならない。=おわり
■浅川芳裕(あさかわ・よしひろ) 1974年、山口市生まれ。月刊「農業経営者」副編集長。カイロ大学中退後、ソニーガルフ(ドバイ)勤務を経て、農業技術通信社入社。著書に「日本は世界5位の農業大国」(講談社)、「日本の農業が必ず復活する45の理由」(文藝春秋)など。
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