http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/730.html
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TPPの最大の問題点は「拙速」にありー急いてはイニシアチブを取れない
http://amesei.exblog.jp/14889419/
2011年 11月 05日 :(ジャパン・ハンドラーズと国際金融情報)
アルルの男・ヒロシです。
本日11月5日は午後から有楽町駅前で「TPPを考える国民会議」(宇沢弘文代表)という団体が主催するTPP反対集会に出かけてきました。
集会にはTPP反対派の国会議員である、民主党の山田正彦前農水大臣、小林興起衆議院議員、首藤信彦衆議院議員、自民党の山田俊男参院議員、新党日本の田中康夫衆議院議員らが参加。著名人では国民経済学派の経済史学者である中野剛志・京都大学准教授(経産官僚)、孫崎享氏、宮台真司氏らの知識人も参加。
有楽町駅周辺は、農業団体のノボリから右翼民族派の日の丸まではためく。田中康夫氏が言っておられたが、「TPPへの拙速な交渉参加は右派、左派のイデオロギーを問わずに重要な問題」ということだと私も思う。
このTPPに関しては私もだいぶ前から著書の『日本再占領』やブログなどで「アメリカの太平洋地域の取り込み・囲い込み戦略」だと指摘してきた。アメリカが太平洋経済圏を視野に入れていたのは戦前からのことであり、太平洋問題調査会(IPR)などの金融エリートと知的エリートの結社もホノルルを拠点にしたアジア太平洋コミュニティのアメリカ主導での実現を戦前から模索してきた(戦前に日本の政府が行った金解禁のムードを作ったのもこのIPRの京都会議だった。この会議は1929年のウォール街大暴落に前後して開催されており、アメリカ財界の狙いは明らかだった。この金解禁によって日本国外に金地金が流出した)。
アメリカが覇権国として「は」、衰退しつつある今、最後のチャンスということでアメリカ主導の太平洋を横断する経済圏を構築し、中国を牽制する、然る後に、中国市場への圧力を掛けるというのがTPP交渉の戦略的な狙い。そのためには、米国のパワーの源である、多国籍企業の進出を助け、経済圏構築と米国の覇権回復を行おうというわけだ。
TPPに関しては、アメリカが従来、東南アジアなど4カ国で行なっていた自由貿易圏のP4の構想に途中から参入するという、「イニシアチブ」を確保することが重要であった。そのTPPに参加することはアメリカの戦略に乗ることでもある。
しかも、十分に議論した上で交渉参加するというのであればまだしも、今月12日のハワイでのAPECに間に合わせるべく、無理矢理に論点整理を急いで行なって、アメリカの歓心を買うために交渉参加を表明するというスケジュールを野田政権は描いていた。このことは毎日新聞によって明らかになった。民主党のプロジェクトチームでの内部文書を作成していた、藤末健三参議院議員(あまり地頭がよさそうにない元通産官僚)が毎日に内容が漏れたことの責任をとってPTの職を辞任している。
(貼り付け開始)
民主TPP事務局次長が辞任
11月1日 0時50分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111101/t10013640901000.html
TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉参加の是非を検討する民主党の作業チームで、事務局次長を務める藤末健三参議院議員は、みずからが作成した交渉に参加した場合の利点などを記した文書が外部に流出した責任を取りたいとして、事務局次長を辞任しました。
これは、作業チームの座長を務める鉢呂前経済産業大臣らが、先月31日に開かれた総会などで明らかにしたものです。それによりますと、作業チームの事務局次長を務める藤末参議院議員は、党内論議の参考にするため、TPP交渉に参加した場合の利点などを記した文書を作成しましたが、この文書が一部の報道機関に政府の内部文書として報じられました。これを受けて藤末氏は、意見集約に向けて党内論議が微妙な時期を迎えるなか、混乱を招いた責任を取りたいとして、事務局次長を辞任したいと申し出て、先月31日の作業チームの役員会で了承されました。民主党内では、TPPの交渉参加の是非を巡って、意見対立が激しさを増しており、藤末氏の文書問題で交渉参加に慎重な議員がさらに反発を強めることも予想されます。
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TPP:政府のTPPに関する内部文書(要旨)
▽11月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)で交渉参加表明すべき理由
・米国がAPECで政権浮揚につながる大きな成果を表明するのは難しい。日本が参加表明できれば、米国が最も評価するタイミング。これを逃すと米国が歓迎するタイミングがなくなる
・交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される
・11月までに交渉参加を表明できなければ、交渉参加に関心なしとみなされ、重要情報の入手が困難になる
・韓国が近々TPP交渉に参加する可能性。先に交渉メンバーとなった韓国は日本の参加を認めない可能性すらある
▽11月に交渉参加を決断できない場合
・マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる
・政府の「食と農林漁業の再生実現会議」は事実上、TPP交渉参加を前提としている。見送れば外務、経済産業両省は農業再生に非協力になる
・EU(欧州連合)から足元を見られ、注文ばかり付けられる。中国にも高いレベルの自由化を要求できず、中韓FTA(自由貿易協定)だけ進む可能性もある
▽選挙との関係
・衆院解散がなければ13年夏まで国政選挙はない。大きな選挙がないタイミングで参加を表明できれば、交渉に参加しても劇的な影響は発生しない。交渉参加を延期すればするほど選挙が近づき、決断は下しにくくなる
▽落としどころ
・実際の交渉参加は12年3月以降。「交渉参加すべきでない」との結論に至れば、参加を取り消せば良い。(取り消しは民主)党が提言し、政府は「重く受け止める」とすべきだ
・参加表明の際には「TPP交渉の最大の受益者は農業」としっかり言うべきだ。交渉参加は農業強化策に政府が明確にコミットすることの表明。予算も付けていくことになる
毎日新聞 2011年10月28日 東京朝刊
(貼りつけ終わり)
このような交渉参加への強い意欲は何も日本政府だけの意向ではない。前回見たように、アメリカのCSISの報告書でも日本のTPP交渉参加を促している。また、日米経済協議会でもTPPと震災復興を強く結びつけた提言を行なっている。
(貼り付け開始)
TPP参加で震災復興促進を 日米経済協議会が共同声明
産経ニュース 2011.7.29 18:21
日米経済協議会は29日、震災復興を進めるため日本に環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の早期参加を求める共同声明を日米同時に発表した。日本がTPP交渉に参加すれば、市場が開かれていることを示すシグナルになり、震災の風評被害を払拭(ふっしょく)でき、中長期的には国内の投資や事業が拡大し雇用拡大にも役立つとしている。
声明は遅くとも今年11月にハワイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)までに参加を表明すべきだとした。同時に米国企業が日本に参入しやすくなるよう、特区の創設を急ぐべきだと求めている。
同協議会は毎年日本と米国で交互に開かれている日米財界人会議の事務局で、日本側から約80、米国側から約30の団体・企業が参加している。共同声明の発表は極めて異例。
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/110729/biz11072918230025-n1.htm
(貼りつけ終わり)
この他、最近GIGAZINEというニュース・メディアがアメリカの貿易ロビー団体(NATIONAL FOREIGN TRADE COUNCIL)の情報を掲載している。アメリカはオバマ大統領が貿易を倍増にすることを明言して大統領選挙を戦っている。
TPPの所管であるUSTR(米通商代表部)にも、アメリカの貿易にとってTPPを始めとする自由貿易政策がいかに有効であるかが解説されている。アメリカのメディアは金融関連、外交安保関連のニュースを中心に報じてTPPには関心がないと言われているが、時々、アメリカの主要なシンクタンクの研究員たちがTPPを推進せよという論説を寄稿している。例えば、アメリカの有力な経済シンクタンクであるIIE(国際経済研究所)もドル安と輸出増大をテコに米国経済回復を主張している。
以下のGIGAZINEの記事は必読である。オバマ政権の国家経済会議であるスパーリング議長に、米国貿易ロビー団体である全国貿易協議会の所属企業が提出した提言書が掲載されている。そこには、USTRも同じく関心を持っている、「市場アクセス」、「知的所有権」、「直接投資」、「貿易手順の簡素化」、「規制調和(一致)」、「競争政策」といった項目での要求が掲げられている。つまり政府機関であるUSTRと全国貿易協議会が国家ぐるみでTPPを推進してきたということだ。メディアが報じていないのは国内がそれどころではないからで、水面下で着々と進んでいるというのが正しい見方だろう。
2011年11月04日 22時16分03秒
アメリカで「TPP」を推進して米政府を操る黒幕たちの正体
http://gigazine.net/news/20111104_tpp_mastermind/
TPP交渉に関して民主党の藤末議員らが作成した内部文書には「交渉参加時期を延ばせば、日本は原加盟国になれず、ルールづくりに参加できない。出来上がった協定に参加すると、原加盟国から徹底的な市場開放を要求される」という項目があるが、この「APECまでに交渉参加すればルール作りに参加できる」というのも疑わしいことがメディア報道でわかってきた。
(貼り付け開始)
TPP:米との事前協議必要 藤村官房長官、交渉で認識
毎日新聞:2011年11月3日
藤村修官房長官は2日の記者会見で、日本が環太平洋パートナーシップ協定(TPP)への交渉参加を表明した場合も、実際の参加までには米国政府との事前協議が必要になるとの認識を示した。事前協議後には約90日かかる米国議会の手続きがあり、藤村氏は実際の交渉参加には「90日プラスアルファ。そのアルファは未知数」と語った。
交渉参加には、参加9カ国の承認が必要。承認手続きは各国それぞれだが、米国の場合、議会の承認が必要だ。米政府が米議会に説明するため、日米両政府で事前協議が求められるものとみられる。
日米の事前協議に時間がかかれば日本がTPPのルール作りに参加できる時間がなくなるとの懸念に対して、藤村氏は「(9カ国の)先日の事前交渉で、もう1年(かかる)という見通しが立てられた。来年も5回ぐらい参加国会議が行われる。終わってから(日本の交渉参加が認められる)という話にはならない」と否定した。【小山由宇】
http://mainichi.jp/select/biz/news/20111103ddm008020032000c.html
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官房長官 事前協議内容は米が検討
11月4日 12時52分
藤村官房長官は閣議のあとの記者会見で、日本がTPP=環太平洋パートナーシップ協定への交渉参加を表明した場合に行われる、アメリカ政府とアメリカ議会との事前協議について、具体的な協議内容は、アメリカ側が検討する立場にあるという認識を示しました。
TPPへの交渉に参加するためには、現在交渉中の9カ国の了承を得る必要があり、このうちアメリカについては、政府と議会が連絡を取り合う事前協議を行ったうえで、議会の承認が必要となります。藤村官房長官は記者会見で、日本がTPPへの交渉参加を表明した場合の事前協議の内容について「アメリカ政府や議会のことであって、われわれがどういう内容かということを想定することではない」と述べ、アメリカ政府や議会側が検討する立場にあるという認識を示しました。一方、鹿野農林水産大臣は閣議のあとの記者会見で「いろいろな分野が関わってくる可能性があり、生活そのものにも影響する。そういう意味では、できるだけ情報を開示していくべきだ」と述べ、アメリカ政府や議会の動きについて、情報を積極的に開示する必要があるという認識を示しました。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20111104/t10013730251000.html
(貼りつけ終わり)
このような「米国政府との事前協議」という問題がある。つまり「協議に参加できるかを米国が承認する」というハードルがある。すでにTPPに関しては9カ国による交渉が何度も行われている。最終合意にはあと1年かかるということが上の記事には書かれている。交渉が進んでいる協議に途中参加していくわけだから、当然ながら対等な条件ではありえない。
しかも米国はUSTRや貿易ロビー団体を始めとして明確な戦略目標、獲得目標を持っている。そうなると、週末に急いで論点整理を行う民主党政権よりも相当に有利な立ち位置にあるわけだ。アメリカは数年前の初期の段階でTPPに加わることによって「イニシアチブ」を得た。日本はその不利な条件な中での交渉を強いられる。アメリカが、うまい具合に事前協議の段階ではねつけてくれれば助かるが、そう甘い話ではなく、知日派のジャパン・ロビーと連携しながら、米財界の戦略目標実現のために日本を引きずり込むだろう。アメリカ国内の知日派たちは日本の受け皿となる国会議員や官僚たちとの「人脈」を駆使し、巧みになだめすかして、騙していくに違いないのだ。この世の中、騙される方が悪いのだ。
アメリカの議会関係者がTPP交渉において、農業製品の関税だけではなく、もっと幅広い要求を掲げていることは、今朝の東京新聞にも出ている。
(貼り付け開始)
TPP内部文書 米「保険も交渉テーマ」 議会関係者
東京新聞:2011年11月5日 朝刊
環太平洋連携協定(TPP)交渉について通商問題を担当する米議会関係者が、日本の参加には「保険などの非関税障壁(関税以外の市場参入規制)が重要な問題となる」と述べていたことが政府の内部文書で分かった。米議会関係者は、日本郵政グループのかんぽ生命保険が販売する簡易保険や共済などの規制改革も交渉テーマにすべきだ、との見解を示したとみられる。
政府は与党・民主党に対しては、簡易保険などがテーマとなる可能性に触れつつも「現在の九カ国間の交渉では議論の対象外」との説明にとどめていた。明らかになった米議会関係者の発言は、日本がTPP交渉に参加すれば保険分野だけでなく、幅広い分野での規制改革がテーマに加わる可能性が高いことを示した内容。今後は情報開示が不十分なまま政府がTPP参加の議論を進めることへの批判が強まりそうだ。
内部文書によると、米議会関係者は、日本の参加には米国が以前から求めている関税以外の規制改革が重要と明言。「牛肉などの農産物だけでなく、保険などの分野で米国の懸念に対処すれば、交渉参加への支持が増す」と述べている。
米政府は一九九〇年代以降、自国企業の日本市場参入を後押しするため「年次改革要望書」「経済調和対話」などの形で、日本に対して多岐にわたる要求を突きつけてきた。 米通商代表部(USTR)が今年三月に公表した他国の非関税障壁に関する報告書
規制に守られている簡保や共済には、民間の保険会社より契約者に有利な条件の商品もある。簡保や共済の関係者には規制改革で、資金力がある米国企業などに顧客が奪われることを懸念する見方もある。
米政府は簡保などと同様、残留農薬といった食品安全基準、電気通信、法曹、医療、教育、公共事業などでも日本の過剰な規制を指摘している。
内部文書は交渉内容などに関する情報収集に当たる外務省職員らが今秋、交渉中の九カ国の担当者から聞き取った内容をまとめた。
(貼りつけ終わり)
このような内部事情は、これまでの日米構造協議、年次改革要望書、そして菅政権になって復活した「要望書」というべき「日米経済調和対話」やUSTRの対日非関税障壁リストなどをみれば、それは容易に予想されることである。これはかなり複雑な交渉になる。
なぜなら、TPP交渉そのものは「多国間協議」だが、事前協議は「二国間」だ。多国間だから二国間よりも日本はやりやすいという意見もある。しかし、どういう抜け穴があるか分からない。ここで過大な条件を要求された場合、日本政府には「引き返す勇気」があるのか。
日経新聞を中心とするマスコミと財界が一斉に「ここで引くとは何事だ。日本は鎖国するのか」というキャンペーンを行うだろうが、それでも退くことができるのか。
大人の知恵としては「急いては事を仕損じる」ということである。さらに言えば、民主党政権ではすでにそのような拙速により大きな政策での失敗をした経験がある。それは言うまでもなく普天間交渉である。
たかが海兵隊の一基地の移転交渉のやり直しだけで内閣が崩壊した。普天間交渉は鳩山政権崩壊の後、米国の有力な議会関係者からも「嘉手納基地統合案」や「辺野古移設は不可能であるから日米政府は交渉をやり直せ」という声が出てきている。辺野古移設案をゴリ押ししたのは自民党政権時代から、知日派として日米交渉を取り仕切ってきた米国の国務省や国防総省の外交官僚たちであり、日本の外務省の北米局官僚たちである。それはすべて私の『日本再占領』にも書いたし、ウィキリークスの外交公電にも書かれている。
普天間交渉は日本側のミスの連続だった。まず、政権交代直前に、アメリカ側が鳩山の雑誌・新聞への寄稿を「反米」だと一方的に騒ぐことで、交渉問題を重大な政策課題に仕立て上げることで、イニシアチブを取った。先に交渉相手にイニシアチブを取られたことに「失敗の本質」がある。
政権交代後まもなくということもあり、新政権側に十分な交渉体制が整っていなかった。そればかりではなく、前原誠司などのアメリカべったりの政治家たちが、アメリカ大使館と内通して、移設交渉をつぶしに掛かっていた。だから、鳩山政権での混乱は一気に加速された。鳩山自身の責任もあるが、鳩山と対立した前原誠司らの方の罪が重大である。
このような米国側と内通する政治家の存在をたどると、やはり中曽根康弘政権にまで遡れる。それまではアメリカとの協調と言っても、従属的なものではなかった。吉田茂のような主体的にアメリカとの連携を選びとった政治家もいた。ところが、田中角栄がロッキード事件でやられてしまって以後、アメリカに対して楯突くことはタブーになった。
そして、政治家の方も「アメリカの外圧」を頼みにするようになった。今日の有楽町の演説会では宮台真司氏が、かつて中曽根のブレーンだった佐藤誠三郎教授とのエピソードを披露していた。これが非常に興味深い。
佐藤誠三郎は「この国を変えようと思えば、アメリカに外圧をかけてもらえばいい。アメリカが日本の政治を合理的にしてくれるんだ」と言ったという。宮台教授はずっとそれが頭に残っていたそうだ。そして、今回、TPPの賛成派の議員たちが、同じように「アメリカの外圧待ち」の発言をしていたのを聞いたときに、宮台教授はTPP反対派に回ることを決意した。日本の政治をアメリカが合理的にするというのはアメリカの合理性を日本に適用するということである。それが九〇年代の日本で起こった「合理的選択革命」だった。要するにアメリカが日本をコントロールしやすいように合理性の傾向・選好を作り変えるということだった。
雑誌『レヴァイアサン』などに集まっていた、加藤寛の弟子筋に当たる公共選択学者は、表向きの記述モデル(過去の状況を説明する)としての合理的選択論という「顕教」のあり方以外に、アメリカの戦略ツールというそのような「密教」(裏の顔)があったことを知っているはずである。合理的選択も、それと対立する側の文化人類学もどちらも覇権国の支配者にとっては権力のためのツールに過ぎなかった。これをチャルマーズ・ジョンソン教授がかつて、米雑誌「ナショナル・インタレスト」で明らかにした。
「イニシアチブ」と「合理的選択」。これがアメリカの戦略の重要な部分である。まず、自らが戦略構想を発表するなどしてイニシアチブを取り、その戦略実現のための合理性に基づいて、ソフトパワーによる宣伝を行う。これがアメリカの強みであり、日本にとっての弱みでもある。そのような状況があって、今になって吉良州司(きらしゅうじ)のような「日本が主権を主張するのは五〇年速い」などというおかしな政治家が出てくる。
そういう戦略的な蓄積があるアメリカに対して日本が「誠意」で交渉に望んでも勝てるわけがない。
中野剛志准教授は、今年は小村寿太郎外相が関税自主権(=国家主権)を回復してからちょうど百年であると話していた。関税撤廃は関税自由化とは違う。金融政策が可能なのは金利の上げ下げが可能だからである。同じように関税政策もいたずらに撤廃するのではなく、関税の自由化があるからこそ経済状況に応じて上げ下げができる。できるだけ、大恐慌時代の高関税政策の帰結を考えれば関税が低いのが望ましいのはいうまでもないことだが、一律に撤廃することには慎重さが求められる。
野田首相のカンヌでの消費税と総選挙の発言も問題がある。これについては明日書きたい。
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