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TPP参加への希望的観測と特攻精神を捨てよ
http://ameblo.jp/aratakyo/entry-11074489115.html
2011年11月10日 永田町異聞
米国アラバマ州のジェファーソン郡が9日、米連邦破産法の適用を申請した。自治体では過去最大の破綻だという。
沈みゆく米国を象徴する出来事のひとつだ。
ウサマ・ビンラディンなる、もはや悪のブランド名しか存在感のなかったテロリスト集団の親玉を、西部劇のごとく撃ち殺し、大統領が「アメリカの偉大さ」を強調せざるを得ないほど、米国は泥舟となって沈み続けている。
連邦政府の2011年度の財政赤字は1兆6450億ドルで過去最大。地方自治体も、カリフォルニア、ニューヨーク、フロリダ、イリノイなど大きな州ほど、歳出の半分しか歳入がないような、税収不足にあえいでいる。
リーマンショック後の09年ごろから失業率は9%をこえる高い水準が続き、住宅価格上昇に支えられていた借金消費のブームは泡と消えても、貿易赤字は500億ドル前後で、いっこうに輸入を輸出が上回らない。
手早い巨額金儲けを旨とする金融帝国主義がはびこって製造業がふるわなくなったせいなのだが、とにかくいまの米国はなりふりかまわず他国の需要を取り込みたい一心のようである。
その象徴が、「自由」の名を冠したマーケット略奪作戦「TPP」であり、弱腰外交と豊かな市場をかねそなえて魅力満点の日本をひっぱり込むため、例によって伝家の宝刀「普天間圧力」をふりかざし、関係閣僚たちをあたふたと沖縄詣でにかりたてた。
TPPは、工業品、農産品など全ての品の関税を撤廃するとともに、公共事業など政府調達や、知的財産権、金融、医療サービスなどにおけるすべての非関税障壁をなくして自由化するのが目的だ。
経団連などに加盟する多国籍企業にとっては、国家の壁は邪魔でしかない。米英の金融資本家が描く世界政府構想に相通じる強者の論理ともいえる。
ちなみに経団連会長、米倉弘昌率いる住友化学とその米子会社は、遺伝子組み換え農作物で知られるモンサント社との間で昨年10月20日、遺伝子組み換え農作物の種とともに、自社の製品を含む除草剤を米国内で売る契約を結んでいる。
モンサント社の除草剤「ラウンドアップ」は世界で最も売れている農薬だ。その威力はすさまじく、過剰に使用すれば雑草だけでなく、肝心な作物そのものまで枯らしてしまう。
モンサント社はこの農薬に耐える作物をつくる必要に迫られた。そこで考え出されたのが除草剤への耐性を持つ遺伝子を作物の種に埋め込む方法だった。すなわち遺伝子組み換え作物をつくり、除草剤とセットで売る仕組みである。
これにより、農家は空中散布などで大量に除草剤を撒くことが可能となった。省力化で人件費などのコストダウンがはかれるため、農業経営の大規模化にはきわめて都合がいい。
一方で、一度このシステムを採用した農家はモンサント社に依存せざるを得なくなる。農地は除草剤大量使用のためにいわば不毛の地になり、耐性のある遺伝子組み換え作物しかつくれなくなる。
麻薬のようなこの依存システムにこそ、モンサント社の快進撃の秘密があるわけだが、遺伝子を人間が操作してつくった農産品を食べ続けることや、環境、生態系への影響など、不安は尽きない。
住友化学の米倉氏は9日、経団連会長として、全国農業協同組合中央会(JA全中)の万歳章会長と都内のホテルで会談した。
利権集団のトップどうしの対面は、冒頭の握手と、それぞれの型通りの主張だけがテレビ放映されたが、欲の皮が突っ張った人間のぶつかり合いほど醜悪なものはない。
農協といえば、組合員の大半を占める零細兼業農家のコメ販売を一手に引き受けて、巨額の販売手数料を稼ぎだす。
同時に、農家が得る収入を預金としてJAバンクにあずかり、国内最大の機関投資家、農林中金がその巨額資金を運用し、カネと票で農政に口をはさんでいる。零細農家の集積こそがその力の源泉だ。
一方、米倉氏の住友化学は、米国のみならず日本にもモンサント社と提携した自社農薬を売りたいだろう。農業改革を大義名分に、米国流大規模農業をこの国に広めようと皮算用しているかもしれない。
資金力をバックに政治を操る点で、経団連と農協は同質だ。似たものどうしだから対立もする。会談した二人の視線の先に国民は存在せず、利益共同体の主だったメンバーの顔だけが浮かんでいることだろう。
したがって、筆者が農協の肩を持つつもりは毛頭なく、ただひたすらTPPのうたう「自由」を疑い、競争原理がはびこってアメリカ化する「他律」となることを恐れている。
仮に締結するとした場合、先述した食品の安全性のほか、株式会社病院の参入や混合診療の解禁によって国民皆保険が崩壊する恐れなど、さまざまな分野で心配な要素が多いが、これに対し日本政府に確固たる戦略があるのだろうか。
日米二国間でなく、マルチ(多国間)の交渉だから大丈夫だ、などという安易な考えが外務省にある限り、不安はぬぐえない。
新自由主義的な経済・金融システムが破たんし、ウオール街に集まった若者らが強欲企業への怒りのデモをくりひろげるなか、米国は最後の頼みの綱として日本市場を囲い込もうとしているように見える。
野田首相はTPP交渉に参加するかどうかの表明を一日延ばして考えるという。もし先に「参加」ありきで、「慎重な判断」を求めた民主党の提言にどういう理屈で対応するか頭をひねるための時間稼ぎなら意味はない。
この国の将来を左右する重大な岐路にさしかかっている。いくら心配しても過剰ということはないだろう。
自由放任、弱肉強食資本主義の不安定世界に、希望的観測だけで無防備に突進する特攻精神だけは、きっぱり捨ててほしい。
新 恭 (ツイッターアカウント:aratakyo)
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