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≪関岡英之 著『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 より抜粋≫
Roentgenium:関岡英之氏の著作『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 より第2章「最も危険な『投資』と『労働』」・第4章「第2のターゲット 医療と薬品」・第5章「米国の戦略を学ぶべき日本」を抜粋、転載。
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〔関岡英之 著『国家の存亡―「平成の開国」が日本を滅ぼす』 第2章 最も危険な「投資」と「労働」 より P.74−P.107〕
TPP交渉の為に設置された24の作業部会の内、オリジナル4カ国(シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド)の協定本文には存在せず、新たに追加された分野として「サービス(金融)」「投資」「労働」が挙げられる。そもそもオリジナル4カ国に24もの作業部会を運営するマンパワーやノウハウが完備しているとは想像し難い。
その一方で、米国通商代表部の部内には、この2分野を含む全ての作業部会に対応する担当官が任命されていることからも、現在のTPP交渉が完全に米国主導であることは明白である。ならば、新たに追加された「サービス(金融)」「投資」「労働」は、米国が取り分け重視している分野だと考えられる。
「サービス(金融)」分野については第1章で既に触れた。「投資」は、TPP24分野の中で最も危険な要素を含んでいるが、我が国では殆んど議論にさえなっていない。本章では、TPP論議の盲点とも言える「投資」分野とこれに関連する「労働」分野について、余り知られていない問題性を明らかにしたい。
■各国から拒否された米国流投資ルール
米国のグローバル化戦略は1980年代後半、ガットのウルグアイ・ラウンドで大きな転換を遂げた。ケネディ・ラウンドや東京ラウンド時代の物品の完全引下げ構成中心から、金融・情報・通信といったサービス・ソフトウェア産業や商標・特許といった知的財産権など、米国が比較優位を持つ分野の先行者利得の維持・強化に重点をシフトした。
更に1990年代のクリントン政権時代になると、米国は投資銀行による直接金融(株式や債券などの証券ビジネス)や直接投資(海外での企業買収など)といった資本取引のグローバル化に重点を置く金融立国戦略を鮮明にし、各国に資本移動の自由化や国内規制の撤廃を迫った。「貿易の自由化」から「投資の自由化」への転換である。
≪≪米国は先ず、NAFTA(北米自由貿易協定)に投資分野全般に関する米国発の包括的なルールを盛り込むことを目論み、圧倒的な経済力を背景に猛烈な交渉力を発揮して、カナダとメキシコにそれを認めさせることに成功した。
次に米国は圧倒的な金融・資本力によって自国の企業、ひいては産業経済全般が米国に支配されるのではないかという各国の危惧を招いた為、WTO交渉の場においては米国の戦略は部分的成功にとどまった。
1995年に発足したWTOに付属してTRIM(貿易に関連する投資措置に関する協定)が合意されたが、この投資協定は対象範囲が貿易関連のみに限定され、米国の投資銀行業界などが最も関心を寄せる資本取引は対象外とされた(現在のドーハ・ラウンドにおいても投資分野は協議の対象から除外されたままである)。
しかし米国は諦めず、視点を変えて先進国レベルで米国流の投資ルールをグローバル化しようと考え、1995年からOECDの場でMAI(多国間投資協定)の成立を画策したが、2998年に米国の意図に不審を抱いたフランスが協議から離脱した為、MAI構想も失敗に終わった。
そこで米国は、今度はFTAA(米州自由貿易地域)を呼び掛けることによって、米国ルールのグローバル化を南アメリカ大陸に拡大しようとしたが、2003年、ブラジルなどが強く反発して失敗した。米国による投資ルールのグローバル化戦略は、NAFTA以外は失敗の歴史であった。
今回、TPPのオリジナルP4協定には存在しない投資条項を米国が持ち込んだのは、こうした執念深い目論見の一環なのだ。それはWTOでも、OECDでも、FTAAでも、多くの国々に警戒され、拒否された危険なものなのである。
TPP9カ国の内、米国以外は何れも資本市場の規模が取るに足らない小国ばかりである。投資分野を持ち込んだ米国の主たる標的は日本である。
米国による投資ルールのグローバル化がNAFTA(北米自由貿易協定)を超えてアジア太平洋に拡散するかどうかは、ひとえに日本の対応に掛かっているのだ。そうした意味で、日本の対応は世界から注視されている。米国のTPP戦略を理解する上では、こうした歴史的経緯や世界的視野を踏まえておく必要がある。≫≫
■ハゲタカ外資を拒否出来なくなる
≪≪米国がグローバル化しようとしてきた投資ルールは、何故各国から拒否されたのか。
先ずは「内国民待遇」という原則の問題が挙げられる。内国民待遇とは「内外無差別の原則」とも言い、外資を国内企業と同等に扱わなくてはならないということだ。つまり米国の狙いは、外資に関する寄生を撤廃させて、相手国の国内において米国系の企業やファンドが自由に利益を追求出来るようにさせる、ということだ。
巨大な時価総額を誇り、圧倒的な資本力を持つ米国の多国籍企業の活動を自由放任すれば、自国の企業は軒並み米国資本の傘下に支配されてしまうと各国が警戒したのは当然だ。
米国資本の全てがハゲタカ外資だというわけではないが、そもそも米国が投資のグローバル化を推進しているのは、利益率の高い投資対象を世界中で物色する為に他ならない。
日本の企業を買収するのも、日本に惚れ込んでいるわけではなく日本に定着するつもりもない。他国に魅力的な市場を見つければ、いつでも参加の企業を第3者に転売して出て行ってしまう。後はどうなろうと責任は負わない。転売する先は中国資本やロシア資本かも知れないが、買われる側は株主を選べない。
また、米国資本に支配された企業には、米国流のコーポレートガバナンス、要するに「株主資本主義」が持ち込まれ、従業員や取引先などのステークスホルダーよりも株主の利益を最大限優先する経営を求められる。リストラや下請け切りで利益を追求し、雇用や設備投資よりも株主への配当を優先させるような経営風土が蔓延する。
こうした様々な弊害から国民生活を守る為に、世界の多くの国々は外貨に対して内国民待遇を認めていないのだ。他でもない米国自身、自国の企業が外資に買収される立場になると途端に反発するのだから呆れてものが言えない。≫≫
かつてバブルの全盛期に日本の企業がハリウッドの映画会社を買収した時、米国人は「母親がカネで買われるようなものだ」「自由の女神がゴジラに襲われた」と感情的に激しく反発した。
近年では2005年に中国海洋石油(CNOOC)が米国の大手石油会社ユノカルを買収しようとした時、米国の議会が猛反対した為、買収は阻止された。また2008年の中国華為技術によるネットワーク機器会社スリーコムの買収と、2010年の曹妃甸(そうひでん)投資による通信機器会社エムコアの買収の際には、対米外国投資委員会(CFIUS)が買収を阻止している。
しかし日本では、米国流のグローバリズムにかぶれて、外資を規制することにむしろ反対するような政治家がいる。
2008年に外資ファンドが羽田空港の管理会社の株式を取得していることが発覚した為、当時の福田政権が法改正による外資規制を導入しようとした。いったん有事の際には空港は制空権に関わる最重要施設だから外国の関与を規制するのは当然であった。ところが、こともあろうに閣内から「外資にそっぽを向かれたら日本はお終いだ」という反対論が出て、規制は結局見送りになってしまった。
≪≪日本にも、半導体や特殊鋼など製造業の一部や、電気・通信、放送など公共性の高い業種への出資に関して、外資に事前届出を義務付ける規制があることはある(外国為替管理法)。だが、空港管理会社や資源開発会社など、多くの重要産業が審査の対象に含まれておらず、むしろ最低限の範囲しか規制されていないのが実情である。
将来、規制を拡大・強化する必要が出てきても、もしTPPの投資ルールとして米国が強く求める内国民待遇の原則が採択されると、新たな規制の導入が不可能になってしまう。日本の重要企業が外資に買収されるリスクに無防備で曝されることになる。≫≫
■最も危険なISD(投資家VS国家の紛争解決)条項
「投資」分野に関して、内国民待遇以外の論点としては、以下の3点がある。何れも聞きなれないことばかりだが、特に(2)と(3)はTPPに関わる諸問題の中でも最も危険とされる部分である。
(1)「特例措置」の履行要求の禁止条項
「特例措置」というのは、現地政府が外資企業に賦課(ふか)する義務のことで、原材料や部品に一定の比率で現地の国産品を使うことを義務付ける「ローカル・コンテント」が代表的である。
例えばリーマン・ショックをきっかけとする経済危機対策として2009年にオバマ大統領が打ち出した「米国再生・再投資法」のバイ・アメリカン条項が悪名高い。これは米国の公共事業に使用する資材の一部に米国製品の使用を義務付けるもので、あからさまな保護主義として国際的な非難を浴びている。
その他の「特例措置」としては、マレーシアのブミプトラ政策のように外資系企業の役員や従業員に一定の比率で現地人の採用を義務付けるもの、中国で横行している外資系企業に設立認可の見返りとして先端技術の開示や知的財産権の移転を要求するものなどがある。
「特例措置」の履行要求の禁止で困るのは日本ではなく、むしろ米国やマレーシアや、(TPP交渉には参加していないが)中国などの国々だ。TPP交渉の場で米国がどのような姿勢を打ち出して来るか、見ものである。
(2)「収用と補償」条項
≪≪これは次の「投資家VS紛争解決」と絡んで非常に危険なルールである。
「収用」とは、政府が民間企業を国有化したり、試算を強制的に接収したりすることを意味する。「補償」とは、外資が「収用」で被った損失の代償を求めることで、元々は産油国による油田国有化に対抗する為に米英によって編み出されたルールであった。
資源ナショナリズムの高潮を背景として、1951年にイランのモサデク政権が石油を国有化し、英国系メジャー(巨大石油資本)のアングロ・イラニアン社(現在のBP)が所有していた油田が「収用」されるという事件が起きた。英国と結託した米国は、CIAの秘密工作によってモサデク政権を転覆させた。これが1979年のイラン・イスラーム革命と、その後、現在迄続く米国とイランの敵対的関係の原点となった。
「収用と補償」ルールは、エネルギー資源の海外依存度が特に高い日本にとっても必要なルールとして支持出来るはずであった。ところが、米国が「間接収用」という新たな概念を持ち出してから、このルールは極めて危険なものに変質してしまった。
「間接収用」というのは、資産などが接収されたり、物理的な損害を受けたりしていない場合でも、現地国政府の法律や規制のせいで外資系企業の営利活動が制約された場合、収用と同等の措置と見なして損害賠償を請求するという、途方もない拡大解釈である。
日本国内では未だ殆んど一般に知られていないと思うが、海外では外資に悪影響を及ぼす政策は押し並(な)べて「収用」と見なされてしまう風潮が蔓延しつつあると言う。
こんなルールが日本に上陸すれば、ハゲタカ外資や投機ファンドを規制しようとすると「間接収用」だと非難されて規制撤回に追い込まれ、やりたい放題を野放しにせざるを得なくなる。≫≫
(3)「投資家VS国家の紛争解決」条項
≪≪「間接収用」で「被害」を受けた外資が、相手国政府に損害賠償を請求する具体的手段として用意されたのが、この「投資家VS国家の紛争解決」、通称ISD(Investor-State Dispute)条項である。
これにより、外資が国家を訴えることが出来るようになった。但し訴える場は、相手国の裁判所ではない。世界銀行傘下のICSID(国際投資紛争解決センター International Center for Settlement of Investment Disputes)などの国際仲裁委員会と称する場で、そこでは数名の仲裁人が判定を下す。
審理は一切非公開で、判定は強制力を持つが、不服の場合でも上訴することは出来ないという信じ難いほど無茶苦茶な制度である。
判定の基準は、被告とされた国家の政策の必然性や妥当性ではなく、「外資が損害を被ったか否か」というただ一点だ。しかもたまたま選ばれた仲裁人の主観に大きく左右され、類似した判例とは矛盾した判定が下されることもあり、結果は予見不可能だと言う(渡邊頼純監修, 外務省経済局EPA交渉チーム編著『解説FTA・EPA交渉』日本経済評論社 2007年刊行)。
ISD条項は、米国の提案によってNAFTAで初めて導入された。その後、米国が自国の投資ルールのグローバル化戦略を推し進めようとしてWTO、OECD、ETAAの場で多くの国々から反対され、尽(ことごと)く失敗した最大の理由が、このISD条項なのだ。
米国はしぶとく、これを2国間FTAに盛り込もうと画策してきた。米豪EPAではオーストラリアが断固拒否した為削除されたが、米韓FTAでは韓国はこれを呑んだ。さすがにこれは韓国国内でも最も熱い争点になったと言う。韓国の洪基彬氏の論考「投資家―国家の紛争制度と韓国の公共政策及び産業政策」(徐勝, 李康國 著『韓米FTAと韓国経済の危機―新自由主義下の日本への教訓』晃洋書房 2009年刊行)は非常に示唆に富む。
洪氏はISD条項の本質はアングロサクソン固有の法源、即ち、貴族達が王権を制限したマグナ・カルタ以来の英国のコモンローや、米国の合衆国憲法の修正第5条、修正第14条に明記された私的所有権絶対不可侵の思想に根ざしていると指摘する。
そして洪氏は、ISD条項は外資を主権国家と対等の地位に昇らせ、外資の利益の為に国家の立法行為や行政活動、つまり国家の主権行使を制限するものに他ならないと喝破している。
〔資料〕米韓FTA:自動車 紛争解決手続き(PDF、全35頁中12〜13頁)
http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000144/eu_korea.pdf
日本政府は未だ一度も外資から訴えられた経験は無いが、NAFTAでISD条項を受諾してしまったカナダは外資によって惨憺たる目に遭わされている。
ガソリン添加物MMT(神経性有毒物質)の使用を禁止したカナダ政府に対して、米国の燃料メーカーが3億5000万ドルの損害賠償を請求した為、カナダ政府が政経撤廃に追い込まれた例や、水の大量輸出を禁止したブリティッシュ・コロンビア州政府に対して、米国のエンジニアリング会社が4億ドルの損害賠償を請求した事例などが報告されている(市民フォーラム2001編『徹底討論WTO』現代企画室 2001年刊行)。
内国民待遇に抵触するような外資に対する直接的な資本規制は勿論、環境保護や有害物質の規制、食品や医薬品などの安全規制、消費者保護の為の行為規制、更には警察権や徴税権の行使でさえ、外資の利益に被害を齎す「間接収用」だと拡大解釈が可能である。
TPP交渉において、最も危険な「投資」分野の「収用と補償」条項及び「投資家VS国家の紛争解決」条項を断じて受諾してはならない。
受諾すれば、国民の生命や財産を守る為に真っ当な規制を行っている日本国政府が、理不尽な理由で外資に訴えられ、外国の仲裁人に「投資家の利益を害(そこな)った」という判定を下され、巨額の損害賠償を命じられる。賠償金の原資は国民の税金だ。≫≫
米国流の投資ルールはまさにとんでもないシロモノであり、WTO、OECD、FTAAの場で世界各国から反感を買ったのも蓋(けだ)し当然である。
■「日米投資イニシアティブ」とは?
≪≪米国の投資ルールのグローバル化戦略は、多国間交渉では失敗続きだったが、2国間ではかなりの成功を収めてきている。その相手は他でもない日本である。
1989年に、宇野宗佑総理とブッシュ(父)大統領(何れも当時。以下同様)との間で、日米構造協議という外交上の枠組みが合意された。米国の提案によるもので、日米両国が互いに相手国の内政問題に要望を出し合うという建前だったが、実態は、米国による内政干渉を「合法化」したもので、米国による日本改造プログラムと言うべきものだった。
日米構造協議は2年間の時限的措置だった為、これを継続するものとして1993年、宮澤喜一総理とビル・クリントン大統領の日米首脳会談で「日米経済包括協議」が合意された。その一環として「投資・企業間関係作業部会」(後に日米投資イニシアティブと改称)が設置された。
1998年10月26日にサンフランシスコで開催された「投資・企業間関係作業部会」において、米国は日本に対して「対日直接投資環境の改善に関する米国政府の提言」という文書を提示した。
〔資料〕対日直接投資環境の改善に関する米国政府の提言
http://japan2.usembassy.gov/txts/wwwt2276.txt
これは、米国の投資家やファンドによる日本企業の買収をやり易くする為の措置で、「米国政府は、日本政府が、特に、次に挙げる対日直接投資環境の改善に関する3つの主要事項に対する支援措置を講じることを要請する」として、「M&A」「労働」「土地」の3分野に関する18項目の要求が書き連ねられていた。≫≫
■小泉政権の日本企業叩き売り政策
≪≪米国政府は1998年に、「日本における資本生産性を向上させる為、より活発で効率の高いM&A市場を形成する」為として、次の7つの措置を取るよう要求していた。
(1)連結納税の導入
法人税を単体ではなく、赤字子会社を含むグループ全体の連結ベースで算出するようにせよということで、赤字のベンチャー企業などを傘下に買収している外資の節税が狙いである。小泉政権は2002年に法人税法を改正し、連結納税制度を導入した。
(2)株式持ち合いの解消
日本ではグループ企業同士や仕入先、販売先、取引金融機関などとの間で互いに株式を長期保有する慣行があった。これは「安定株主」と言って、乗っ取り屋などから会社を守り、長期的に安定した経営を維持する為の日本独特の知恵であった。
しかし外資の側からすれば、株式持ち合いは日本企業を買収する上での大きな障害となる為、米国政府はその解消を要求していた。
2002年、小泉政権は持ち合い株式に時価評価を導入した。これにより、株式下落による含み損が顕在化することとなり、外資の思惑通り、日本の企業や金融機関は持ち合い株式の売却を余儀なくされることになった。
この結果2005年3月期には、全国5カ所の上場株式の4分の1が外資に握られ、日本の事業法人、個人投資家、金融機関を抜き、外資が「日本株式会社」の最大株主となった。
(3)米国流企業統治の導入
日本では、企業の経営者が会社に対する忠誠心や愛着心から、外資による買収提案を拒否することが多かった。米国政府はこうした日本的な企業文化を変えろと要求した。
2002年、小泉政権は半世紀ぶりに商法を大改正し、米国流の社外取締役制度を導入した。会社の現場を知らない社外取締役は、買収提案に対して損得のみで判断する為、買収が成立し易くなる効果がある。「コーポレートガバナンス」などという外来語が流行したのはこの頃のことである。
(4)米国流M&A手法の解禁
米国政府は、当時未だ日本では禁止されていた「株式交換」という米国流M&Aの手法を解禁するよう要求していた。株式交換が解禁されると、買収者は現金ではなく自社株を払い込むことで標的企業を完全子会社化することが出来るようになる為、多額の資金を銀行から借り入れる必要が無くなる。
2005年、小泉政権は会社法を新たに制定し、株式交換を外資に解禁した(これを「三角合併」と称した)。これは小泉政権の一連の対米追従政策の中でも究極の売国政策であった。その詳細については、拙著『奪われる日本』(講談社現代新書 2006年刊行)を参照願いたい。
(5)米国流会計制度の導入
米国政府は、日本政府に米国流の減損会計を導入するよう要求していた。これは、日本流の簿価会計では財務諸表の表面に出にくい不動産などの「含み損益」を炙り出す為の措置だった。小泉政権は2006年3月期から減損会計を強制適用した為、多くの企業が資産の損切りを迫られ、業績悪化に拍車が掛かった。
(6)M&A関連サービスの自由化
米国においてM&Aは、買い手である投資家やファンドだけでなく、売買を仲介する投資銀行、コンサルタント会社、法律事務所、会計事務所などの関連業界が巨額の手数料を稼ぐことが出来る一大産業である。米国政府は、日本においてもこうしたM&A関連ビジネスを展開し易くするよう、規制緩和を求めていた。
(7)会社倒産手続きの規制緩和
ハゲタカ外資は経営が悪化した日本企業を「救済合併」と称して買収しようと狙うが、対象企業が倒産してしまうと、その資産は管財人の管理下に置かれる為勝手に処分出来なくなる。米国政府は倒産手続きを弾力化するよう、会社更生法の改正を求めていた。
これに対して小渕政権は2000年4月に民事再生法を施行し、管財人を置かずに済むように倒産処理手続きを「弾力化」した。
更に小渕政権は2003年5月、産業再生機構を設立した。産業再生機構は銀行から不良債権を買い取り、3年以内に企業を再生させて債権を転売する。米国はこれを「投資可能な資産がより多く市場に出てくる」と歓迎している(『日米投資イニシアティブ報告書』2003年5月)。
産業再生機構の設立準備室が永田町のプルデンシャルタワーに入居するやいなや、ウォール街の投資銀行関係者が待ちかねたように来日し、入れ替わり立ち替わり出入りするようになった為、「プルーデンシャル詣で」と語り草になった程である。
日本が「失われた20年」と呻吟(しんぎん)しながら取り組んだ不良債権処理も、外資から見れば格好の金儲けのネタだったわけだ。≫≫
(後日、2頁へ続く)
※尚、これ迄TPPに関する資料(対日年次改革要望書含む)や見解などを下記投稿の本文及びコメント欄に纏めてありますので併せて参照して下さい。全体像が見えてくると思います。
≪TPPについて危険認識する為に全国民がこれらの動画を見るべきだ(2011年10月28日)≫ Roentgenium
http://www.asyura2.com/11/senkyo121/msg/380.html
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