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2011年11月7日(月) 「しんぶん赤旗」
主張
米軍属不起訴
地位協定は口実にもならない
ことし1月、沖縄市で男子元高校生を交通事故で死亡させた米軍属を検察が「公務中」を理由に不起訴処分にした不当性が、いよいよ明らかになりました。
米軍地位協定は「公務中」の米兵・軍属は米国が第1次刑事裁判権を行使するとしています。那覇地検はこれを根拠にして米軍属の不起訴処分を決定しました。しかし軍属の不起訴処分がいかに不当なものか、日本共産党の井上哲士参院議員が政府に示した米軍資料で明らかにしました。
「接受国で裁け」
在日米軍の軍属は米軍に雇用された基地で働く米国民です。少なくない軍属が日本で犯罪をひきおこしています。2010年だけでも17件となっています。にもかかわらず検察当局は「公務中」を理由に不起訴処分にしています。
交通事故をおこした軍属は検察が不起訴処分を決定した後米国に帰されました。しかし米国では裁判にもかけられず、5年の運転禁止とされただけです。元高校生の遺族が抗議しているのは当然です。
米軍属はなぜ日本でも米国でも裁かれないのか。井上議員が示した資料によれば、米国の連邦最高裁判所は1960年に、平時に軍属や家族を軍法会議にかけるのは憲法違反だとする判決をだしています。このため日本で事故をおこした軍属は米国の軍法会議にもかけられず、軽い処分ですまされているのです。米軍属には米国の裁判権が行使されないことがはっきりしているのに日本の検察が不起訴にしたのは重大です。
しかも井上議員が示した米軍の『駐留軍関係法ハンドブック』(オックスフォード大学出版局)で米第7陸軍(欧州陸軍)司令部の外国法部副部長は、最高裁判決を解説したうえで、「米国人家族または軍属が接受国の法に違反する犯罪をおこした場合には、接受国がそれらの者に対する専属的裁判権をもつ」との見解を示しています。
在日米軍の「接受国」である日本が、日本で犯罪をおこした米軍属を裁く権利があると米軍自身が言明しているのです。軍属の専属的裁判権が日本にあると米軍がいっているのに、日本の検察が米軍属を裁く権利を「公務中」を理由に放棄するのは言語道断です。
米軍地位協定17条2項は、「日本国の当局は、…合衆国の法令によっては罰することができないものについて、専属的裁判権を行使する権利を有する」と定めています。地位協定が軍属の不起訴処分の口実にもならないのは明白です。
那覇検察審査会も那覇地検の不起訴処分を不当だとして、米軍属を「起訴相当」とする議決を行いました。検察は米本国に帰った軍属をただちに日本に呼び戻し、起訴し裁判にかけるべきです。
米軍特権なくしてこそ
政府は「公務中」を理由に日本の第1次裁判権を放棄するだけではありません。「公務外」であっても「実質的に重要」な事件以外は「第1次の権利を行使する意図を通常有しない」との「密約」によって日本の裁判権を事実上放棄しています。米兵・軍属を特別扱いにして、日本の裁判権を放棄するのは主権国家のとるべき態度ではありません。国民を守るためにも米軍特権をなくすべきです。
裁判権放棄の「密約」を破棄するとともに米軍地位協定の抜本見直しが不可欠です。
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