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よほど邪悪な内容が詰まっているのか、日本政府は、明日にも参加したいと言いながら、TPPに関する情報は、断片的・曖昧・すりかえ・ゴマカシといった内容でしか公表していない。
情報はご都合主義的にしか出さない一方で、早く参加表明をしなければ有利な条件を引き出す交渉ができないと、まるでTPPへの参加が既定方針であるかのような構えで国民を脅している。
よくよく考えれば、ちらちら漏れ出てくる情報はあるにはあるが、TPPがどのような交渉過程でまとまるものなのかという基本情報さえきちんと開示さされていない。
そのようななか、様々な団体や人々から提起される疑念や危惧に対して、前原氏のように“TPPおばけ”と揶揄するだけでは済まないと考えた政府は、「単純労働者の受け入れは議論の対象外」とか、「混合診療や株式会社の病院経営参入、公的医療保険制度は議論の対象外」といったイイカゲンな説明で危惧を打ち消し“安心”を売り込もうとしている。
(何度か書いたが、永続的な単純労働者の受け入れは認めなくとも、政府調達(公共事業)のプロジェクトごとに請負米国企業が賃金が安くて済む外国人労働者を連れてくるかもしれないという問題はつきまとう)
このような政府やメディアの説明を聞いていると、まるでTPPの協定内容が交渉参加国全体の議論で決まるように思える。
しかし、それは、推進派の言葉を借りると、大きな“誤解”である。
WTOもそうだが、多国間の通商協定は、基礎となる理念やルールと個別具体的なルールという二層構造で構成される。
協定参加国は理念や方向性は共有しても、関税や輸入制限など交易ルールの具体的な内容は国によって異なる。
WTOでは、関税率の引き下げなどいわゆる「自由化」は、各国が、これらをこのようにするというポジティブリストに載せることで確認・承認される。そして、リストに載っていないものは自動的に従来通りということになる。
TPPがWTOと根底的に違うところは、TPPの場合、共有する理念や方向性がストレートに各国の具体的な交易ルールに適用され、適用の例外を設けたい国は、その品目や対象をネガティブリストに載せ、参加各国から個別に承認を得なければならないことにある。
ネガティブリストに載っていない事柄は自動的に原則が適用されることになる。
重要な点は、例外としたいネガティブリストはラウンドテーブルで参加国全体から承認されるわけではなく、個別の参加国からそれぞれ承認を受けなければならないところである。
最近、日本政府が今月のAPECでTPP交渉への参加を表明しても、米国の政府・議会との間で「事前協議」を行い、日本が参加にふさわしい考え方をしているかチェックを受けなければならず、その後「90日間ルール」が適用されるので、日本政府が実際にTPPの交渉に参加できるのは来年6月ころになると報じられた。
“お約束”を提示し審査を受ける「事前協議」も、米国だけではなく、他の8カ国とも順次行い、それぞれの国からから参加の承認を得なければならない。
日本政府が、TPP交渉の場に出向きTPP参加に対する心構えや基本方針を説明し、既参加9カ国から拍手で歓迎を受けるというものではない。
WTOへの加盟手続きも既加盟国の承認が必要だが、市場経済であることや開放性のレベルが問われるもので、TPPのような厳しい「事前協議」はない。
米国とはTPPではなくFTAを結ぼうとしないのかという疑問が多くあることから、「TPPには、交渉余地が大きいというメリットもある。日米2国間で協議を進めるのとは違い、医療分野などで他国と利害が一致すれば共闘が可能。米国の要望を一方的に受け入れざるを得ないという状況にはなりにくい。交渉に早く参加すれば、日本に有利に議論を進めることも可能だ」(日経新聞『TPPを知る 3』「なぜ日米FTAではないのか」)という説明もされている。
これを読めば、仮に日本が参加すれば10カ国がラウンドテーブルで向かい合って具体的なルールが決められていくかのように思える。
しかし、実際はそうではなく、「医療分野などで他国と利害が一致すれば共闘が可能」というのはゴマカシである。
例えば、米国が、公的医療保険制度がない国や所得水準が低い国に医療分野の開放を求めることはせず、世界一とも言われる確固たる公的医療保険制度を有し所得水準も高い日本に対してだけ医療分野の開放を求めることがありえる仕組みだからである。
だから、「米国の要望を一方的に受け入れざるを得ないという状況にはなりにくい」というのもウソである。
日本と米国のあいだの具体的な交易ルールは、TPPの理念と原則をベースに、日本と米国がサシで交渉するものだからである。
「交渉余地が大きいというメリットもある」という提示も、実際は正反対で、FTAのほうが交渉余地は大きい。
なぜなら、FTAであれば、2国間の自由貿易を深化させるという基本はあるにしろ、理念や原則の細目も、具体的交易ルールと同じように、2国間の交渉で合意されるからである。
TPPは、P4(シンガポール・ブルネイ・ニュージーランド・チリ)によるオリジナルの協定が理念・原則のベースとしてあり、米国が参加したことから、それになんからの追加・修正が加わっているだろう。
日本は、TPPでの米国との交渉に当たっても、この協定に縛られて具体的なルールを決めていくことになる。
日本政府は、P4が合意したTPP協定の内容を公表しようとしない。それが国民に知られると、これまで口先だけで行ってきたゴマカシやウソがばればれになるからだろう。
端的に言えば、TPPは、関税撤廃あらゆる経済活動の内外非差別という理念・原則に縛られたなかで、参加国との個別FTAないし個別EPAの交渉をしなければならないものなのである。
そうであることは、「焦点の関税撤廃を巡っては、具体的、本格的な議論にはまだ入っていないとみられる。米国は自由貿易協定(FTA)を締結済みのオーストラリアとは関税交渉を実施しない方針を表明」(日経新聞10月30日朝刊)ということでもわかる。
米国とオーストラリアは、TPPベースでことさら関税ルールを設定しないことに相互利益を見出したのである。
それで得られる利益が大きいと考えているシンガポールなどは別として、日本だけがあれよあれよという間にスッポンポンになってしまう可能性を秘めているのがTPPの仕組みなのである。
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