http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/918.html
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国民生活なぞ知ったことではない、自分たちの“身分”と輸出優良企業の繁栄さえあればいい、その他の企業や国民はそのおこぼれにあずかっていればいいと考えているようにしか見えない連中は、「米国と二国間で厳しい交渉をしなければならないFTAより、多国間で交渉するTPPのほうが日本の国益を実現しやすい」と宣伝している。
しかし、それも真っ赤なウソ。
TPP交渉に行けば待っているのは、通常のFTAよりずっと過酷なTPPの考え方(例外なき関税撤廃)をベースにした、米国との苛烈な2国間FTA交渉なのである。
過日、「米国とのFTAより過酷な交渉になるTPP:理念は参加国全体が共有、具体的適用ルールは二国間の交渉がTPP」(http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/801.html)という投稿をしたが、末尾に示した資料によると、10年10月にブルネイで開催された交渉で、関税問題を扱う市場アクセスの進め方は、米国が主張する2国間方式とオーストラリアやシンガポールが主張する多国間方式で対立し、結局、どちらでもOKということになったという。
米国の思惑は、抽象的な原理ではハイレベルの自由化を確立する一方で、自分に火の粉がかかることもある具体的な交易ルールに関しては二国間交渉にこだわり、相手を見ながら有利に交渉を進めたいというものである。
相手より競争力で優位なら、原理を盾に関税撤廃を迫り、劣位ならあれこれ理屈を付けて例外品目にさせてしまうという交渉術である。
ということで、新聞記事にも出ていたように、FTAを結んでいるオーストラリアなど4カ国とは交渉を一切行わず、FTAをいまだ締結していないブルネイ、マレーシア、ニュージーランド、ベトナムにのみ物品市場アクセスに関する米国の提案を提出している。
仮にとんでもない首相がおかしな“決断”をすれば、日本も、FTA締結国と再交渉する煩わしさは避けたいので、未締結国と二国間の物品市場アクセス交渉をすることになるだろう。
米国も、日本とはFTAを締結していないから二国間での交渉を望む。
なんのことはない、TPPと言いながらも、実態は米国とFTA/EPAの交渉を行う破目になるのである。
通常のFTAであれば、原則論に関しても二カ国間の交渉で固まっていくが、TPPの枠内であれば、すでに「例外なき自由化」(関税撤廃)という前提がある。
さらに、限られた交渉時間しかないなかで、米国とだけではなく、オーストラリアやニュージーランドの2カ国とも交渉しなければならない。この3カ国は農産品の輸出大国であり、日本に期待するのも農産品・乳製品の輸出拡大である。
日本は、工業製品については皮革製品などごく少数の品目を除けば無きに等しい関税率であり、交渉相手3カ国は穀物・乳製品・野菜・魚介類に絞って関税撤廃を迫ってくるだろう。
米国は、価格競争力で劣るNZと豪州とのあいだは乳製品を例外品目にしようとしているが、価格競争力で勝る日本には強気で交渉してくるだろう。
多国間交渉で決めたとされるP4(シンガポール・ブルネイ・に―ジーランド・チリ)協定で設定された例外は、イスラム国であるブルネイの酒・煙草とチリの乳製品(関税撤廃まで12年猶予)だけだから、米国・豪州・NZはそれを盾に日本に関税撤廃を迫るだろう。
「米国が自国の砂糖や乳製品などの関税撤廃を避けるために、もしかするとコメで譲歩するのではないかとの期待が日本側にある」そうだが、多国間交渉ならいざ知らず、日米二国間交渉であれば、沖縄などの砂糖や日本ではコストが安いとされる北海道の乳製品よりも価格競争力で優位にある米国がコメと引き換えにするとは考えにくい。
二カ国間交渉とりわけ米国の交渉術は、相手によって違うダブルスタンダードのオンパレードと考えなければならない。
ほんとうに根こそぎスッポンポンにされかねないTPP交渉に参加しようと考えるのは狂気の沙汰である。
TPP参加推進派で参考資料として利用した論考のなかに、「TPP交渉は越年することになるが、2012 年は米大統領選の影響で、交渉の実質的な進展はほとんど期待できない。TPP の合意は2013年に先送りとなりそうだ」という一文があるが、12年の11月に大統領選があるからこそ、TPPを実りの大きな内容にして最終合意まで持ち込み、その成果をぶち上げたいと思うのが当然であろう。
大統領選があるというのに、翌年まで持ち越しでは誰のために交渉を続けてきたかわからないではないか。新聞記事に出ているように、遅くとも10月というのが最終合意のターゲットであろう。
日本が参加すれば、豪州以外他の国の存在感がなくなるような経済力構図になる。
大統領選との兼ね合いを考えれば、さらに過酷な日米交渉になると予測できる。
【TPP交渉の経緯と予定】
1:10年03月オーストラリア:幅広い交渉対象分野で議論
2:10年06月米国:既存のFTAの存続を確認
3:10年10月ブルネイ:市場アクセス交渉の進め方(選択型)合意
4:10年12月ニュージーランド:横断的事項を集中議論、条文草案の作成開始
5:11年02月チリ:各論点にかかる交渉分野の明確化
6:11年03月シンガポール:多くの分野でテキストベースの交渉開始
7:11年06月ベトナム:すべての交渉分野で条文に関する議論進展
8:11年09月米国
9:11年10月ペルー
2011 年11 月米国(ハワイ)APEC首脳会議で大枠の合意を目指す
(出所)経済産業省資料。
※ 参考資料
「米国のTPP 戦略と日本の対応」
馬田 啓一杏林大学 教授 (財) 国際貿易投資研究所 客員研究員
http://www.iti.or.jp/kikan85/85umada.pdf
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