http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/783.html
Tweet |
指定弁護士も被告弁護団も手抜きをしていないかー共謀の立証の在り方について
2011年11月06日23時36分 早川忠孝
それぞれ周到に準備をしているはずだが、傍目から見ると何か足りない。
政治資金収支報告書の不実記載について作成名義人である会計責任者と事務担当者との間の共謀を認定するのは比較的容易である。しかし、政治団体の代表者個人に不実記載についての刑事責任を問うためには、いわゆる共謀共同正犯理論が適用されるような特別の事情が必要である。
この特別な事情の主張立証が十分に行われているのかに危惧がある。政治団体の代表者と事務担当者の間にどれだけの支配・従属関係があったのか、これが一番の問題である。毎朝小沢邸で打ち合わせが行われ、重要事項については必ず報告することになっていた、という程度では弱い。
小沢氏の指示には背けない、背くと大変なペナルティがある、現実に小沢氏の指示に背いて大変なペナルティを受けた事例がある、などといったこまごまとした事実を積み重ねないと共謀共同正犯関係が成立するほどの支配・従属関係を認めることは難しい。
指定弁護士は、本件では闇政治献金の主張立証は不要であると判断して水谷建設から小沢氏側に提供されたという5000万円には一切言及しない方針を採ったと報道されているが、本当にそれで良かったのか。捜査段階で水谷建設関係の参考人から5000万円の提供の事実が証言されていたのであれば、少なくとも冒頭陳述ではこのことも立証予定事実に含むべきではなかったか。これが、私の疑問である。
法廷に顕出されている証拠を見ればそんなことは考える必要もないほど証拠が揃っている、ということかも知れないが、法律実務家としてはやはり気になる。そんなに簡単なことではないはずだが、というのが私の正直な感想である。
一方、被告弁護団の防御方法にも懸念がある。被告弁護団は、一時的な立替金は政治資金収支報告書に記載すべき義務がない、という法律論を盾にして、具体的には捜査段階の証人の供述調書の任意性を否定するという作戦のようだが、もっと積極的に具体的事実関係についての主張立証に力を注ぐべきではないか。いくら検察側証人の証言を反対尋問で切り返そうとしても大体は不首尾で終わるのが通例なのに、本当に大丈夫なのかしら。これが、私の疑問である。
石川被告は先日の法廷で、所有権移転登記の期日を翌年回しにすることについて、前任の秘書である樋高剛衆議院議員の示唆に基づいて行ったと爆弾証言をした。それまでは自分の判断でやったと述べていたはずなので、被告弁護側としては当然樋高議員の証人申請をしなければ石川証言の補強が出来ないはずだが、未だに樋高氏の証人尋問の話が出てこない。もし、新たな証人申請がないのだとしたら、被告弁護側はずいぶん消極的だなあということになる。
こういうことは、被告弁護側から積極的に立証すべき事柄である。樋高氏を証人として呼び出すことを怖れているのかしら、ということにもなる。あくまで小沢裁判ウォッチャーとしての発言なので当を得ていないところもあろうかと思うが、これまでのところは、当たらずと言えど遠からず、ということだった。小沢裁判を読み解くための一つのヒントとして受け止めていただければ幸いである。
なお、昨年の2月12日に私は、共謀の立証の問題について言及していた。ブログのタイトルは「起訴相当の議決を求める申立て」となっているが、中身は共謀の立証の在り方についての議論である。今読み直しても十分通用する内容だと思うので、皆さんにご紹介しておく。
参考 2010年2月12日ブログ記事「起訴相当の議決を求める申立て」
「有志の方々が検察審査会に対して起訴相当の議決を求める申立てをされたようだ。こういう政治的な臭いが強い事件について自分の名前を出すことは一般に躊躇するものだが、こういう風に正式に申立てをしてもらうと、私たち動くに動けないものは助かる。
これでどうにか事件の全容を私たちが知る手がかりが見えた。これまでの密室での取調べが、少なくとも検察審査会にはオープンになる。どこまで捜査が進んだのか、どれだけ証拠が集まっているのかが分かるようになる。
後何をやればいいのか、は難しい判断だが、大勢の人達が集まってあれやこれや議論を重ねていけば、検察庁の不起訴処分をそのまま受け容れるべきかどうかの判断が付く。どうにも釈然としなかったのは、何のためにこんな偽装工作をしたのか、ということだった。石川議員が述べているという、小沢先生が沢山お金を持っているということが知られると困ったことになると思ったから、という説明が、今ようやく腑に落ちてきた。
小沢氏は、自分の資産公開では一円も預貯金がないということで押し通してきた人のようだ。その小沢氏に数億円もの現金がある、ということは知られたくない個人の秘密。そう、石川議員が思い込んでいたとしてもおかしくない。単純にお金があることを隠そうとした、ということでも不実記載の十分な理由になる。不正な金であったかどうかは、とりあえずさておいて、真実を隠そうとしたことだけは間違いない。真実を隠す、ということが誰の判断で行われたか、ということになると、当然小沢事務所の責任者である大久保秘書の名前が挙がる。
4億円の現金を小沢氏が用意した、ということだから、小沢氏がこの現金の所在をオープンにすることを承諾していない限り、小沢氏の意向を受けて隠蔽を続けた、ということになる。明示の共謀なのか暗黙の共謀なのかは今の段階ではなんとも言えないが、4億円の現金の存在を小沢氏が隠し通しておきたかったことだけは、その後の小沢氏の偽装工作で分かる。その証拠が、平成19年2月の記者会見の直前に作成されたという平成17年1月7日付の確認書であり、その記者会見における小沢氏の弁明である。
それでは、小沢氏の現金4億円を使って陸山会が世田谷の土地を購入したという事実を隠そうという行為は、何らかの違法行為になるか。これは、ならない。おかしな行為であり、政治家の政治活動や財産取得についての公開原則に反する行為ではあるが、それだけでは違法行為にはならない。違法行為として罪に問われるのは、政治資金規正法に基く収支報告書の不実記載だけ。
そういう意味から言うと、不実記載の実行者である石川議員や後任の経理担当者の池田元秘書が起訴されたのは仕方がないところ。
大久保秘書の起訴も、会計責任者である以上止むを得ないところである。しかし、この事件の違法性は、不実記載という形式にあるのではなく、小沢氏の4億円の現金を使って不動産を取得したのにこれを隠蔽した、というところにあることを考えると、不実記載に至った過程におけるそれぞれの段階における具体的行為についての意思の疎通、すなわち共謀が問題にされなければならない。
小沢氏の4億円の現金を使っての取引に関わらず、銀行からの借り入れにすることについて小沢氏の了承はあったようだ。
だから、第一段階での意思の疎通はあったと見るのが相当だ。所有権移転登記を実際の売買とは異なる日にすることについても、小沢氏は了解したようだ。
これで、第二段階での意思疎通もあったことになる。平成17年に提出する政治資金収支報告書について、小沢氏は石川議員から概要報告を受け、提出を了承したようだ。政治資金収支報告書上は、平成17年の不動産取得ということになるから、平成16年分の政治資金収支報告書にはこの不動産取得に関する事項を記載しないことを小沢氏が了承したことになるのは自然である。
個別の事項についてどのように指示を与え、あるいは了解を与えたか、ということは問題にはなり得るが、実際の取引経過を示さない政治資金収支報告書になることを小沢氏が知っていたとしたら、それで不実記載の共謀だと言われても反論は出来ないところである。これが第三段階での意思疎通である。
このように考えていくと、検察審査会の結論は小沢氏には相当厳しいものになる可能性が高い。起訴相当かどうかはともかく、不起訴不当ぐらいにはなりそうだ。石川議員は民主党を離党したが、残念ながらまだ何らの情状も作っていない。裁判所としては情状酌量したい事案であるが、今のままでは情状酌量の余地はない。さて、こんな状況の中で石川議員の弁護団は誰の利益を守ろうとしているのだろうか。」
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK121掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。