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2011年11月11日(金) 「しんぶん赤旗」
主張
自衛隊「転地演習」
市民を不安にさせていいのか
自衛隊は九州南西の海域を中心にした日米海上共同演習に続いて、10日から陸上自衛隊演習、14日から陸・海・空3自衛隊の統合実動演習を相次いで行います。
一連の実動演習は「島嶼(とうしょ)部の防衛」が主眼です。自衛隊をどこにでも迅速に投入する「動的防衛力」構想の具体化です。南西地域での実動演習はアジア近隣諸国との緊張を高めます。戦車や装甲車が公道を走行し市民を恐怖に陥れることにもなりました。自衛隊の横暴勝手な軍事行動を見過ごすわけにはいきません。
わが物顔で公道走行
陸上自衛隊の実動演習では、北海道から90式戦車4両をはじめ装甲戦闘車やジープなど約70両が「転地演習」と称して、民間フェリーとJRなどを使って、主要演習場である日出生台(ひじゅうだい)演習場がある大分に運ばれました。
重大なのは、戦車部隊などが公道をわが物顔に走行し、市民を不安にさせたことです。北海道東千歳駐屯地をでた90式戦車や装甲戦闘車など約60両は長い車列を組み、深夜の公道を30キロも走行しました。大分でもトレーラーを使い公道を通りました。市民の抗議を無視し、市民生活のための公道を軍事演習で使ったことは、自衛隊の軍事優先意識がいよいよ度し難いものとなっていることを示しています。
60両もの軍用車両がごう音をあげて公道を走行するのは市民にとって大きな脅威です。北海道では通過時の騒音値が107デシベルにもなりました。市民が自衛隊に抗議するのは当然です。
90式戦車の公道走行はとりわけ問題です。90式戦車は旧ソ連軍とたたかうためとして膨大な予算を使ってつくられたもので、もともと北海道でしか使い道のなかったものです。重さ50トン、長さが約8メートル、横幅は3・4メートルもあり、JRの貨物列車では運べず、民間フェリーを使いました。いまや使い道もない90式戦車を「転地演習」に参加させたのは、90式戦車の存在感を誇示するためのシナリオにすぎなかったからです。重すぎて島に輸送もできず、小回りも利かない90式戦車を「島嶼防衛」に役立つようにいう防衛省の言い分は、まさに噴飯ものです。
JRや民間フェリーなどを軍事演習のために動員したことも見過ごしにできない問題です。民間利用は「動的防衛力」構築のために「民間輸送力の活用」が不可欠だとする防衛省の方針にもとづくものです。既成事実を積み上げて、民間企業の軍事動員に道を開くのが狙いです。国民を守るのが任務といいながら、平穏な生活を脅かし、市民を恐怖に陥れる演習を防衛省・自衛隊はやめるべきです。
90式戦車なくすべきだ
旧ソ連軍とたたかうためといってつくった300両以上もの90式戦車はいまや無用の長物です。ソ連が崩壊し、政府の「防衛計画の大綱」でさえ「本格的な侵略事態が生起する可能性は低い」といっているのに存在する理由はありません。保持するだけでも修理などで予算がかさみます。国民に巨額の軍事費を負担させながら90式戦車を保持するのは許されません。
無用な演習をくりかえすのではなく、平和的・外交的に紛争を防止するのが大勢です。少なくとも90式戦車は全廃し、軍事費を大幅に減らすべきです。
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