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TPP(環太平洋連携協定)交渉参加の是非で、日本の国論が割れている。
米国のTPP推進の狙いは、(1)輸出拡大で疲弊した国内経済を盛り返す事、(2)中国を囲い込み、覇権拡大を牽制する事の2つである。
前者は主に経済界、後者は主に国務省・国防総省からの要求であり、米国の国家意志の中に両者が同居している。
これらを受け、TPPに対して日本が取るべき態度は以下の3点に集約される。
●10年間掛けて関税ゼロ化を進める事は、原則として受け入れてよい。
●しかしながら、「食糧自給権」を確立して基礎的食糧は自由化から除外すべきである。
●非関税障壁全廃は受け入れられず、選択的参加事項とすべきである。
◆食糧自給権と非関税障壁◆
既に発効・運用開始し、参加表明国間でも交渉が進んでいるTPPに対して上記の事を受け入れさせる事は甚だ困難であるが、受け入れられないのなら日本はTPPには参加せず、米国等との貿易自由化については別の枠組みで交渉すべきである。
経済界を中心とした米国の狙いの一つである輸出拡大で疲弊した国内経済を盛り返す事については、まともに付き合っていれば日本の国内はガタガタにされてしまう。
農業については、いわゆる商品作物については、激変緩和措置を取った上で完全自由化して構わないし、それにより国際競争によって残るべきものが残るだろう。
しかし、米などのカロリーベースでの食糧自給率を支える農作物は戦略物資であり、平時の生産量+備蓄+緊急時のゴルフ場等の農地転用によって極論すれば最低5年間鎖国しても自給出来る体制が必要だ。
それによって、日本の平時の外交上のバーゲニングパワーともなる。
これに向け、国際法として「食糧自給権」を確立して、基礎的食糧を定義して自由化から除外すべきである。
これについて、関税は撤廃して所得補償で対処しようと言う考えがあるが、関税は輸出国の負担になるが、所得補償は輸入国が税金で賄う事になるので、極力関税と輸入量制限で対処した方がよい。
また、もちろん国内農業の効率を上げ、生産コストを下げる必要があるが、輸入自由化とは切り離し、株式会社の農業参入、所得補償の大規模農家シフト、農地相続税優遇策の兼業農家への縮小、宅地・商業地転用時の譲渡所得税の課税強化で農地集約により別途行うべきだ。
非関税障壁は、先端医薬品の認可等、撤廃すべきものも数多い。
また、電波利用権の入札化や、発送電分離等、国内的には一刻も早く既得権破壊を進めて行くべき分野は数多いが、これらは総合的な国益を考えれば外資規制をすべき分野でもある。
このように非関税障壁は、単なる関税撤廃とは違い、その国の社会構造を左右する高度に国家主権に属するものであり、分野毎に一つ一つ丁寧に守るべきものと開放すべきものを仕分けするべきで、現在のTPPの「全ての非関税障壁の撤廃・自由化」の理念は受け入れるべきではない。
◆対中包囲網と国益◆
国防上の話をすれば、昨年の尖閣諸島沖の漁船衝突事件を見ても、中国の太平洋への覇権拡大の意志は明らかであり、中国は日本にとって、言わば「潜在的仮想敵国」と見なしてよく、現下の状況に於いて日本には米国との同盟強化は必要条件である。
(更に「敵の敵は味方」という外交上の黄金律からすれば、ロシア、インド、韓国とも今より強固な関係を結ぶべきだ)
話をTTPに戻せば、逆に言えば対中戦略としては、TPPは対中国と対米国及びその同盟国との関係を差別化して、中国を囲い込む事が出来ればそれでよく、日米双方の国益に適いそれ以上の自由化は不要であり、国務省・国防総省を満足させる事は可能である。
現在、ギリシャ危機によってEUがガタガタになっている。
今更だが、ギリシャがユーロに参加しなければ、ギリシャ、独仏ともに幸せだったのではないか?
貿易自由化の問題と通貨統合の問題は必ずしも同じではないが、筆者には国民の気質と歴史と文化によって成り立っている個々の国家を機械的に統一的な枠組みに押し込めるのは机上の空論である事の査証の一旦と見える。
TTPについては、拙速な参加表明は避け、今は静観すべき時だ。
日本の為政者には、堂々主張を掲げつつ、長期的な国益の追求を目指し国際情勢も踏まえた戦略的な立ち振る舞いが求められる。
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